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選手インタビュー

2021年5月26日 | バイスキャプテン・HO庭井祐輔選手 2020-2021シーズン終了インタビュー

「『どうしたら勝てるのか』が試合を重ねるごとに改善されていった」

バイスキャプテンとしてSO田村優キャプテンを、またチーム全体を支えたFWリーダー、HO庭井祐輔。7シーズンに渡りチームのFWの中心的存在として活躍してきた中で、今季は負傷もあり苦しい1年になったが、これまでとは違った充実感を感じているという。

開幕3連敗と自身の欠場が重なった苦悩の時期を乗り越え、いかにして勝利に貢献しチームを軌道に乗せたのか。そのプロセスについて回想してもらった。
(取材日:2021年5月17日)


── まずは今シーズン、振り返ってみていかがでしたか?

「結果は求めていたものではなかったのですが、プレシーズンも含めチームを作っていくプロセスが本当に充実していました。シーズンの最初は3連敗してしまい、本当に苦しい時期もあったのですが、それをしっかり乗り越えました。そういう面でも充実感があります」

── これまでのシーズンとは違った手応えがありましたか?

「そうですね。以前のチームよりもまとまりがありましたし、一人一人がチームをよくしようと思い、そのための行動をしてくれました。メンバーはもちろん、メンバーではない選手もです。全員がそのような意志を持って過ごすことができたシーズンでした」

── ノンメンバーも含めての「エフォート」が実を結んだわけですね。

「試合では、メンバーに入っていない選手たちがパフォーマンスでチームに貢献することはできません。しかし、メンバーに対して強度の高い練習を作り上げてくれました。試合に出ている選手も出ていない選手も関係なく、最後までチームに貢献し続けることができたシーズンだったので、そういうところに充実を感じています」

── ただ、冒頭でも触れられたとおり、シーズン序盤は開幕3連敗と苦しい試合が続きました。

「今振り返ると、序盤はブレイクダウンの部分で苦戦しました。NTTドコモ(第1節)、神戸製鋼(第2節)、パナソニック(第3節)、いずれもブレイクダウンで思うようにいきませんでした。個人的にはブレイクダウンというより、メンタリティーもうまくいかない要因としてあったと思っています。今シーズンから沢木さん(沢木敬介監督)が就任しラグビースタイルが大きく変わりました。最初はその新しいスタイルに自信を持てていなかったのですが、『どうしたら勝てるのか』『どうしたら自分たちの流れに持っていけるのか』といった課題が試合を重ねるごとに改善され、徐々に自信がついていった感覚がありました」

── チーム状態がよくなっていく転機となったのはどの試合でしたか?

「大分でのパナソニック戦(第3節)ですね。試合としては大敗していますが(●0-47)、前半に関してはブレイクダウンで最初から出し切ろうとしていました。点差も前半だけ見ればそれほど離されなかったので(0-11)、『こうやればこういう点差になるんだ』と実感でき、『どうしたら勝てるのか』がチームとしてクリアになった試合でもありました。僕は神戸製鋼戦とパナソニック戦はチームに帯同していなかったのですが、負けはしたものの内容としては悪くなかったですし、『僕たちのラグビーを示すことができている』と自信を持つきっかけになったのではないかと思います」

── ケガにより戦列を離れていた期間、庭井選手はどのようなことを考えながら復帰を目指していたのでしょうか?

「3連敗と負けが込んでいる最中に試合に出られず、内心モヤモヤしていたのですが、『今起きている問題をクリアにしよう』と考えるようになりました。今季はFWリーダーでもありましたので、FWの選手には『問題をなるべくシンプルにして考えよう』と伝えていました。僕自身、神戸製鋼戦の頃は『自分がプレーできない状況でどのようにチームを引っ張っていけばいいのか』という迷いがありました。それでも神戸製鋼戦前半の戦いぶりは自信を持っていいと思いましたし、続くヤマハ発動機戦(第4節)の前にFWの中での問題をシンプルにすることに本格的に取り組みました。それがうまくいったのかどうかはわかりませんが、ヤマハ発動機戦ではチームとしていいパフォーマンスを見せると同時に勝つことができたので、さらに自信がついた試合となりました」

── 次の第5節、リコーブラックラムズ戦も逆転勝利で2連勝となりました。

「リコーは会社としてもライバルですし、僕たち自身、ライバル意識を持っていました。久しぶりに勝つことができたので、チームとしても会社としても価値ある勝利でした。この試合は脳震盪の影響であまり内容を覚えていないのですが、ビデオを見返すと『自分たちのラグビーを80分間やり続けてくれた』と感じましたし、そういう気持ちを映像からも汲み取ることができました」

── ホワイトカンファレンスは5位となり、プレーオフトーナメント2回戦はNTTコミュニケーションズシャイニングアークスと対戦しました。負けたら終わりの緊張感のある試合で43-13と30点差をつけての圧勝となりました。

「勝つべくして勝った試合でした。あの試合はブレイクダウンで相手がプレッシャーをかけてくると分析によって事前にわかっていましたし、それに向けていい練習ができていました。チームとしてのまとまりも感じていましたので、いい準備をして臨むことができたと思っています。元NTTコムのFB小倉順平とNo.8アマナキ・レレイ・マフィの気持ちもみんなが汲んで『絶対勝とう』と一丸となっていましたし、2人ともいいパフォーマンスを見せてくれていました」

── チームが勢いづいていく過程で、バイスキャプテンとしてどのような点で貢献できたという実感、手応えがありましたか?

「考えを言葉にするのが得意な方ではありませんので、どちらかというとプレーで引っ張るタイプだと思っています。今季はケガもあってパフォーマンスもよくなかったので、バイスキャプテンとしてあまり貢献できなかったのでは、というのが正直なところです。ただ、課題だったブレイクダウンの改善の鍵はFWが7、8割方握っていますので、その点では成長できたと思います。今季はFWリーダーでもありましたが、もちろんリーダーとしての成長はもっと必要です。苦しい時こそ道筋を早く、明確に示さないといけないと感じています」

── FWリーダーとして今季のスクラム成功率79.0%、ラインアウト成功率86.7%という数値についてはどのように受け止めていますか?

「スクラムは全然よくないですね。相手からのプレッシャーを受けていましたし、何とかしようとあがいてはいたのですが最後までうまくいきませんでした。すでにオフに入っていますが、やはりHOというポジション柄、今後どう改善していこうかと常に考えています。一方のラインアウトについては、そこまで大きい選手がいるわけではないのですが高い成功率になったと思います。佐々木隆道FWコーチとLO宇佐美和彦を中心に分析をしてくれていましたので、試合にも自信を持って臨むことができましたし、ラインアウトのレベルが底上げされたと感じています。それにより、アタックでは自信を持ってラインアウトをチョイスできていました。ただ、特に練習を重ねてきたラインアウトモールについては今一つで、もっとモールでトライを取りたかったというのが正直なところです」

── 準決勝をご覧になって、4強のチームとイーグルスの違いはどこにあると感じましたか?

「まず、準々決勝よりも明らかに集中力が高まっていました。一つ一つのプレーに集中して戦っているように見えました。戦い方そのものやプレー選択なども見ていて勉強になりました」

── 準決勝に勝ち進むようなレベルに達するためには何が必要でしょうか?

「FWとしてはやはりセットプレーを伸ばしていきたいと考えています。チームとしてのまとまりはよかったと思いますので、今シーズンをもって退団する選手はベテランの方が多いのですが、そういう選手たちはメンバーを外れてもみんなを奮い立たせるようなメッセージを送ってくれるなど、目立たないところでいろいろな形でサポートしてくれていました。そういう選手たちが抜けた時に、彼らに頼るチーム文化ではなくチームとしてそういう文化が根付かせていかないといけないと考えています」

── 庭井選手は今年10月には30歳となり、来季は8年目のシーズンとなりますが、年齢について何か感じていることはありますか?

「僕も気づいたら30歳になろうとしています。イーグルスはベテランの選手が少ないので、今お話ししたようなチームへの貢献は早い段階からやっていきたいと思っています。ただ、そういう陰の役割を果たすのは絶対にベテランでないといけないわけではありません。チームをよくしようと行動することに年齢は関係ありませんので、全員で取り組んでいきたいと考えています」

── 今年はお子さんが誕生したそうですが、プレーする上でも力になっていましたか?

「子どもの存在自体がずっと僕にパワーをくれていました。どんなに疲れて帰っても子どもの顔を見たら疲れも吹っ飛ぶぐらい癒されています。子どもが生まれて一番大変な思いをしているのは妻ですが、これまでと変わらず献身的にサポートしてくれていますので、忙しい中でも僕を支えてくれていることに感謝しています。ただ、今季は思うようなパフォーマンスができず悔しいですし、妻にも子どもにも申し訳ない思いがあります。子どもが生まれたことで強くかっこいい親父でありたいということが新しい目標になりましたので、それをしっかり体現できるように来季はいいパフォーマンスをしたいと思っています。まだ物心がついていないので、なるべく長く現役を続けて、試合をしている姿を子どもに見てもらいたいと思っています」


目の前にある問題をシンプルにし、一つ一つクリアにしていく積み重ねがチームの浮上につながったと考えている庭井。その結論、結果に至るまでには連敗と負傷の二重の苦悩があったわけだが、それを乗り越えた時に得られた達成感、見えた景色は格別なものだった。

プライベートも含め例年以上の充実を感じながらシーズンを振り返る表情は実に晴れやかだった。来季以降もチームを牽引するFWのまとめ役として活躍を期待せずにはいられない。

(インタビュー&構成:齋藤 龍太郎)

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