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キヤノン イーグルス 公式サイト|スタッフレポート

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永友監督ロングインタビュー「2012-2013シーズンを終えて」2013年1月15日

―先シーズン、トップリーグ昇格が決まった時の心境は

ゴールはトップリーグ昇格ではなかったわけですが、上がらなくては次のステージに行けないので素直に嬉しく思いました。でも昇格が決定した試合後、記者会見場に向って歩いている時に、恐怖感がヒシヒシと湧き上がってきたことをよく覚えています。まだまだトップリーグで戦う準備ができていたわけではなかったですし、これから相当の覚悟を持っていかないと本当に厳しいシーズンになってしまう、もちろん後戻りはできない。その時に何とも言えない恐怖感、危機感を感じました。

―トップリーグで戦えるチームにするために必要だったことは

アンディヘッドコーチと

アンディヘッドコーチと

トップリーグに上がれたので、選手の頑張りや強化はその時点ではそれで良かったわけです。でも、今までラグビーに長く携わってきて、悪くなってからテコ入れするのでは後手になってしまうと感じていました。悪い時に変えるのはどのチームや組織でも行うことです。良い時に変える、それには覚悟がいることした。しかし、グランドの中の強化がまず大事だと思い、アンディをヘッドコーチとして招聘しました。


アンディは僕がサントリーの選手の時にコーチだったので、彼のことは良く知っていました。キヤノンには既に「アタッキング」というベースはありましたが、やはりトップリーグで戦うためには、そこに何かを付け加えることでレベルアップしていく、そういった改革が必要でした。


その後の計画や準備ができていましたし、トップイースト、またトップチャレンジの反省点が明確になっていたので、アンディとはすぐに意見の調整はできました。そして、アンディ及びコーチ陣には、それまで積み上げていたアタックの中に、ディフェンスの要素も含めていくという新しい取り組みを託しました。

―レベルアップ、そのために一番求められたのは「我慢」

0-72で敗れたヤマハとのオープン戦

0-72で敗れたヤマハとのオープン戦

まずレベルアップするための覚悟を選手たちに持ってもらいたかったのですが、具体的に何をどれくらい覚悟しなければならないのかを理解してもらうために、違う言葉で説明してグランドで表現していく、という流れで進めました。我々は目標に向かって計画を立て準備をします。そして数値的な管理の中でレベルアップの状況を判断できますが、選手は試合をするしかありません。ところが去年の春シーズン、プレシーズンマッチでなかなか結果が出なくて、我々としても「本当にこれでいいのか」という不安や葛藤がありました。もしかしたら前のシーズンのままでやった方が良かったのではないか、ということも考えました。そこで僕たちが一番求められたことは「我慢」です。ブレないところをしっかり作らなければいけないと思い、当初の計画通りに続けました。夏合宿でも、ヤマハさんとの練習試合でもいい結果が出なかった。それでも我慢して、今までやってきたことを信じてそのまま継続してリーグ戦に臨みました。だからリーグ戦初戦で勝てたことは本当に大きかったと思います。


トップリーグ13戦を振り返って

―初戦の勝利

若い選手が勢い良く、そして恐れることなくプレーできたのが良かったですね。我々としても覚悟して、彼らの若さに期待して自信を持ってメンバー選考できました。アンディという新しいファクターが入り、ずっと我慢してきた中で変化して、思い切って将来のキヤノンのイメージをもったセレクションは大きかったですね。
そして何と言ってもキャプテンの和田 拓の成長です。初戦にも拘らず冷静に判断しプレーをしていました。大したものです。

―第1クール(NTTドコモ戦、東芝戦、神戸製鋼戦、サントリー戦)

勝利したドコモ戦

勝利したドコモ戦

とにかく初戦をターゲットに準備をしてきたので、初戦に勝てたというのは本当に嬉しかったですし、そこをいい形で乗り切れたのは大きかったと思います。その後の東芝さんと神戸製鋼さんとはいい試合ができました。正直言ってラッキーな部分もあったと思います。つまり徐々に調子を上げるチームにうちは全力でぶつかっていった、ということもあったかもしれませんが、とは言えいい戦いができたのは僕もそうでしたが、選手たちが一番自信をもらえた試合だったと思います。


このチームに足りないのは競争だと思っていました。ところが若い選手を使っていく中で、ベテラン選手や試合に出られない選手の間で競争がかなり生まれてきました。まだ足りていないと思いますが、若い選手がベテラン選手や外人選手にいい刺激を与えてくれたと思います。試合に出られない選手がハングリーになってきました。この時期に生まれた競争が、ひとつイーグルスのカルチャーに付け加わったと思います。

―第2クール(九州電力戦、NTTコミュニケーションズ戦、リコー戦、ヤマハ戦)

大きく成長した和田主将

大きく成長した和田主将

第1クールの4試合は、初戦に勝利した勢いで戦えたと思います。第2クールでは、第1クールの「勢い」から選手たちにも自信がついてきて、「俺たちもやれる」という気持ちになってチャレンジして、確かにクロスゲームができました。でも勝てるチームと勝てないチームの差を、選手たちも気が付いてきたと思います。このあたりが僕がいつも言っているウィニングカルチャー、ということですね。例えば80分の試合で、常勝チームはここぞという場面で自分たちのペースで戦ってトライを取っています。僕たちは必死になってようやくトライを取ったのに、大事な時間帯でミスをしたり取られたりしてしまう、しかもアッサリと取られてしまう。そこですね。そこが経験であり、底力の差です。選手たちが一番そこをわかっています。特に若い選手には本当にいい経験だったと思います。

―第3クール 福岡サニックス戦

サニックス戦でトライを決めた橋野

サニックス戦でトライを決めた橋野

この試合の後に「いい勝ち方ができた」と言ったのは、僕らがコントロールできない部分の中で勝利できた、という意味です。試合の中での色々なこと、相手チームのホームでの試合だったこと、そういった僕らにはコントロールできない部分がありますが、そういう要素の多い中での試合で勝利できたことが、いい勝ち方といった理由です。

―第3クール 「勝ち切れない」

10がチャンピオンチームの力だとした場合、7、8まではどのチームもできることだと思います。でも残りの2、3を超えるのは並大抵のことではないのは、皆さんの仕事でも同じだと思います。そこを超えればチームがまた生まれ変わることは間違いないと思っていたので、何とかして勝ちたかった。そうすれば3年後、5年後のキヤノンにとっても大きな違いがあると思い、第3クールのトヨタ戦、近鉄戦、NEC戦、そしてパナソニック戦は何とか勝たせたかったのですが、結局最後まで一つも勝てなかったですね。いい試合ができても勝ち切れませんでした。常勝チームがそこを超えるためにどれだけやってきたかは僕も知っていますので、そんな甘いもんじゃないことはわかっていましたが、勝てなかったですね。

―ゲーム オブ ザ イヤーは

やはりリーグ戦初戦ですね。選手は最高のゲームをしてくれました。

―マン オブ ザ イヤーは

偉大な足跡を残したアルベルト

偉大な足跡を残したアルベルト

みんな本当に良く頑張りましたが、一人選ぶとすればアルベルトですね。本当に感謝しています。プレーヤーとしてももちろんですが、ボールを持っていない時の取り組む姿勢も彼はプロフェショナルでした。彼がキヤノンに残してくれたことは本当に大きくて、心から感謝しています。そんな彼がチームを去ってしまうのはちょっと寂しいですが、チームが強くなるためにはしょうがないことですし、彼も理解してくれています。最後まで良く戦ってくれました。

―来シーズンに向けて

来季に向けて

来季に向けて

今シーズン、いい部分はたくさんあったのですが、来シーズンに向けて、課題も山積みになっているので、バランスをうまくとっていきながら、さらに選手たちのレベルアップに努めていかなければならないと思います。
いつも選手に言っているのですが、ボールを持っていない時がとても大事だと思っています。ボールを持って走るのは80分のうち2分も無いので、ボールを持っていない時の動き、また取り組みが非常に大切になります。ボールを持っていないという意味では、オフの間、グランドを離れている時に、イーグルスのメンバーという意識をしっかり持って過ごしてほしいと思っています。イーグルスのメンバーとしての立ち振る舞いを意識し、危機感を持って過ごすことができれば、オフの間でも精神的にタフになれると思います。オフの間の選手たちに、そんなことを期待しています。

―最後にメッセージを

今シーズン、100%以上の頑張りで成長した選手たちに感謝したいと思います。そしてファンの皆さん、コーチングスタッフ、メディカルチーム、マネージャー、といったチームを取り巻くすべての機能がうまくいったことによって、イーグルスの文化が確実に一つ積み上がったと思います。関わって下さったすべての皆さんに改めて感謝致します。


そして最後に、シーズンを無事に終えられたのは、現在の選手、スタッフだけでできたことではありません。僕がコーチになった最初の年のキャプテンの前田、バイスキャプテンの今井は本当に苦労して頑張ってくれました。翌年から2年間キャプテンを務めた宍戸、バイスキャプテンの米元、瓜生、そして一緒に頑張ってくれた選手、スタッフ達が過去に積み上げてくれたものがあったからこその今シーズンだったこと。これは決して忘れてはいけないと思っています。


来シーズンもよろしくお願いいたします。有難うございました。