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イーグルスマンスリーコラム

イーグルスマンスリーコラム

イーグルスマンスリーコラム第4回

村上晃一

キヤノンイーグルスの試合を見ていて感じるのは、「ほんとに熱いチームだな」ということ。永友洋司監督が一番熱いかもしれないのだが、その気迫が乗り移ったかのように選手のプレーも熱い。ファーストステージの最終節(10月19日、愛媛、対神戸製鋼戦)では気合が入りすぎ、勢い余ったタックルなどで2選手がシンビン(10分間の一時退場処分)になった。前半の終了間際と後半の立ち上がりは13人で戦っていたのだが、それでも、15人の神戸製鋼にまったく臆することなく互角の好勝負を繰り広げた(スコアは、14-17)。

熱くなりすぎて、思わぬ反則もあるけれど、そのたび反省して、踏ん張って、食らいつく。愛すべきチームだと思う。結局、試合は3点差で敗れたのだが、粘り強く戦ったことで7点差以内の負けに与えられるボーナス点が入り、セカンドステージの上位8チーム「グループA」行きが確かなものになった。神戸製鋼戦後の記者会見で永友洋司監督は次のようなコメントを残している。「ミスと反則でゲームを壊してしまった気がします。3点差以上の実力差を感じました。セカンドステージでは、精度の上がったラグビーをしたいと思います」。隣に座っていた和田拓キャプテンは力強く言った。「セカンドステージでは上位を狙います」。

2年連続のセカンドステージ挑戦である。サポーターの皆さんや関係者の方々の期待感も高まっているだろう。トップリーグ昇格2年目だった昨季のセカンドステージでは、NECからあげた1勝のみで7位に終わった。その後、ワイルドカードトーナメント1回戦で下位グループの近鉄に敗れてシーズンを終えている。2年連続で同じ轍を踏むわけにはいかない。今年こそ上位4チームに入って優勝を争うプレーオフトーナメント進出を狙うのだ。

11月28日に開幕するグループAの大方の予想はこうなる。「昨季のトップ4であるパナソニック、サントリー、神戸製鋼、東芝が優勝争いの軸だが、ヤマハ発動機がここに割って入る可能性も十分ある」。つまり、キヤノン、NTTコミュニケーションズ、トヨタ自動車がトップ4に入れば波乱である。キヤノンイーグルスが暴れればセカンドステージは盛り上がるわけだ。予想を覆し、大いに暴れてもらいたい。

9月5日サントリー戦、10月19日 神戸製鋼戦

トップリーグのデータ解析を担当する「データスタジアム」の集計では、キヤノンは、ディフェンスを破られる回数「被ラインブレイク数」が、ファーストステージを通じて16チーム中、最も少なかった。「ラインブレイク」というのは、観客の皆さんから見て、「うわっ、抜けた!」と声が出るような、ディフェンスラインを完全に破った状況を言う。そうされた回数が、ファーストステージ7試合で11回しかなかった。これは誇っていい数字だし、セカンドステージでもキヤノンの強みになるだろう。

ファーストステージが終わったところで気になったのは首脳陣の交代である。ゼイン・ヒルトン ヘッドコーチが退団し、FWコーチだったクリストファー・ヒッキーがヘッドコーチに昇格。新たなFWコーチに、元オーストラリア代表選手のスティーブ・タインマンが就任した。シーズン中に大丈夫なのかと心配するファンの皆さんも多いだろう。しかし、永友監督は言う。「大きくは変わりません。ずっとアタック(攻撃)にフォーカスしてチームを作ってきましたし、ポジティブに考えれば、いつもやっていることを新しいコーチが違うアプローチ、言い方で指導する。それは、選手にとって新鮮なことだと思うのです」

永友監督、ヒッキーHC、タインマンFWコーチ

永友監督は息切れしてしまった昨季と違い、「今季は選手の容量が増えたと思います」と言う。昨年は心身ともに疲れ果て、セカンドステージに向かって上積みができなかったが、今季は選手に余裕があり、さらに上積みできそうだというのだ。「ファーストステージは、ストラクチャーからのトライが多かったのですが、セカンドステージではアンストラクチャーからのトライの比率を増やしたいと思っています」。

ストラクチャーからのトライとは、スクラムやラインアウトといったセットプレーなど統制された状況からのことだ。ファーストステージのキヤノンのトライは、58%がスクラム、ラインアウトから生まれている。アンストラクチャーとは相手のキックをキャッチしたり、相手からボールを奪ったりした後の、フォーメーションが整っていない状況のことだ。ここからの攻撃でトライをもっと増やしたいわけである。

「グループAのチームはみんなフィジカル面が強い。アンストラクチャーの中でストラクチャーを作って攻めていきたい」と永友監督。上位陣はディフェンスも堅く、セットプレーも安定している。そこを破るのは容易ではない。相手がミスをしたときや、不用意なキックをしたとき、そのボールをトライに結びつけることが勝利の鍵になる。混沌とした状況下で組織を整え、チャンスに変えるための準備をこの11月に行ったということなのである。それができれば、上位進出は現実のものになる。

もう一つ、昨季からの課題である、自陣での反則は減らさなくてはいけない。セカンドステージの対戦相手には、優れたプレースキッカーが多いことも忘れてはいけない。心は熱く、プレーは激しく、しかし、反則をしない冷静さを保つのだ。今季より加入したベテラン菊谷崇、小野澤宏時の存在はさらに重要なものになるだろう。さあ、開幕ダッシュでセカンドステージの主役に躍り出ようではないか。


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村上晃一

◎プロフィール

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。ラグビーマガジン、ナンバー(文藝春秋)などにラグビーについて寄稿。J SPORTSのラグビー解説も98年より継続中。99年、03年、07年、11年のワールドカップでは現地よりコメンテーターを務めた。著書に、「ラグビー愛好日記トークライブ集」(ベースボール・マガジン社)3巻、「仲間を信じて」(岩波ジュニア新書)などがある。

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