キヤノン イーグルス 公式サイト

イーグルスマンスリーコラム

イーグルスマンスリーコラム

イーグルスマンスリーコラム第5回(今シーズン最終稿)

田村一博(ラグビーマガジン編集長)

 なんだろうな、この気持ち。これまでにない最高の経験が出来たシーズンだったとわかっているのに、ちっとも満足できない。
キヤノンイーグルス。書いてみても、声に出してみても、これまでと何も変わらないのに変わった。
去年よりいい成績だったから、また来年。そんなふうに、さわやかに負けを受け入れられるチームじゃなくなった。
ただただ負けたのが悔しい。強い相手なんだから仕方ないとも思わない。
嬉しいのは勝利を手にしたときだけになった。

「疲れていたんだなぁ。すべてが終わってみて、そう感じました」
キャプテンの和田拓は、そう言った。
新しい仕組みになったトップリーグで、イーグルスはセカンドステージを上位リーグで戦うことができた。ファーストステージで、後日リーグチャンピオンとなったパナソニックを破り、ヤマハ発動機にも競り勝つ。上位4チームに入ったのは進化の証明だった。
セカンドステージでも初戦のNECに勝った。しかし、終わってみれば1勝6敗の7位。日本選手権への出場をかけたワイルドカードトーナメントでは25-41で敗れ、シーズン終了。

左/三友良平選手 右/大勢のサポーターが後押し

「最後の試合が終わるまで、そんなに疲れた感覚はなかったんですが、終わってみると(体の中に)何も残っていない感じなんですよね」
キャプテンは。「ただ...」と言葉を継いだ。
「疲れているし、ホッとした気持ちもあるんですけど...なんとも言えない気持ちなんですよね。テレビをつければ、同期や他のチームの人たちが、まだシーズンを続けている。ちょっとゆっくりしたいと思っていたはずなのに、はやく動き出したいような、ゆっくりしてられないような」

 2012年度シーズンにトップリーグに昇格したばかりのチームである。それなのに2年目にして上位8チーム入り。降格や入替戦を考えることなく、上だけを見て戦えた。外から見れば、拍手ものだった。
ただ和田キャプテンは、残した結果に含まれる体感こそ大切にしたいと言った。
「ファーストステージとセカンドステージ、同じ相手でもまったく違ったんですよね。気迫、精度、まとまり。シーズン深まったトップチームとの本気の戦いは、得るものがたくさんあった。自分たちが戦っていくのは、あのレベルなんだとあらためて覚悟しました。
グラウンドにはやく出たい。すぐに、そうなる気がします」

左/試合直前、集中するメンバー 右/入場はキャプテン和田が先頭を切る

 永友洋司監督のシーズン終了直後の第一声もハッキリしていた。
「納得できませんね」
選手たちはよくやった。その言葉に続け、そう言った。
「まだ若いチーム。シーズン最後の方は毎試合実力ある相手ばかりで、疲労は大きかったし、苦しんだけど、得たものは大きかった。それは分かっているんだけど、勝負にこだわる姿勢だけは失っちゃいけない」
常々、「目指しているのは日本一」と口にする指揮官の矜持(きょうじ/プライド)。その姿勢が和田キャプテンをはじめ、チーム全体のスタンダードを上げる。

左/強靭なFW陣

「目が違ったんですよ。相手も、ファンも、去年とは。自分たちを見つめる目がそうなったということを理解したら、(取り組む毎日の)姿勢も変わる。来季も日本一を目指すうえで変えていくべきは、セカンドチームも日本一を目指すこと」
レギュラー陣をいつだって超えようとする気概。他のどこの(ファースト&セカンド)チームだって上回ってやる。チームを支えるそんな闘争心が、日本一チームには必ず必要だと思っている。
ボロボロになって戦い抜いた選手たちを見て、監督はあらためて『全員力』こそチーム力と感じたのだろう。頭の中は、すでに新しいシーズンに切り替わっていた。

 2月12日、トップリーグの年間表彰式が都内でおこなわれた。優勝カップを手にした監督やキャプテンたち。タイトルを手にした他チームの選手たちの笑顔が壇上に並ぶ。その光景を、会場後方のチーム席から見つめる永友監督、和田キャプテンの姿があった。
ふたりとも、まっすぐにライバルたちの姿を見つめていた。でも、心は、きっとそこにはなかった。勝負の世界に身を置いている。お人好しでは生き抜けるはずがない。
新たな戦いは、もう始まっている。
ふたりの背中に、そう感じた。


田村一博
田村一博(たむら・かずひろ)

◎プロフィール

1964年10月21日生まれ。89年4月、株式会社ベースボール・マガジン社入社。ラグビーマガジン編集部勤務=4年、週刊ベースボール編集部勤務=4年を経て、1997年からラグビーマガジン編集長。

JRFU(財団法人日本ラグビーフットボール協会)
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