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スタッフインタビュー

2021年6月2日 | 沢木敬介監督 2020-2021シーズン終了インタビュー

「取り組みが正しければパフォーマンスは変わる」

キヤノンイーグルスの選手たちはもちろんのこと、チームの変革を託された名将にとっても大きなチャレンジのシーズンとなった。

今季就任した沢木敬介監督は昨年7月からいち早くチームを始動させ、チームのカルチャーからラグビースタイルに至るまであらゆるものの刷新に着手した。新たなチーム像が確立し出したシーズン中盤から快勝を重ね、最後は準々決勝まで進出しベスト8。2018-2019シーズンの12位を大きく上回る飛躍のシーズンとなった。

だが、この結果に満足しているチーム関係者は一人もいない。これからも変わらず高みを目指し続ける沢木監督に、新たな一歩となった今シーズンを振り返ってもらった。
(取材日:2021年5月18日)


── まずは今シーズンの手応え、全体を通して感じたことなどをお聞かせください。

「イーグルスというクラブとしてのカルチャーがいい方向に向けて作れていると実感しています。さらによくしていくために改善しなければならないことはたくさんあるのですが、とにかくクラブとして成長できた1年だったと思っています」

── ホワイトカンファレンスは3勝3敗で1試合中止、プレーオフトーナメントは準々決勝に進出しベスト8でシーズン終了を迎えました。この結果をどのように受け止めていますか?

「カンファレンスで3位になるチャンスもありましたが、この結果がチームの実力だと捉えています。それ以上に大事なのは"ベスト8で満足していてはいけない"ということなのですが、準々決勝でパナソニックに敗れた後、選手たちは一様に悔しそうな顔をしていました。『もっとやれた』という気持ちを表情から感じ取ることができたので、ポジティブな要素として受け止めています」

── パナソニックをはじめ、準決勝に進出したチームとの差、違いはどこにあると感じましたか?

「やはりファイナルラグビー(負けたら終わりとなる試合で勝ち切るラグビー)をするだけの経験値が必要で、選手のナレッジやリーダーのナレッジも大事です。『ファイナルで勝つには何が必要か』ということをわかっている選手がサントリーやパナソニックには多かったのだろうと思います。イーグルスにはそういう経験値のある選手がなかなかいませんが、だからこそ試合を通じてデシジョンメイキング(プレー選択に関する意思決定)の面などでいい経験ができたのではないかと思います」

── あらためて準々決勝のパナソニック戦で感じたことをお願いします。

「我々のオリジナルのボールの動かし方については自信を持ってやってきたわけですが、やはりスクラム、ラインアウトは勝ち進んでいくほど重要なポイントになってきますので、今季のセットピースやラインアウトモールはトップ4のレベルにはまだまだ達していなかったと感じています」

── ただ、準々決勝のパナソニック戦でも後半28分のCTB南橋直哉選手のトライは、相手ディフェンスが全く対応できない素晴らしいトライでした。

「パナソニックのどこにスペースがあるかを考えつつ、また選手たちも試合中に情報収集しながらプレーできていました。ブレイクダウンでターンオーバーされることがなければ結果は違ったかもしれませんが、いいボールを出させないパナソニックの強さもありましたので、上位を目指すために必要なことが明確になった、勉強になる試合でした」

── 今シーズンの総トライ数は、第6節の日野レッドドルフィンズ戦の中止により予定よりも1試合少ない中でも全体9位の33トライでした。

「ラグビースタイルを思い切り変えましたので、最初はうまくいく試合といかない試合がありました。プレッシャーを感じるとどうしても以前のスタイルに戻ってしまうものですから、失敗を恐れず勇気を持ってチャレンジすることができたのは良くなった点だと思います。もちろんトライ数も大事ですが、今季はチャンスメイクできている回数が昨シーズンよりも格段に増えていますので、あとはそこからフィニッシュまで持っていく力をつけていく必要があります」

── その新しいラグビースタイルが根付くまで時間を要したこともあり、残念ながら開幕3連敗スタートとなりました。そこから連勝と流れが変わっていくことになるわけですが、その転機となったのはいつ、どの瞬間だったのでしょうか?

「イーグルスには練習や小さなコンペティションの中で選手同士がファイトしない悪い習慣がありました。やられてもやりかえさない、いわば仲良しチームだったわけです。第2節で神戸製鋼にやられたことで(●0-47)、第3節のパナソニック戦でそのようなマインドが少し変わってきたのだと思います」

── 神戸製鋼戦がその後に大きく影響したわけですね。

「特にメンタルの部分への影響ですね。ラグビーのうまさ云々ではなく、試合に臨む気持ちやチームに対するプライド、絶対に負けてはいけない部分ですぐにギブアップしない、といった部分が変わったと感じています」

── 最初に勝利という形で表れたのは第4節のヤマハ発動機ジュビロ戦でした。チームとしてどのあたりに改善が見られたでしょうか?

「スタートから持っている力を全開で出すためにチャレンジしよう、ということですね。シンプルにそこだけでした。試合終盤、シンビンで14人になりましたが、フィットネスに限ればトップ4のチームにも負けないレベルにありました。それだけの練習をしてきましたので、フィットネスは自信がついてきていると思います」

── 就任当初から「チームを愛すること」の重要性を強調されてきましたが、選手たちにそのような姿勢は見えてきたでしょうか?

「そうですね。最初に感じた印象とは比べ物にならないぐらい選手たちのチームに対する思い入れが伝わってきました」

── 『Exciting&Quality Rugby』の達成度についてはいかがでしょうか?

「いろいろな意味でエキサイトすることができたシーズンでした。クオリティについては選手たちもまだまだだと感じているのではないでしょうか」

── 例えば、バイスキャプテンでFWリーダーを務めたHO庭井祐輔選手は今季のスクラムの精度について猛省されていました。

「いいことですね。選手たち自身が成長するためのプランをしっかり考えられるかどうかが大事です。自分がどうなりたいのか自分で考えることができれば、そうなるために何をしなければいけないかが明確になります。ですから、選手にそういう考えが出てきていることに成長を感じます。『どうなりたいか』を考えることができなければ取り組み方が明確にならず、そうならなければパフォーマンスも変わりません。もちろんコーチのサポートもありますが、その取り組みが正しければパフォーマンスも変わるはずです」

── また、開幕前は「写真に残したくなるビューティフルなプレー」も指標の一つにされていました。その点はいかがでしたか?

「記憶に残るトライが増えたのではないでしょうか。先ほど話に出た準々決勝パナソニック戦の南橋のトライもそうですし、第5節リコー戦でFB橋野皓介のグラウンダーのキックからWTBホセア・サウマキが決めたトライ(後半33分)しかり、もちろん第4節のヤマハ発動機戦しかりいろいろなトライがあり、各試合でファンのみなさんに覚えていただけるトライが増えたと思います。ただこなすだけのトレーニングではなく意欲的なトレーニングを選手たちがしてきた結果です。そのようなトライをまだまだ増やしていかないといけないと思いますし、トライだけではなくタックル、スクラム、ラインアウト、キックオフなどなど、プレーとしてビューティフルなシーンをたくさんお見せしていきたいと考えています」

── 田村優選手のキャプテンとしての評価、プレーヤーとしての成長についてはいかがでしょうか?

「今シーズンはパフォーマンスが格段によくなりました。キャプテンの経験も初めてだったと思いますが、僕にいろいろと言われながらもいい勉強になっていると思います。取り組む姿勢も変わったと周りは評価していますし、それがパフォーマンスにも表れています。優なりのリーダーシップを感じましたし、僕は任せてよかったと思っています」

── キャプテンとしての発言、振る舞いも素晴らしかったとうかがっています。

「リーダーにはいろいろな形があると思います。優は状況に応じた正しい言葉を組み立てながらやっていくタイプではないですし、そのようなまじめなキャプテン像はあまり求めていません。ただ、リーダーは周りから常に見られる存在であり、周りからリスペクトされる振る舞いをしないといけません。どの世界においてもリーダーに求められる振る舞いとはそういうものだと思います」

── 日本代表候補としてSO田村選手、No.8アマナキ・レレイ・マフィ選手に加え、SH荒井康植が選ばれました(5月24日、3選手とも日本代表に選出)。初選出となった荒井選手についてはどう評価されていますか?

「一つ一つのプレーについてはいいものを持っていましたが、メンタル面で少し遠慮がちで周りに気を遣い過ぎる面がありました。SHはフミ(田中史朗)のように相手が嫌がるような選手でないといけませんので、フミから学ぶことは多いと思います。荒井の先発起用が増えたのは、今のチームにおける役割の問題です。後半は経験のあるフミでなければコントロールできない場面が多かったので、フミも今シーズンはいい仕事をしました。しっかりチームを落ち着かせていましたね」

── 選手の成長を感じると同時に、ご自身の指導者としての学びも多いシーズンとなりましたか?

「当然ながら日々勉強しないといけないと思っています。選手を指導しているのに自分の引き出しの中身が空っぽだとしたら誰もついてこないですし、僕も選手と一緒に成長させてもらっています。周りのスタッフも今季は朝早くから大変だったと思いますが、そういった朝の習慣は生活の規律にも関わってきますし、規律正しい生活をしなければグラウンド上での規律も守れないと僕は考えています」

── 最後に来季、新リーグ元年においてチームとして目指すところをうかがいます。

「選手個々の力もそうですしクラブとしてもそうですが、やはり今年よりも絶対にレベルアップしなければなりません。そのために何が必要か、ということを明確にしてチームとしても個人としても取り組んでいけば、ベスト4の壁を崩すことができると考えています」


沢木監督がチームにもたらし、選手たちに根付かせていったものは数知れないが、その代表格と言えるのはやはりチームに対する「愛」だろう。特に今シーズンの選手たちによる勝利の瞬間の喜びようは、強烈なまでのチーム愛の表れだったと見ることができる。

新リーグへと移行する来シーズン、沢木監督率いるイーグルスはさらにチーム愛を深め、トップリーグのラストイヤーとなった今季以上に多くの勝利の味を知ることになるはずだ。

(インタビュー&構成:齋藤 龍太郎)

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