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2017.06.02
INTERVIEW

新ヘッドコーチ グラント・バシュフォードのインタビュー

今シーズンからキヤノンイーグルスの指揮を執る、新ヘッドコーチ、グラント・バシュフォード。
南アフリカ出身で、'06年からのシャークス アシスタントコーチを皮切りに、ハリケーンズ、ハイランダーズでスポットコーチを務めるなど、コーチ経験豊富な人物ですが、イーグルスのヘッドコーチに就任した今、どんなことを考えているのか?
また、これからどういうチームを作っていこうとしているのかを聞いてみました。

素晴らしいチャンスを与えてくれたことに感謝しています

――ようこそ、イーグルスへ。まずは日本の印象から聞かせてください。

「南アフリカの人間にとって日本はとっても遠いし、簡単に来ることはできないところ。だから、日本のことはほとんど知りませんでした(笑)。でも実際に来てみて、とても素晴らしいところだということを知りました」

――どういうところが素晴らしいと思われましたか?

「何といっても"人"ですね。礼儀正しいし、フレンドリーだし、お互いに尊敬しあっているし。私が見ている限り、お互いが挑み合うようなところもみえませんからね」

――ご家族の日本の印象は?

「ワイフもとても気にいっています。安全だし、電車も時間通りに来るし。南アフリカに住んでいた人間にとって日本で住むことは、そう難しくはないですね(笑)」

――今回はご家族も一緒に来日されたんですか?

「今は単身赴任ですが、近々家族と一緒に住む予定です」

――イーグルスからヘッドコーチのオファーがあった時、どう思われました?

「正直驚きました。昨シーズン、2度(6月と10月)、イーグルスのスポットコーチとして来日しましたが、その時は、近い将来フルタイムで関わるなんてことは考えていませんでしたからね」

――即、OKされたんですか?

「バシュフォード家の計画としては、長男の卒業後、しばらくイギリスで生活する予定だったんです。ワイフがイギリス国籍を持っているので、子どもたちにもイギリス国籍を取らせようということでね。だから、少し悩みました。でも、『断るにはもったいない』いいお話だったので、喜んで引き受けることにしました」

――イーグルスのヘッドコーチという職に魅力があったということですか?

「そうですね。理由はいくつかありますが、まず、昨シーズン来日した時に、選手たちのラグビーに取り組む姿勢に感銘を受けたこと。また、私が好むハイテンポなラグビーに適した選手が、このチームにはたくさんいたこと。さらに、それぞれわずか数日の滞在でしたが、多くの尊敬すべき人に出会えたこと。そういう素晴らしい環境の中で、素晴らしい仲間たちとチャレンジできるということを考えると、とても断る気にはなれませんでした」

タックルはアタックであるという考えを浸透させたい

――昨シーズン、イーグルスは目標としていたトップ4に入ることはできませんでした。その原因はどのあたりにあるとお考えですか?

「昨シーズン、イーグルスの試合をグラウンドで見たのは1試合(10月2日のサントリー戦)だけなので、はっきりしたことは言えません。ただ、昨シーズンのスタッツ(成績)をみる限り、トライの数がとても少ないし、タックルの精度も低かった。この両方で高い数字を出さなければ、トップ4に入るのは難しいと思いますね」

――順位を上げるためには、両方の数字を上げる必要があるわけですね。

「そうですね。貪欲にトライを取りにいくという考えをもっと浸透させたいですね。そのためには、まずはタックル。タックルの精度を上げてボールを獲得することでディフェンスの時間を減らせばその分、アタックの時間が増えますからね」

――どうすればタックルの精度が上がるんでしょうか? やはり練習あるのみ、なんでしょうか?

「タックルは、90%"attitude(アティテュード/心構え)だと思いますが、イーグルスの選手にはそのあたりが少し欠けているのかなと。まだ数日しか選手と接していませんが、アタックに比べるとディフェンスには大きな興味を持っていないように感じたものですから。その点を改善するためにも、彼らがディフェンスに対して積極的に取り組める環境を整えることが大事だと考えています。また、タックルに関しては、"守り"ではなく、"ボールを持っていないアタック"であるという考えを持ってもらうようにしたいと思っています」

――練習はハードにやるほうですか?

「ハードワークなしにいいものはできないと思っているので、ハードか否かと問われれば、答えはイエスです。ただし、練習時間を長くするつもりはありません。ハードなのは練習の中身。昨シーズン、トップリーグの1試合当たりの"ボールが動いている時間"は約32分だったそうですが、その時間をひとつの目安にして、強度の高い練習をやっていこうと考えています。たとえば、ゲームと同じようなプレッシャーのかかる状況の中で、スキルを磨くとか」

――ラグビースタイルは、先ほども話のあった"ハイテンポ"がキーワードになるのでしょうか?

「最終的にチームの"ブランド(チームスタイル)"というのは、そのチームにいる選手たちによって決まるわけで、私だけの考えでは決まりません。ただ、イーグルスの選手にはそういうラグビーが合っていると思っています。大きな選手がゴロゴロいるわけではないですからね(笑)」

――昨シーズン、イーグルスはセットプレー、特にスクラムでは他のチームからも一目置かれるほどの強さを発揮したのですが、その強みは今年も生かしていくつもりですか?

「もちろん、その強みを失うつもりはありません。ただ、そこに固執するつもりもありません。何故なら、最近のラグビーというのはセットプレーから点が入るというケースは少なく、カウンターアタックやターンオーバーからのトライが多いからです。セットプレーは大事にしつつ、アンストラクチャーからの攻撃力もつけていきたいと思っています」

――今シーズンの具体的な目標があれば教えてください。

「多くの人から、"トップ4"を期待されているようですが、そもそも目標というのは、私が掲げるのではなく、選手たちが作っていくもの。そういう意味で目標づくりはこれからの作業になります。まずは選手たちの中からリーダーシップグループを作り、選手たち同士で話し合って目標を立ててもらうことから始めたいと思っています。もちろんその前の段階、たとえば『こういうプレーができるようになろうよ』といった目先の目標は我々からも出していきますけどね。また、私自身の目標としては、選手たちがラグビーを楽しいと思えるような、また、練習がしたいと思えるような環境づくりをしていきたいと考えています。そして、どの選手からも、"ラグビーが好きだからやっているんだ"というオーラが出るようなチームにしたいと思っています」

――最後に、ファンへのメッセージがあればお願いします。



「皆さん、"こんにちは"、ヘッドコーチに就任したグラント・バシュフォードです。皆さんのサポートが我々のパフォーマンスにつながります。また、我々も、皆さんにファンであるという誇りを持ってもらえるようなパフォーマンスをお見せしたいと思っています。ぜひ応援に来てください」

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