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選手インタビュー

2021年6月9日 | PR上田聖選手 退団インタビュー

「イーグルスでPRを始め、やればやるほど上手くなっていった」

キヤノンイーグルスにおいて長年、唯一無二の存在感を放ってきた選手がまた一人チームを去る。

PR上田聖選手。天理大学からキヤノンイーグルス入りして以来、9シーズンを戦い抜いた。大学時代はLO、しかしイーグルス1年目からはPRというほとんど前例のない難しいコンバートにも時間をかけて対応し、イーグルスでのラストイヤーとなった今季も最後まで出場し続けた。

長らくイーグルスのスクラムを支えてきたタイトヘッドPRが今季肌で感じたチームの変化、そしてこれまでの歩みなどについて、自身でもじっくりと噛みしめるように振り返り、語ってくれた。
(取材日:2021年5月28日)


── まずは今季を振り返り、どのようなシーズンだったと感じたかお聞かせください。

「沢木敬介新監督がチームに入り、これまでのイーグルスとは違う雰囲気の中、オフシーズンからみんなで努力してきました。速い展開の走るラグビーで勝つことを目指し、そのためにもまずはフィットネスにこだわって取り組んでいましたし、沢木監督のラグビーがうまくかみ合ってきた結果、見ていてもやっていても楽しいラグビーになってきたと感じました。我々選手もやっていて『あ、僕たちはこんなことができるようになったんだ』と思えることが多くなったので、すごく楽しいシーズンになりました」

── いいシーズンになった中で、特に印象深かったのはどの試合でしたか?

「僕個人としては先発出場し、今季初勝利となった第4節のヤマハ発動機戦です。スクラムではそこまで貢献できなかったのですが、開幕3連敗後の試合だったこともあって、ここで勝てたことでチームとして勢いづいた感覚を持っています。ヤマハ発動機はスクラムももちろん、ラインアウトからのモールなども含めセットピース全般を強みとしていましたので、そこでいかに止めるかが勝利の鍵でした。BKにきれいなボールを供給することができればおそらくイーグルスの方が強い、という思いがありましたので、FWがどこまで喰らいつけるかが分かれ道となるような、言わばFW次第の試合だったと思います。そんな試合で勝てたことはうれしかったですし、やってきたことが間違っていなかったと実感できた試合になりました」

(2021年3月14日 ヤマハ発動機ジュビロ戦)
(2021年3月14日 ヤマハ発動機ジュビロ戦)

── 他にも心に残った試合があればお願いします。

「第5節のリコーブラックラムズ戦ですね。長い間戦ってきましたが、なかなか勝てない相手でした。僕自身はイーグルスでの最後のシーズンになりましたので、最後に勝ててよかったと思っています」

(2021年3月27日 リコーブラックラムズ戦)
(2021年3月27日 リコーブラックラムズ戦)

── 開幕のNTTドコモ戦で接戦を落としてしまったのが連敗の始まりでした。

「あの試合は勝てる試合でしたし、絶対に勝たなければならない初戦だったのですが、最後に自分のペナルティからPGで逆転されたので申し訳ない気持ちでいっぱいです。接戦の末に星を落としたことでチーム全体の流れが悪くなったように思えます。優さん(SO田村優キャプテン)は『切り替えて次の試合に臨もう』と言ってくれたのですが、若い選手は引きずった部分もあったのではないかと思います」

── チームとしていい流れへと切り替わったのはどの瞬間だったのでしょうか?

「ルーキーのCTB山本雄貴選手がミーティングでみんなの前に出て、負けが続いている時こそ『勝ち顔』をしようと提案してくれました。ずっと下を向いていても勝てないので、ポジティブに前を向いて笑顔でラグビーをすれば勝てる、という発言をして、みんなを前向きにしてくれました。一番年下の選手がチームのためを思ってそう言ってくれたことで、僕たちベテランの選手も『がんばらなければ』という気持ちになりましたし、『次こそ絶対に勝つ』と勝利に対して貪欲になりました。そこからみんなが同じ方向を見るようになったのがチームとして大きかったですね」

── そこから連勝を重ねていき、プレーオフトーナメント2回戦のNTTコミュニケーションズ戦は43-13での快勝となりました。

「トーナメントということで負けたら終わりという緊張感がありました。その週はちょっとしたミスに対しても全員が厳しく注意し合い、気持ちを昂らせるような熱い練習をしていましたので、『この練習をしていれば絶対に勝てるだろう』という感覚になりました。僕が出場したのは最後の14分間だけでしたが、大きくリードして締めくくることができた会心の試合だったと思います」

(2021年4月25日 NTTコミュニケーションズシャイニングアークス戦)
(2021年4月25日 NTTコミュニケーションズシャイニングアークス戦)

── 準々決勝に進出し、パナソニックと対戦しました。結果は残念でしたが、手応えはいかがでしたか?

「第3節は0-47で敗れましたので、それに比べれば惜しかったと思いますし、うまく噛み合っていれば勝てたかもしれないと思えるほどいい内容の試合でした。ミスもありましたし負けたことは確かなのですが、『負けてしまった』と落胆するというよりも『一生懸命がんばって出し切った。やり切った』という感覚の方が強かったです」

(2021年5月8日 パナソニックワイルドナイツ戦)
(2021年5月8日 パナソニックワイルドナイツ戦)

── 開幕戦から最後のパナソニック戦に至るまで、上田選手がタイトヘッドPRとして特に焦点を置いてきたのは、やはりスクラムだったのでしょうか?

「もちろんセットピース、特にスクラムでチームを勢いづけることができれば、という思いでやってきました。その中で僕は声を出すことを意識していました。チームを盛り上げて活気づけるために声を出すことをためらう選手が同じポジションには多く、またトライを決めた後にトライを取り返されることが多かったので、キックオフでは『リスタート!』と声をかけたり、自陣でのスクラムでは『いつもより低く!』などと意識して声出しをしていました。もちろん、みんながそれぞれ声を出してしまうと意見がまとまらなくなることもありますので、たとえばスクラムについては庭井選手から指示を出してもらい、組む直前に気合いを入れる時だけ『よし、押すぞ!』などと僕が声を出すことでFWを鼓舞していました」

── 9シーズンを過ごされたイーグルスではラストイヤーとなりましたが、これまでとは一味違う思い出深いシーズンになりましたか?

「そうですね。個人としても、またチームとしても今季が一番よかったのではないかと思っています。僕はイーグルスに入ってからPRをやり始めましたが、PRというポジションはやればやるほど上手くなる感覚があり、スクラムでも今が一番強さを発揮できているという自負があります」

── 元々はLOだったわけですが、イーグルスでPRに転向されたわけですね。

「天理大学時代は主に5番でした。ただ、LOとしては身長(182cm)が全然足りなかったので、イーグルスでPRにチャレンジすることになりました。2、3年目までは全くと言っていいほど良いスクラムが組めず、それでも見捨てることなくラグビーを続けさせてくれたチームには本当に感謝しています。当時、同じポジションの先輩だった山路泰生さんや城彰さんにコツを聞いたり、他にもHOだった山本貢さんなどいろいろな人に聞いて、アドバイスを少しずつ自分のものにしながら、5年目ぐらいからようやくトップリーグで組めるようになりました。イーグルスでPRとして成長できて本当にうれしいです」

── キャリアの序盤にそのような苦労があったわけですが、今季以外で印象に残ったシーズンがあれば教えてください。

「2015-2016シーズン(リーグ戦第6節・グループB)、ホームでトヨタ自動車ヴェルブリッツに勝った試合です。当時の僕はリザーブで出場できるかどうかという位置だったのですが、そのトヨタ自動車戦は先発で、大きなチャンスをもらえた試合でした。他にもそれまでリザーブだった選手が数多く先発に回っていたので、みんなで『やってやろう』と気合いが入った一戦で強いトヨタ自動車に勝てたのは、僕にとって大きな経験になりました」

(2015年12月19日 トヨタ自動車ヴェルブリッツ戦)
(2015年12月19日 トヨタ自動車ヴェルブリッツ戦)

── 特に交流の深い、仲よくしてきた選手はどなたですか?

「みんなチームを去っていきましたが、同期の選手(PR菅原崇聖、LO湯澤奨平、LO日高駿、LO/FL植松宗之、SH髙城良太、SH福居武)とはみんな仲良しでした。他のどの選手とも幅広く交流してきた中で、同じフロントローではPR東恩納寛太選手、HO庭井祐輔選手とは特に仲よくさせてもらいましたね。実家が海鮮料理店を営んでいて(石川県金沢市の「あげは」)、その二人や宇佐美和彦選手、嶋田直人選手、天野寿紀選手が来てくれたこともありました。また、料理するのが好きなので、みんなに食事を振る舞ったこともあります」

(2018年9月8日 HONDA HEAT戦)
(2018年9月8日 HONDA HEAT戦)

── そんないい仲間にも恵まれたイーグルスでの9年間は、上田選手の人生にとってどのような意味のある時間でしたか?

「『ラグビーでここまでやって来られた』という自負でしょうか。ラグビーが決して盛んではない石川県で高校(鶴来高校)からラグビーを始めたのですが、ラグビーでご飯を食べられるようになるとは、ましてやプロラグビー選手になれるとは思ってもいませんでした。いろいろな人と出会えて、日本代表で活躍する選手と一緒にやれたことも貴重な経験です。まだ現役を終えるつもりはないので、これからも違う形でラグビーに関わっていきたいと考えています」


若手の時代はなかなか芽が出なかったものの、思い出深いトヨタ自動車戦をはじめとするビッグマッチで徐々に出場機会を増やしていき、勝利を重ね、イーグルスを代表するタイトヘッドPRへと成長を遂げた上田聖選手。32歳となった現在もその闘志は衰えることはない。

今後は未定ではあるものの、どのようなキャリアを歩むにしてもイーグルスでの経験が生きていくことはおそらく間違いないだろう。

(インタビュー&構成:齋藤 龍太郎)

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