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イーグルスマンスリーコラム

イーグルスマンスリーコラム

イーグルスマンスリーコラム第4回(今シーズン最終稿)

真鍋雅彦

「このチームをもっと見ていたい...」。1月14日、Honda HEAT戦のノーサイドの笛が花園ラグビー場に鳴り響いた瞬間、そう思った人も多かったのではないだろうか? それと同時に、もっと早く今の姿を見せて欲しかったと思った人も多かったはずだ。それほどシーズン終盤のイーグルスは美しかった。

日本一への野望を、「打倒!パナソニック」を意味する、「Beat Panasonic」という言葉に込めた今シーズンのイーグルス。トップリーグ5シーズン目、最高位が前年度6位のチームが掲げたそのスローガンを、「10年早い!」と一笑に付す人もいたが、スタッフも選手も大真面目だった。そのための準備もした。過去にはない厳しい練習をこなし、どこのチームにも引けを取らない高いスキルとフィットネス、さらに、「ここまでやったのだから負けるはずがない」という精神力も身に付けた。
「本気で狙っていますし、それだけの力はあると思います」。寡黙なキャプテン、庭井祐輔の言葉にも自信がみなぎっていた。
そんなイーグルスにとって、唯一不安材料だったのが、2016-2017シーズンのスケジュール。第2節でいきなり昨シーズンのトップリーグ3位のヤマハ発動機と激突。続く第3節は同準優勝の東芝、第4節は毎年壮絶な戦いとなる宿敵リコー、第5節は昨シーズン低迷したとはいえ日本代表選手が数多く揃うサントリーと戦い、第7節で打倒パナソニックの一番手と目されていた神戸製鋼とぶつかったあと、第8節でようやく本命のパナソニック戦を迎える。それは、「Beat Panasonic」以上に過酷な試練のように思えた。

(左)8/27 コカ・コーラ 31-14、(中)9/2 ヤマハ発動機 16-35、(右)9/10 東芝 19-21

(左)9/16 リコー 20-25、(中)10/2 サントリー 22-37、(右)10/8 豊田自動織機 31-14

(左)10/16 神戸製鋼 25-44、(中)10/22 パナソニック 16-29、(右)10/29 宗像サニックス 35-5

そして、嫌な予感は的中した。開幕戦のコカ・コーラ戦は無難に乗り越えたものの、第2節でつまずく。相手は、自らの目標だった「Beat Panasonic」を先に実現してしまったヤマハ発動機。開幕戦に照準を合わせ、その戦いに勝利したことでさらに勢いに乗った相手には翻弄されてしまったのだ。
とはいえイーグルスは、この敗戦ではそれほど大きなショックを受けなかったように思える。前半は好き勝手にやられたが、後半は10-13と健闘。トップリーグ最強と称されるヤマハ発動機のスクラムに対しも、試合中に自ら修正し、後半は逆に組み勝つ場面があったこともあり、むしろ手応えを感じる選手も多かった。
「オレたちはけっこうやれるのかも...」。芽生えかけた自信が、第3節の東芝戦ではイーグルスに力を与えた。前半こそリードを許したが、後半は自慢のスクラムを武器にゲームを支配。東芝戦初勝利をほぼ手中に収めかけていた。しかし、残り2分、イーグルスを悲劇が襲う。自陣22m付近のスクラムで、"大事"なマイボールを東芝に奪われ、それが原因で3点を失い逆転を許す。それは、「Beat Panasonic」が遠のいた瞬間でもあった。
この敗戦を引きずったとは思いたくないが、続くリコー戦は、「打倒!イーグルス」に燃えるチームと、目標を見失いかけたチームとの差が出たように思えてならない。点差はわずか5点だったが、勢いは常にリコーにあった。
続く第5節も、開幕から好調をキープしていたサントリーの勢いを止められず、第6節の豊田自動織機には快勝したものの、第7節の神戸製鋼には簡単にひねられ、今シーズン最大の目標だった第8節のパナソニック戦も、"善戦"で終わってしまった。第9節の宗像サニックス戦には勝ったが、前半戦を終了して3勝6敗。優勝はおろか、目の前には"入れ替え戦"という言葉さえちらついた。

トップリーグ昇格後、一歩ずつではあるが階段を上り続け、戦力的にも戦術的にもトップを狙えると信じて挑んだシーズンだったが、待ち受けていたのは厳しい現実。選手たちは、前を向こうしていたが、この時、その焦点は定まっていなかったはずだ。
しかし、ウィンドウマンス後、イーグルスは見事に復活した。第10節のトヨタ自動車戦こそ4点差で涙をのんだものの、その後は破竹の5連勝。第11節の近鉄戦(17-10)、第12節のNEC戦(45-21)、第13節のクボタ戦(27-15)、第14節のNTTコミュニケーションズ戦(26-15)はその点差以上に相手を圧倒。「もしこのチームでサントリーやパナソニックと戦っていたら...」とさえ思ったほどだ。

(左)12/3 トヨタ自動車 21-25、(中)12/10 近鉄 17-10、(右)12/18 NEC 45-21

(左)12/24 クボタ 27-15、(中)1/8 NTTコム 26-15、(右)1/14 ホンダ 28-26

何故わずか1カ月の間に、これほどの変貌を遂げることができたのか? それは変貌ではなく、もともと上位を狙うだけの力があったからだというのは乱暴すぎるだろうか。
キャプテン庭井祐輔や、山路泰生、東恩納寛太という日本代表PRを中心としたスクラムはトップリーグでも一目置かれたし、アニセ サムエラ、宇佐美和彦、アダム・トムソンら195cm以上のジャンパーが揃うラインアウトも相手にとっては脅威となっていた。また、嶋田直人や杉永亮太、植松宗之、三友良平らが体を張ることで生まれたディフェンス力も他チームからは高い評価を得ていたし、南アフリカ代表のFBウィリー・ルルーが中心となって仕掛けるアタックも、防ぎきるのは至難の業。巧みなチェンジオブペースでスペースをつくかと思えば、相手ディフェンスの出方によっては素早いキックで背後に落とす。今シーズンはスクラムの強さが最大のウリのように言われていたが、BK陣が繰り出す多彩なアタックもイーグルスの大きな武器になっていたのだ。
さらに付け加えれば、今シーズンから加入したジャンクロード・ルースのキック力も大きな役割を果たしたと言えよう。蹴り合いの場面ではほとんど負けることがなく、PG、ゴールキックにいたっては90%以上の成功率。自陣10m付近からのPG成功には度肝を抜かれた人も多いはずだ。
トップを狙うチームとしては物足りないと指摘されていた選手層に関しても、確実に厚みを増していた。スクラムは誰が出てもその力が落ちることはなかったし、ケガ人が多かったBKもほぼ全メンバーでカバー。大きな穴を感じることはなかった。

戦力は今まで以上に充実し、やろうとしていることも間違っていなかった。にもかかわらず優勝争いに絡めなかったのは、本当の意味での"自信"を持っていなかったからなのかもしれない。実際、得点を取った直後やリードを奪っている時に"自信のなさ"が顔を覗かせる場面が頻繁にあった。プレッシャーをかけ続けていたディフェンスがリードしたとたん引き気味になったり、慌てる必要のない場面で不用意な反則を犯してリズムを崩してしまうこともたびたびあった。
シーズン中、ある選手がこんなことをつぶやいていたのを思い出す。
「僕たちが思っているより、相手は僕たちのことを強いと思っているみたいなんですよね」。
そう、君たちは自分たちの強さに気づいていなかった。そしてそれが、イーグルスの今シーズンの最大の失敗だったといえるのかもしれない。
今シーズンは、そのことを学んだ1年だったと思えばいい。長年、越えられなかった壁にはすでに手が届いている。あとは自信を持って上り切るだけだ。
16/17版イーグルスには思い切って別れを告げて、さらに逞しくなるであろう17/18版イーグルスの誕生を心待ちにしたい。


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真鍋雅彦(まなべ・まさひこ)

◎プロフィール

1957年12月11日、大阪府生まれ。日本大学芸術学部卒業後、株式会社ベースボール・マガジン社勤務を経てフリーに。主としてラグビー、ゴルフ、野球などをテーマに扱うことが多い。仕事とは別にラグビーの普及、子どもラガーの育成に従事。現在、多摩ラグビースクールの校長を務めている。

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