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スタッフインタビュー

2022年9月20日 | 遠藤 哲アシスタントコーチ インタビュー

「途中段階では気付けない成果に導くのがコーチの仕事」

インターナショナルレベルから大学に至るまで様々なカテゴリーでの指導を経験してきた遠藤哲氏が、このほど横浜キヤノンイーグルスのアシスタントコーチに就任した。

現役時代は早稲田大学、ワールド、サニックス、リコーブラックラムズ(現ブラックラムズ東京)でLOとして活躍。リコーでコーチングキャリアをスタートさせ、その後ジュニア・ジャパン、U20日本代表のFWコーチ、ヘッドコーチを務めた。関西大学や中央大学でも手腕を振るうなど、若い選手を中心に指導を行ってきた経験豊富な指導者だ。

沢木敬介監督とは、U20日本代表でヘッドコーチ(沢木)とFWコーチ(遠藤)という間柄だ。イーグルスでもFW担当のアシスタントコーチ(ラインアウトとモールを担当)となった遠藤コーチに、イーグルスのFWに求めるもの、そのコーチング哲学などについて、今季初の全体練習後に話をうかがった。

(取材日:2022年9月12日)




■上手くなりたいと思っている選手を「しっかり見ることが選手の成長にもつながる」

──初の全体練習、手応えはいかがでしたか?

「全員が元気に集まって練習することができました。少々ちぐはぐなところもありましたが、自主練習に取り組んできた選手たちが『もっと上に行きたい』という意志を表してくれたと思います。昨シーズンの悔しさを晴らすという意気込みを強く感じています」

──これまでイーグルスに対してはどのような印象を持っていましたか?

「選手たちがパッションを持っており、ひたむきで熱い、そんな印象がありました。やろうとしていることが体現できている、できつつあるという雰囲気を昨シーズンのチームからは感じました。チームの歴史の階段を一段ずつ上がっている、そんな状況ではないでしょうか」

──実際にイーグルスでコーチングを開始して、チームの印象は変わりましたか?

「やはりひたむきで熱いという印象はチームに合流してからも引き続き感じています。そしてチームとしてさらに伸びており、大きな可能性を感じています。開幕まで限られた日数の中で練習して日々成長し『気づいたらこんなところまで来たのか』というチームになれる、そんな可能性を持っているチームだと思います」

──アシスタントコーチとしてFW、特にラインアウトの指導を担当されています。

「取り組みはまだこれからですが、モールも含めて指導していきます。昨シーズンの実績を見ても、鍛え上げられた選手たちの意志とコーチ陣の計画によって作り上げた成果の一つがモールです。それがシーズン通して一貫して大きな武器になっていました。まずはそのレベル、自信を当たり前のものにするところからスタートし、さらにそこにプラスアルファを加えることがモールにおけるテーマになりますので、選手と一緒にいいものを作り上げていきたいと考えています」

──アシスタントコーチとして、沢木敬介監督からはどのようなことを期待されていると考えていますか?

「やるべきラグビーを実現するスタートラインとして『セットプレーの安定』という大きなテーマがありました。ラインアウトには不安定な要素が数多くありますので、それをいかに安定させるか、ということがターゲットということになります」

──U20日本代表、ジュニア・ジャパン、そして大学と、遠藤コーチは長年若い選手の指導をしてきました。

「確かにそうですが、指導する上では若手もベテランも変わりません。根本は、上手くなりたいと思っている選手をしっかりと見ることです。コーチに見られることが選手の成長にもつながると考えています」

■「体に染み込ませて無意識にできるようになる」のがラインアウトの出発点

──今年、来日していたフランス代表の練習を見学していました。世界のトップチームから学んだことや発見などはありましたか?

「アンストラクチャー(陣形が整っていない状態)を作り、その中でフランス特有のひらめきを偶然作るのではなく意図的に作りながら鍛えている、そんな練習構成でした。ラインアウトに関しては、やはり基礎がしっかりできていればオプション、選択肢が広がるということを見させてもらいました」

──アタックの起点となるラインアウトの精度を上げていくために、まずはどういったことから着手していこうと考えていますか?

「本当に地味ですが、リフティングやスローイングといったベーシックのコアスキルを大事にしたいと考えています。『基本が大事』と言うことは簡単ですが、オプションの幅を広げたりラインアウト自体のダイナミックさを強めていくためにはコアスキルの向上に取り組む必要があり、取り組んでいる最中には気付けない成果が最終的には得られます。そこに導くのがコーチの仕事です」

──今はまさに基本の段階、ということですね。

「最初は基本中の基本からの指導となりますので、選手たちにとっては刺激が少ないと思います。ただ、そのメカニズムの難しさや面白さを感じられるようになるとそれが上手くいった時に大きな成功体験となり、いきいきとプレーしてくれるようになります。今はそれを意識的にやっていますが、体に染み込ませて無意識にできるようになるのが出発点となります」

──まだ始動したばかりですが、選手たちとのコミュニケーションはいかがでしょうか?

「ラインアウトをどう向上させていくか、ということについてグラウンド上で選手たちと話し合っています。よりよいラグビーをするためによりよいラインアウトを、よりよいモールを作り上げる、そのための話し合いを活発にできればコミュニケーションも自然と成立していくと考えています」

──ラインアウトにおいては、経験豊かで常に試合に出続ける選手もいる一方で、経験が浅くなかなか出場機会が得られない選手もいますので、チーム全体の底上げが必要になってくるのではないでしょうか?

「その点はラインアウトに限らず、チームを作る上で極めて重要な要素です。組織である以上は競争があります。でも、選手が元々持っている才能だけに頼ってチームを作っていっても選手の優劣は変わりません。例えば細かいスキルでラインアウトをよくしていくなど一つ目指すものを明示した上で、選手たちが本気でそれを達成するための努力を遂行していけば、元々あった差は気づいた時には詰まっているはずです。そうなれば、いい意味で『誰が試合に出てもレベルが落ちない』というところを目指せると思いますし、『けが人が出たからセットプレーの質が落ちた』ということもなくしていくことができます」

■「熱いイーグルスを選手たちと作り上げていきたい」

──間もなく始まるプレシーズンマッチではどのような成果を残したいと考えていますか?

「何か指標を具体的に決めているわけではありませんが、ラインアウトとモールの最終的なゴールがあって、プレシーズンマッチはそのゴールに向かっていくための第一歩ということになりますので、そのプロセスの上に乗っていればいいと考えています」

──ラインアウトを起点にトライが獲得できる確率を上げていく必要があります。

「そうですね。ラインアウトが安定すれば自然とラインアウトを起点に攻める選択をする回数が増えていくと思います。ラインアントからトライが獲れる、と思わせるだけの安定感を作り上げていく必要があると思います」

──開幕まで約3ヶ月という段階ですが、現在の意気込み、イーグルスファンへのメッセージがありましたらお願いします。

「ラグビーの醍醐味の一つと言えるセットプレーを担うFWがアグレッシブにグラウンド上で動き回っている姿をお見せできるように、熱いイーグルスを選手たちと作り上げていきたいと思っています」




ラインアウト、モールにかける思いは人一倍だ。そしてそれらの精度を上げていくためにはとことん基本に、ディテールにこだわる。遠藤哲コーチのそんな姿勢が感じられたインタビューとなった。

ラインアウトの安定と、それを起点としたモールをはじめとするアタックは、今シーズンのイーグルスの強みとなるはずだ。開幕までの仕上がりに期待したい。

(インタビュー&撮影:齋藤 龍太郎)

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