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イーグルスマンスリーコラム

イーグルスマンスリーコラム

イーグルスマンスリーコラム第1回

真鍋雅彦

イーグルス史上最高の順位だったとはいえ、上位の壁を打ち破れず6位に落ち着いた15-16シーズン。特に、上位への道を閉ざされた順位決定トーナメントの1回戦、パナソニックワイルドナイツ戦での大敗は衝撃的で、パナソニックの強さを実感すると同時に、イーグルスがまだまだ日本一を狙える域には達していないことを痛感した。
あの衝撃から数カ月。イーグルスは新しいシーズンを迎えるにあたって、「打倒!パナソニック」を意味する、「Beat Panasonic」を目標に掲げたのである。

何とも素晴らしいことではないか。この言葉を発案した指揮官、永友洋司監督によれば、「スタッフを含めたチーム全員に、"日本一"になることを強く意識させるのが狙い」だそうだが、その言葉通り、これほど具体的な目標はないと言えるだろう。目標が具体的になればなるほど、それが実現する可能性が高くなることは、すでに南アフリカを破った日本代表チームが実証済みなのだから。
とはいえ、永友洋司監督はいたって冷静だ。現時点でパナソニックを越えているとは思っていないし、それを実現するのはかなりの難題であることも自覚している。ただ、その一方で、目標実現に向かって着実に歩を進めていると胸を張る。

確かに、今シーズンのイーグルスには明確な進化点が数多く見られる。
まず、昨シーズンから導入した、「人を戦術的に配してそこにボールを動かし、動きの中で空いたスペースにボールを動かしてトライを狙う」戦い方がチームに浸透し始めていること。昨シーズンは、「頭では理解しているが...」というシーンもあったが、プレシーズンマッチを見る限り、その完成度が確実に高まっている。

また、昨シーズン、他チームからも一目置かれるようになったスクラムも今シーズンはさらに磨きがかかった。ただ強いだけでなく、どの選手が入っても力が落ちることはないのもイーグルスの強みといえよう。スクラム力のアップはひとえに練習のたまもの。アシスタントヘッドコーチのアルベルト・ヴァン・デン・ベルグは、「フォワードコーチのキース(ギデオン・レンシング)は、暇さえあれば選手たちにスクラムの練習をさせている」と苦笑し、"やらされている側"の山路泰生(PR)も、「これまでのラグビー人生でこれほどスクラム練習をしたことはない」とその厳しさを語っていたが、イーグルスのスクラムの強さは相手チームにとって脅威となるはずだ。

戦力補強の部分でも、今シーズンは例年以上に上手くいったと言える。特筆すべきは、昨年まで日野自動車にいたアニセ サムエラ(LO)。フィジー出身で日本国籍を持つアニセは、身長198cmとチームNo.1の高さを誇るだけでなく、パワーと走力を兼ね備えた逸材。ここ数年、イーグルスでは手薄だったペネトレーターとしての働きも期待できそうだ。
また、ブルーブルズ、プーマーズ、キングスなどで活躍した南アフリカ出身のジャンクロード・ルース(SO)も、名前は売れていないが予想をはるかに上回るプレーヤーだった。しかもこのルース、「他国で代表選手になっていない」という貴重な外国人選手。ワールドクラスのキック力と、ゲームをコントロール上手さは、今シーズンのイーグルスをより高みへと導いてくれそうだ。
新戦力ではないが、突破力のあるハヴィリ リチャードアファ(CTB)が日本国籍を取得したのもイーグルスにとってはとてつもなく大きい。昨シーズンまでは、アダム・トムソン、ウィリー・ルルー、マイケル・ボンドに出場機会を奪われていたハヴィリだが、今シーズンはスターターに名を連ねる機会が増えそうだ。

もうひとつ、キャプテン庭井祐輔、バイスキャプテン植松宗之、同ティム・ベネットと体制が変わったことも今シーズンの"進化"に付け加えたい。キャプテンの交代は、前キャプテンの橋野晧介がリオオリンピック・7人制ラグビーの代表候補に選ばれた(最終的には怪我で辞退)という事情もあるが、新しいシーズンを迎えるにあたり、永友監督は学生時代からそのプレーと人間力を高く評価していた3年目の庭井を新キャプテンに指名した。
人にも自分にも妥協を許さず、黙々と仕事をこなすファイターで、試合後は自分のプレーだけでなく、チームの戦い方を冷静に分析するなどクレバーな面も持ち合わせている庭井。常に全力を出し続ける彼のキャプテンシーも、目の前にそびえる壁を打ち破る力になるはずだ。


イーグルスは確実に進化している。これは間違いない。しかし、他のチームも停滞しているわけではない。だから、イーグルスの順位が簡単に上がるわけではない。
昨シーズン、イーグルスより上位だったパナソニック、東芝、ヤハマ発動機、神戸製鋼、トヨタ自動車とは昨年同様、厳しい戦いになることは間違いない。また、イーグルスより下位だったチーム相手でも、"楽勝"でものにできる試合はひとつもない。「Beat Panasonic」を実現して、日本一を手に入れるためには、全試合、負けたら終わりのトーナメントのつもりで戦うしかないだろう。
しかもイーグルスの場合は、2試合目「対ヤマハ発動機」(9/2)、3試合目「対東芝」(9/10)、5試合目「対サントリー」(10/2)、7試合目「対神戸製鋼」(10/16)と序盤戦で強豪相手のゲームが続く。また、4試合目(9/16)には"絶対に負けられない"リコー戦も乗り越えなければいけない。ここを勝ち上がって8試合目に行われるパナソニック戦(10/22)を迎えることができるかどうか。
それができるかどうかは、少し乱暴だが、気持ちの問題になってくるような気がする。絶対に勝つという気持ちを毎試合、80分間持ち続けられるかどうか。永友監督は、その思いを、「Beat Panasonic」という言葉に込めたのだろう。
開幕を2週間後に控えたNEC戦。イーグルスは大差(39-3)をつけて勝利を手にしたが、試合後、庭井キャプテンと、この日No.8を務めた嶋田直人が奇しくも同じコメントを口にした。
「ノートライで勝つという目標は達成したが、アタックでフェーズを重ねた時、自滅してしまうことが何度かあった。あの場面でどれだけ我慢できるか。それが今のチームの大きな課題です」
アタックもディフェンスも、突き詰めれば我慢との戦い。"我慢"という二文字が、「Beat Panasonic」を目標に掲げた、今シーズンのイーグルスのキーワードになりそうな気がする。


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真鍋雅彦(まなべ・まさひこ)

◎プロフィール

1957年12月11日、大阪府生まれ。日本大学芸術学部卒業後、株式会社ベースボール・マガジン社勤務を経てフリーに。主としてラグビー、ゴルフ、野球などをテーマに扱うことが多い。仕事とは別にラグビーの普及、子どもラガーの育成に従事。現在、多摩ラグビースクールの校長を務めている。

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