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イーグルスマンスリーコラム

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イーグルスマンスリーコラム第6回(今シーズン最終稿)

真鍋雅彦

ファーストステージとセカンドステージ、どちらが本当のキヤノンだったのか?

そんな思いを抱いてしまうほど、今シーズンのキヤノンは、ステージによって違うチームになっていた。
ファーストステージでのキヤノンは、実に安定感のあるチームだった。初戦のトヨタ自動車には苦杯を喫したものの、これまで一度も勝てなかった宿敵リコーには5トライを奪って完勝。激しい戦いになるとみられていた近鉄、NTTドコモ、コカ・コーラ戦も、近鉄戦以外は危なげない勝ちっぷりで勝ち点を積み上げた。格上相手の戦いとなったサントリー戦、神戸製鋼戦も、ともに3点差の惜敗。それも、「追い詰めた」というよりは、「勝ちを逃した」といってもいいぐらいの惜しい敗戦だった。ファーストステージで4位以内に入るかどうかで気を揉んだ昨シーズンのキヤノンとは明らかに違った。



しかし、セカンドステージではまったくの別人になってしまった。7試合を戦って1勝6敗。単に負け続けたというだけでなく、自慢の防御網をあっさりと破られ、ファーストステージでは多彩だった攻撃が単調になるなど、およそ"らしくない"戦いぶり。スタンドからは、「キヤノンの試合はワクワク感に欠ける」という声さえも聞こえてきたほどだ。
別人になってしまった原因は何だったのか?
いろいろな要因が考えられるだろうが、鍵を握るプレーヤーの戦線離脱が大きく響いたのではないだろうか。
BKリーダーの橋野皓介(ファーストステージ第5戦から欠場)、ファーストステージは全試合先発だったベテランのHO山本貢(セカンドステージ第2戦から欠場)、司令塔のSOカラム・ブルース(セカンドステージ第3~6戦欠場)、チーム1、2の仕事量を誇った竹山浩史(セカンドステージ第3戦から欠場)...。セカンドステージの第6戦からは、今シーズンのキヤノンの大黒柱的存在だったアダム・トムソンも戦列を離れてしまった。
けっして、彼らに代わって出場した選手の出来が悪かったわけではない。それどころか、カラム・ブルースの穴を埋めた2年目のSO森田慶良をはじめ、ルーキーのFB森谷直貴、HO庭井祐輔、FL嶋田直人らは期待以上の働きをみせてくれた。しかし、欠場した選手の存在感は、それ以上に大きかったというべきか。

SO森田、FB森谷

HO庭井、FL嶋田

その中でも最も響いたのは、FB橋野のリタイアだったと思う。ファーストステージ第2戦のリコー戦では縦横無尽に走りまくり、同試合で3トライを挙げたトムソンを抑えてマン・オブ・ザ・マッチを獲得。翌週の「マレーシアセブンズ」では日本代表の中心選手として活躍するなど好調をキープ。その後のプレーも大いに期待されただけに、帰国直後の近鉄戦(ファーストステージ第4戦)での負傷はチームにとっては大打撃だったに違いない。

橋野の不在は、単に1人のアタッカーを失っただけでなく、もう一人の得点源だったトムソンにも影響を及ぼしたような気がする。特にセカンドステージ出場の強豪チームは、橋野不在でキヤノンBKの脅威が衰えた分、アダム・トムソンを徹底マーク。トムソン自身も執拗なマークにフラストレーションが溜まったのか動きが鈍くなり、ファースステージでは6試合出場で9トライを挙げていた男が、セカンドステージでは第4戦まで一度もゴールラインを割ることができなかった。
森谷の頑張りでチーム全体のバランスが崩れるところまではいかなかったが、キヤノンの最大の強みを消されたのは痛かった。それが証拠に、セカンドステージではフェーズを重ねるも、なかなかゲインを切れないというシーンの連続。それが、「ワクワク感がない」という感想につながったのだろう。
シーズンを振り返ってみて言えるのは、少々乱暴な言い方だが、上位を狙えるだけのチーム力がなかったということ。もう少し突っ込めば、それだけの戦力が整っていなかったことと、戦力が落ちた時の戦い方が徹底されていなかったということ。そういう意味では、ファーストステージのキヤノンも、セカンドステージのキヤノンも、"今"のキヤノンだと言うしかないだろう。
さらなる高みを目指すためには、チーム力を上げるしかない。しかし、それは口で言うほど簡単なことではない。
カラム・ブルースも、「我々は確実に進歩している。成績は昨シーズンを超えられなかったが、昨シーズンより強いチームになったと確信している。しかしここ2年の進歩は、3~4年前のそれと比べて小さかったことは否めない」と語っていたが、目標に近づけば近づくほど、次の一歩を踏み出すのが難しくなるのはラグビーの世界に限ったことではない。

SOカラム

今シーズンのキヤノンも必死でチーム力を上げようともがいたけれども、努力の量と成長が比例しなかったのだろう。
しかし、これまでの歩みを見る限り、やってきたことは間違っていなかったと思う。もし、一気にトップを狙うなら、スタッフ、メンバー、戦略などすべての点において劇的な変化を遂げるという方法もあるだろうが、それはあくまでギャンブルであり、得策とは言えない。たとえ成功したとしても、砂上の楼閣になりかねないからだ。
キヤノンにとってはここが我慢のしどころ。これまでのやり方を信じて、焦ることなく前に進めばいい。歩みは遅くとも確実に成長しているのだから。
幸いなことに、今シーズンは前出の森谷、庭井、嶋田だけでなく、全試合出場のLO宇佐美和彦をはじめ、LO芦谷勇帆、CTB藤近紘二郎ら数多くのルーキーが試合を経験。また、PR上田聖、SH天野寿紀、CTB藤本健友、WTB菅谷優といった入部2~3年目の若手もグラウンドで躍動した。
「試合に出るたびに自分の力の無さを感じたが、数多くの試合を経験したことは自分にとって大きな財産になった」と森谷は今シーズンを振り返っていたが、若い選手たちが今シーズンの経験を生かしてステップアップしてくれれば、ノビシロの大きい彼らだけにチームの成長も加速するはず。
ここ2年間、その高さに圧倒された壁を超えるためにも、若手選手たちの成長に期待したい。

LO芦谷、CTB藤近

PR上田、SH天野

CTB藤本、WTB菅谷


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真鍋雅彦(まなべ・まさひこ)

◎プロフィール

1957年12月11日、大阪府生まれ。日本大学芸術学部卒業後、株式会社ベースボール・マガジン社勤務を経てフリーに。主としてラグビー、ゴルフ、野球などをテーマに扱うことが多い。仕事とは別にラグビーの普及、子どもラガーの育成に従事。現在、多摩ラグビースクールの校長を務めている。

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