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イーグルスマンスリーコラム

イーグルスマンスリーコラム

イーグルスマンスリーコラム第3回

田村 一博

トップリーグ随一の猛者たちに目を吊り上げさせた。開幕の東芝戦だ。

 ワイルドナイツを刺す。

 漆黒の好敵手相手に唇を噛む。

 雨の山口で近鉄に競り勝った。

 初めての2グループ、2ステージ制で迎えた2013年度のトップリーグ。セカンドステージでの上位グループ入りがかかるファーストステージの序盤4試合を2勝2敗で終えた。イーグルスの見せたパフォーマンスは、残した結果以上に大きかった。
ソーシャルネットワークサービスの書き込みにファンの言葉がたくさん躍ったのは、伝統あるパナソニックを23-18で破った直後だ。
「ラグビーの神がキヤノンに降りてきております」
「すんごい面白い試合、最後までドキドキした!くわーラグビー面白いよ!」
対戦者たちに、再戦意欲の沸かせぬ記憶を刻み込んだ4試合。スタジアムへ足を運んだ観戦者たちには、「また見たい」と思わせた。ピッチから引き上げてくるライバルたちの表情を見ればわかる。家路に就くファンから高揚感がわき出ていた。同じ空間で熱気を吸い込んだ者としての実感だ。

 各試合の内容は、このホームページの他項に詳しい。ここでは、取材者の触れた現場の空気を伝えたい。
毎試合後に行われる記者会見。永友洋司監督と和田拓主将の顔がいつもいい。

 成長を感じながらも、毎度チームの「青い」部分をピシャリと語る指揮官。キャプテンは、ピッチで走り切って精根尽き果てているけれど、いつも丁寧に、噛みしめながら言葉を出す。
監督が、「昨年の東芝戦後は、選手たちか口々に『からだが痛い、痛い』と言っていましたが、今回は聞こえてこなかった。それも進歩なのかな、と思います」と言ったのは開幕戦だった。ただ、そう言いながらも8-10と敗れた試合内容には、2点差以上の違いがあるのだと淡々と言う。
「東芝には勝つ文化がある。うちには、まだそれがない」
勝利とウィニングカルチャー。その間にある差を監督は、敗れるたびに口にする。
なにがなんでも勝利をつかもうとする全員の意識と執着心。勝ち方を知る者の存在と、その数。負けることを拒否する力も、その一部だ。
勝つだけでなく、勝ち続ける、勝利を重ねるには、目に見える強さだけではだめだ。プレーヤーとして、指導者としていくつもの修羅場を歩いてきた男は、それを知っている。

 ただ、勝つ文化を確立するのはまだも、チームカルチャーが生まれつつあるのは確かだろう。
このチームの、ピッチに立つ選手たちの共通点は何か。
「One Team, One Target」のチームスローガンに沿って、一途な態度を貫ける選手たちであるのは大前提だ。そんな男たちは、誰もがハードタックラーだ。そして全員が走り抜く。
開幕から3戦続けて両FLに入った湯澤奨平、清水直志。大型外国人選手ひしめくトップリーグのセンター陣の中で、決して大きくない体躯の三友良平は逃げず、蹴る。うまくやろうとするより、愚直に生きる男たちが評価される空気は、このチームがいま真っ直ぐに伸びている何よりの理由だろう。

 そして未知の力だろうがベテランだろうが、チームの求める基準に達しているのなら、部員の誰でもピッチに送り出す明快さがあるから、チームに活気が生まれる。
第3節のリコー戦では、天理大学時代はロックとして活躍しながら、入団と同時にプロップに取り組んできた2年目の上田聖が初先発の座をつかむ。押し込まれるシーンもあったけれど、やっと得たチャンスに死力を尽くし、試合後の背番号3は希望に満ちていた。
「最初はまともにスクラムを組めなかったのに、練習で先輩や仲間に何度も何度も組んでもらったおかげで、ここまで来られた。感激です。(自分のプロップとしての時間は)まだはじまったばかり。もっと強くなって、出場し続けることを目標にしたい」

 第4節の近鉄戦ではイーグルス創設以来の生え抜き、山路泰生が3番を背負った。淵野辺の傾いたグラウンドで汗を流したことのある男たちも、トップリーグしか知らない若者も、同じ熱量で戦っている。

「まとまってやれたが、もう一歩のところ。この差を超えないといけない。もっとボールを動かすラグビーをしたかった。できたところもあったが、もっとやりたかった」
開幕戦に惜しくも敗れたとき、和田主将は「純粋に悔しい」と唇を噛んだ。そこには、善戦への安堵のかけらもなく、伝わってきたのは無念さのみ。そんなキャプテンが、第4節の近鉄戦で、1点差の逆転勝利(18-17)を手にしたときには笑った。
「次に繋がる勝利だった。落ち着きがありゲームコントロールがうまい近鉄さんに対して、それ以上に敵陣に入ろうというチームの意識統一ができていた。チームの成長を感じています」

 トップリーグ2年目のチームは、よちよち歩きの2歳ではない。

 血気盛んな若者が大勢いる、闘う集団になっている。


田村一博
田村一博(たむら・かずひろ)

◎プロフィール

1964年10月21日生まれ。89年4月、株式会社ベースボール・マガジン社入社。ラグビーマガジン編集部勤務=4年、週刊ベースボール編集部勤務=4年を経て、1997年からラグビーマガジン編集長。

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