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イーグルスマンスリーコラム

イーグルスマンスリーコラム

イーグルスマンスリーコラム第3回

村上晃一

10月29日、トップリーグ第9節でキヤノンイーグルスは、宗像サニックスブルースを35-5で下した。いったい、なぜ、第8節までが2勝6敗なのか、理解に苦しむような内容だった。安定したスクラム、ラインアウト。PKからのアグレッシブな速攻。ベテランLO菊谷崇の力強いハンドオフ、WTB原田季郎の瞬時の加速によるトライで宗像サニックスを圧倒していく。本来はFBのウィリー・ルルーをSOに起用したのも面白い。そのトリッキーなプレーが攻撃の幅を広げ、観るものを楽しませていた。

後半開始早々の連続攻撃は見事だった。自陣からFBマイケル・ボンドが抜け出し、交代出場のSOジャンクロード・ルース、SH天野寿紀がつなぎ、NO8アダム・トムソンのロングパスでFL嶋田直人がトライをあげたものだ。ボンドのカットインとハンドオフを使ってのランは魅力がある。トムソンの約20mのロングパスも、なにげなく放っているがスキルの高さを感じる。こんなに良いトライがとれるのだ。地力があるのは間違いない。

第8節のパナソニックワイルドナイツに対しても前半は10-8とリードするなど内容は悪くなかった。シーズン前から「Beat Panasonic」を掲げてきたからこその集中力もあっただろう。しかし、最後は自陣から反撃をしたところをターンオーバーされ、パナソニックに3トライ以上の差をつけるボーナス点を与えてしまった。この時は「最後まで攻めた選手を誇りに思う」と話していた永友洋司監督。今後に向かって手ごたえをつかむ戦いぶりだったのは確かだ。

だが、第9節の勝利直後の表情は険しかった。トライを獲れるチャンスを作りながら、獲りきれないシーンが続いたからだろう。何度もラインブレイクしながらトライが獲りきれない。それは、勝ち星があがらず下位に甘んじるチームの特徴でもある。第8節までリーグ1位のボールキャリー(ボールを持って突進する回数)を誇りながら、16トライしかあげられていないクボタスピアーズ、ボールキャリー5位ながら1勝しかあげていない豊田自動織機シャトルズなどだ。

元日本代表監督の向井昭吾さんが言っていた。「上位と下位の差は規律のところですよ」。海外のトップチームでもよく使われる「Discipline」(ディシプリン=規律)である。反則をしない、ミスをしない、ということも大事だが、チームの約束事にしたがって、いかに正確に我慢強くプレーできるかどうか、ということでもある。キヤノンイーグルスは、第8節までボールキャリー12位、メーター(前進した距離)15位と攻撃面の数字自体が低かったが、ここ2試合は、よく前進できており、もっとトライができていても良かった。大事なところで、トライを獲り急いでしまうところも見て取れた。思うような成績が上がっていないことで焦りがあるのかもしれない。11月のウインドウマンスで、負の連鎖を断ち切りたいところだ。



第9節を終えて、3勝6敗の10位。イーグルスは、2012年度の昇格以降、11位、7位、7位、6位と着実に力を付けてきた。進歩を止めないためには6位以上がマストの目標になる。ここ2試合の戦いぶりを見る限り、それは十分に可能だ。既述の選手達の突破力はリーグ屈指だし、庭井祐輔キャプテンはじめ、FL嶋田直人、杉永亮太ら体を張る選手も多い。日本代表入りしたPR山路泰生、LOアニセ サムエラもさらに逞しくなって帰ってくるだろう。スクラムについては、ヤマハ発動機を唯一苦しめた強さがある。6連勝も夢ではないはずだ。

長らくラグビーの取材をしてきての持論がある。強いチームは一つの言葉で表せるということだ。1999年のラグビーワールドカップで優勝したオーストラリア代表のロッド・マックイーン監督にインタビューしたことがある。1999年大会直前のことだ。優勝候補チームの印象を一言で表現してほしいとお願いすると、こう答えてくれた。「ニュージーランドはスピード、南アフリカはパワー、イングランドはパッション、オーストラリアは組織です」。トップリーグの歴史を振り返っても、強いチームには特徴がある。東芝「スタンディングラグビー」、NEC「鉄壁のディフェンス」、サントリー「アグレッシブ・アタッキングラグビー」、パナソニック「切り返しのラグビー」。パナソニックは、アンストラクチャーのラグビーと言ってもいいかもしれない。いずれにしても、プレースタイルのイメージを短い言葉にできるのだ。

イーグルスは、どうかと考える。すぐには言葉が浮かんでこない。強いスクラムを持ち、魅力的な攻撃もある。さらに、イーグルスと言えばこれ、というものが第三者から見ても分かるようになった時、チームは大きく飛躍するのではないか。そんな想いを抱きつつ、今シーズンのイーグルスを眺めている。


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村上晃一

◎プロフィール

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。ラグビーマガジン、ナンバー(文藝春秋)などにラグビーについて寄稿。J SPORTSのラグビー解説も98年より継続中。99年、03年、07年、11年のワールドカップでは現地よりコメンテーターを務めた。著書に、「ラグビー愛好日記トークライブ集」(ベースボール・マガジン社)3巻、「仲間を信じて」(岩波ジュニア新書)などがある。

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