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イーグルスマンスリーコラム

イーグルスマンスリーコラム

イーグルスマンスリーコラム第3回

田村一博(ラグビーマガジン編集長)

勝たなければいけない相手に勝った。
 負けはしたけれど、勝ちたい相手に迫った。
 そして「勝てる相手」なんていないけれど、セカンドステージでBグループに入ることになる相手にはきっちり勝った。
 つまり、なんとなく戦った試合はひとつもなかった。
 4勝3敗で終えたファーストステージ。イーグルスはプールBで3位となり、セカンドステージを上位8チームで戦うグループAで戦うことになった。昨年同様の、シーズン開幕からのここまでの軌跡。でも、その一歩一歩の重みは1年前とは違う。

 勝たなければいけない相手を倒したことは、何より大きな自信になった。
 第2節のリコー戦だ。同業種ダービーと位置づけられ、対戦のたびにヒートアップしてきた同カード。今季は「川中島の合戦」と銘打たれ、秩父宮ラグビー場の熱気は凄かった。
 これまで勝てなかった相手に、赤いジャージーは初めて勝った。前節の開幕戦で敗れていた。そして、過去2シーズン負けている最大のライバルと、重くのしかかる期待。その中で刻んだ33-21のスコアは、先制を許したところからの逆転勝ちだった。
 あの試合後の永友洋司監督のコメントをよく憶えている。
「(リコーとは)わずかな差だった。ボールを手にしていないときに、どれだけ戦えるか。それをテーマに試合に臨みました。自分に負けないこと。実際、ピッチの上に立っているのはいつも赤(ジャージー)の方が多かったように思いました」

 その言葉を聞いたとき、シーズン直前、和田拓主将が「今年はこれまで以上に本当によく走ってきたんですよ」と語った姿を思い出していた。実際、そのリコー戦で試合を決定づけたCTBティム・ベネットのトライ(ゴールも決まり33-16)は、キックカウンターからのもの。反応よく多くの選手が戻り、アタッカーの数が多かったから生まれたものだった。
 チームにとって、停滞ほどこわいものはないだろう。だからイーグルスは昨シーズンの戦いを経て、強豪チームより一歩でも先に動き出すこと、多く走ることを念頭にオフシーズンを過ごし、今季を迎えた。長い時間をかけないと手にできないものをチームの芯にしていることを証明した試合。それを感じて、今季はこれまで以上の成績を残すと思ったのは早計だったか。いや、手に入れることが難しいものだから、やはりぶれることもなかった。

左/8月24日(日)豊田自動車戦 右/9月5日(金)サントリー戦

 負けはしたけれど勝ちたい相手に迫れたのも、揺るぎない武器を手にしたからだ。
 イーグルスが喫した3敗は、開幕戦のトヨタ自動車戦(16-23)と、最後の最後にひっくり返されたサントリー戦(17-20)と、ファーストステージの首位に立った神戸製鋼戦(14-17)。ファーストステージ最終戦となったその試合は、重厚な神戸FWに苦しめられる前半を過ごしながらも、後半は自分たちの時間を多く持った。敗れながらも、マン・オブ・ザ・マッチに選ばれたのは後半20分にトライを奪ったWTB原田季郎だった。試合終了時、どちらのチームに勢いがあったかは推して知るべし、だ。

左/10月12日(日)コカ・コーラ戦 右/10月19日(日)神戸製鋼戦 原田選手

 セカンドステージでBグループに入ることになる相手にはきっちり勝って、安定感ある戦いを続けられる力を示したイーグルス。ただ、ここまでのパフォーマンスがセカンドステージの飛躍を約束するものではないと選手たちが自覚しているから、そういう意味でも今季は1年前とは違う。
 前出の原田は今夏に言った。
「昨シーズンのセカンドステージ、チームも自分もシーズン序盤と同じようにはプレーできなくなったんです。シーズンが深まると、強いチームは本当にガラリと変わるんです。ただ、今季はあの感覚を知っているのが大きい。プレシーズンマッチでも、その意識を持って『これでは足りない』と戦いましたから」
 2年続けての上位グループ入りを決めて、イーグルスの選手たちは安堵しているだろうか。
 そんなはずはない。昨季のセカンドステージは1勝6敗、8チーム中7位に終わっている。ここから、真価を問われる戦いが始まるのだ。同じジャージーを着ているのに、ファーストステージとは違い眉を吊り上げてくる強豪たちを知っている。そんな相手との連戦で襲ってくる疲労も大きな敵だ。だからより一層の結束、メンタル、フィットネスが求められる。だからトップリーグ休止の初秋、イーグルスは休むことなく走り続ける。「キャンプ」の文字が連なる11月のチームスケジュール。ただグループAにいるだけでなく、トップ4争いや、日本選手権での上位進出など、真冬に決戦を迎えられるようにするための大切な時間とみんなが理解している。

 先日、日本代表を率いるエディー・ジョーンズ ヘッドコーチがラグビーマガジンのインタビューでこう話した。今季のイーグルスの試合を見ていて、興味深く思ったことがあったそうだ。
「アダム・トムソンの態度や振る舞い方が、昨年に比べ大きく変わっています。ある試合でのことでした。彼がラインブレイクした後、WTBにパスをしたら、その選手がノックオンをしました。去年だったら、アダムは不満を表していたと思います。しかし今年は、その選手の肩を叩いて慰めていた。彼はチームのためにプレーするようになったわけです」
 同ヘッドコーチは、イーグルスに確かなコーチングがあって、よい空気が流れているのだろうと言った。
 個々の進化とチームの進化を比例させることができたなら、イーグルスはさらに高く飛ぶ。


田村一博
田村一博(たむら・かずひろ)

◎プロフィール

1964年10月21日生まれ。89年4月、株式会社ベースボール・マガジン社入社。ラグビーマガジン編集部勤務=4年、週刊ベースボール編集部勤務=4年を経て、1997年からラグビーマガジン編集長。

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