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イーグルスマンスリーコラム

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イーグルスマンスリーコラム第4回(今シーズン最終回)

真鍋雅彦

今シーズンは、プレシーズンリーグを5試合、リーグ戦を7試合、順位決定トーナメントを3試合の計15試合を戦ったキヤノンイーグルス。その中でも、一番印象に残っているのが2016年1月9日、順位決定トーナメントの1回戦として行われたパナソニックワイルドナイツとの戦いだ。
正直言ってこの試合、ひょっとしたらイーグルスが新たな歴史を作るゲームにかもしれないと思っていた。実力的には、パナソニックのほうに分があるのはわかっていたが、折からのラグビーブームに乗って同チームの選手のテレビ出演が増えていたこと、また、当日のメンバー表に司令塔SOベリック・バーンズと、ポイントゲッターのWTB山田章仁の名前がなかったことがその理由だ。
しかし、その予想は大きく外れた。勝利をもぎ取るどころか、好ゲームにすらならず、パナソニックが圧勝。イーグルスが頂点に登りつめるためには、まだまだ乗り越えなければ壁がいくつもあることを痛感した。

ただ、王者の強さを実感すると同時に、もうひとつ驚いたことがある。それは、パナソニックが、これまでのイーグルス戦では見られなかった"本気度120%"で試合に臨んでいたことだ。強いチームほど、ピーキングを考えて戦うものだが、彼らはこの試合にピーキングを持ってきたのではないかと思うほどの気迫を、この試合でぶつけてきたのだ。
そんなパナソニックの姿に、キックオフ直後は、「イーグルス相手にそこまで入れ込まなくても...」と思っていたのだが、試合が進むにつれ、それは違うと考え直した。おそらく彼らは、我々以上にイーグルスの強さを認めていたのかもしれない。だからこそ、最高のパフォーマンスで、最高の気迫で戦おうと考えたのではないだろうか。そう思い直した。
実際、今シーズンのイーグルスは、昨シーズンとは比べ物にならないくらい強かったと思う。結果だけを見れば、リーグ戦は5勝2敗でグループBの4位。順位決定戦でも初戦で敗れ、順位は昨シーズンから1つアップの6位に落ち着いたが、その内容は、昨シーズンのそれと明らかに異なる。最も大きな違いは、抽象的な言い方で申し訳ないが、昨シーズンまでは同じ勝利でも、「なんとなく勝った」という勝ちが多かったのだが、今シーズンの勝利は、そのほとんどが「計算通りに勝った」試合だったことだ。
そのような試合ができたということは、昨シーズンとは何かが変わったということだが、その要因の第一に、個々のレベルアップを挙げたい。
特に今シーズン、活躍が目立ったのは、HO庭井祐輔とFL嶋田直人。ともに立命館大OBの2年目という2人だが、彼らの献身的なプレーに何度感動させられたことか。また、第5節の豊田自動織機シャトルズ戦で負傷し、数試合しかプレーできなかったが、WTB藤本健友も大きな成長を感じさせてくれた一人だ。
成長度という点でいえば、今シーズン全試合でスターティングメンバーに名を連ねたSH天野寿紀も忘れてはならない。シーズン当初は自分のプレーで精一杯という部分も見られたが、シーズンが深まるにしたがってゲームをコントロールする余裕も。「まだまだダメなところだらけ」と本人からは最後まで威勢のいい言葉は出てこなかったが、今シーズンの躍進に貢献した一人であることに間違いない。

また、PR東恩納寛太、FL杉永亮太、CTB林大成らルーキーたちの活躍も見逃せない。東恩納は、前半戦はレギュラーをキープ、豊富な運動量を誇る杉永もメンバー表から名前が消えることはなかった。林も出場機会こそ少なかったものの、出場時には随所で生きのいいプレーを披露。大物の片鱗をのぞかせた。




これら若い選手に大いに刺激されたのだろう。すべてのポジションで激しいレギュラー争いが繰り広げられ、戦力がアップ。いつしか、誰が出てきてもパフォーマンスが大幅に低下するということがなくなっていた。それを実証したのが、2015年12月19日、ホームタウンである町田市の野津田公園陸上競技場で行われたトヨタ自動車ヴェルブリッツ戦。シーズン初スタメンという選手が半数以上を占めていたが、強敵トヨタ自動車を撃破した。
確かに、世界を代表するFB、ウィリー・ルルーは噂以上に素晴らしく、そのプレーは相手チームのファンをも魅了。3年目のNO.8アダム・トムソンも攻守にわたり昨年に劣らぬパフォーマンスを披露してくれたし、W杯戦士のLO・FLアイブス ジャスティンの常にボールに絡むというプレーも見事だった。しかし、彼らが自らの力を存分に発揮できたのも、チーム力の底上げがあったからだというのは言い過ぎだろうか。現に今も昔も、スーパースターといわれながら機能しなかった選手はたくさんいるのだから。

さらに付け加えれば、今シーズンはチームとしてのまとまりが、昨シーズン以上にあったことも強さの秘訣になっていたように思う。名実ともに現場のトップに立った永友洋司監督と、今シーズンからキャプテンになったSO橋野晧介がチームをコントロール。試合中はもちろん、練習時もチームには常に一体感があった。


とはいえ、話は元に戻るが、最終的な結果は昨シーズンを上回ったとはいえ6位。しかも先述したように、王者との差は、まだ歴然としている。
技術的な部分では、スクラムは安定していたものの、ライアウトは大きな課題として残った。攻め込んだ時のライアウトでマイボールをキープできず、何度自らの手でチャンスを放棄したことか。
試合中、永友監督の口から幾度となく発せられた「ディシプリン(規律)」も、取り組まなければならない課題といえよう。「ラインを破られる→自分を見失ってパニックになる→反則を犯す→PGを決められる」というパターンが、格上の相手と戦った時、何度も繰り返された。こういうプレーを繰り返している限り、トップ4の中で、"正しく"勝利をもぎ取ることは難しい。
ただ、考えてみれば、今シーズンは、永友監督、橋野キャプテンという新体制になって1年目。ハーフバック陣も、天野と橋野が本格的にコンビを組むのは今シーズンが初めてで、そういう点では、いろいろな意味で完成度が低かったのは致し方ない。
大事なのは、来シーズン。幸い、パナソニックが本気で戦ってくれたことで、その差が、そして埋めなければいけない点が明確になった。どうやってその差を埋め、そして追い越すのか? その答えを、来るべきシーズンで出してくれることを願いたい。


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真鍋雅彦(まなべ・まさひこ)

◎プロフィール

1957年12月11日、大阪府生まれ。日本大学芸術学部卒業後、株式会社ベースボール・マガジン社勤務を経てフリーに。主としてラグビー、ゴルフ、野球などをテーマに扱うことが多い。仕事とは別にラグビーの普及、子どもラガーの育成に従事。現在、多摩ラグビースクールの校長を務めている。

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