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選手インタビュー

2020年11月19日 | 男子SDS(男子セブンズ日本代表候補)松井千士選手 インタビュー

■「チームとともにステップアップし人間としても成長したい」

松井千士選手

開催が2021年に延期された東京五輪の中でも、7人制ラグビー「セブンズ」はとりわけ注目されている競技のひとつだ。2016年のリオデジャネイロ五輪(以下「リオ五輪」)から男女ともに夏季五輪の正式競技となり、男子日本代表は初戦から金メダル候補のニュージーランドを撃破。その後も快進撃を続けた。最終的には4位に終わり惜しくもメダルには届かなかったが、日本代表の快挙を世界が称えたことは記憶に新しい。

それから4年余り経ち、来年、開催国として悲願の表彰台を目指す男子セブンズ日本代表の候補「男子SDS(セブンズ・デベロップメント・スコッド)」の一員であり、キャプテンという重責を担っているのが松井千士だ。スキッパーとしてだけでなくトライを獲り切るフィニッシャーの使命も背負う、日本ラグビー界屈指の俊足WTBである。

サントリーサンゴリアスで3シーズン活躍後、今季キヤノンイーグルスに移籍した松井だが、延期された東京五輪まで1年というタイミングでなぜ移籍を決断するに至ったのか。そして、リオ五輪では大会直前に代表から外れ、バックアップメンバーとしてリオに同行するという悔しさを味わった松井が抱く、東京五輪への思いとは。率直な思いを聞いた。
(取材日:2020年11月5日)



■試合以上のプレッシャーがある中で練習できている

松井千士選手


──最初に、サントリーから移籍された理由、動機をお願いします。

「サントリーでは社員選手として活動していたのですが、やはりプロ選手として勝負したいという思いがありました。サントリーでプロ選手になれなかったわけではないのですが、ずっと同じ環境にいるのではなく、チャレンジャーであるキヤノンイーグルスという新たな環境に身を投じチームとともにステップアップしていきたい、という思いが強くなり、移籍を決断しました。まだまだイーグルスの顔にはなれないと思いますが、しっかり活躍していずれはチームを引っ張っていけるようになりたいですし、リーダーシップの面、さらに言えば人間として成長したいという意志を強く持っています」

──男子SDSの合宿期間以外はイーグルスで練習していますが、U20日本代表やサントリーで薫陶を受けた沢木敬介監督の指導についてはあらためてどのように感じていますか?

「変わらず厳しいです。沢木さんが厳しい環境に追い込んでくれて、試合以上のプレッシャーがある中で練習できているからこそスキルも向上しますし、そのような緊張状態の中で練習していかないとおそらく成長はできません。ですから、沢木さんとまた一緒に活動できることは僕にとっても大きなプラスになると思います」

──イーグルスではすでに成長を感じていますか?

「プレッシャーがある中での練習を続けていることが、セブンズの方にも活きていると実感しています。相手と接近した状況でのパススキルやキャッチスキルは15人制の練習でも磨きやすいので、セブンズにも確実に活きてくるはずです。その面で成長を感じていますし、今後も両方のポジティブな部分を取り入れていきたいと思っています」

──イーグルスの練習とセブンズ合宿、両方の相乗効果があるということですね。

「そうですね。スキルもどんどん上がっています。たとえば、セブンズは走る機会が多いので、セブンズの合宿からイーグルスに戻ってきてもフィットネスの面でいい状態で臨むことができています。両方の練習に参加していることで、両方にプラスに働いていると感じています」

松井千士選手

──成長を実感する一方で、感じている課題がもしあればお願いします。

「セブンズの合宿との兼ね合いもあるので、イーグルスのみんなとのコミュニケーションはまだまだこれからです。みんながパスを放ってくれるタイミングやランニングコースなど、細かいクセの部分はまだ分かっていないところもあります。ただ、そこはみんなで練習し、試合を重ねていかないと身につかない部分なので、現時点では課題ではありますが焦ることなく今後も取り組んでいきたいですね」


■今でも鮮明に記憶しているリオ五輪の悔しさ

松井千士選手


──東京五輪が1年延期になり、2021年7月に開幕予定となりました。モチベーションの維持の難しさなどはなかったでしょうか?

「ずっと2020年を目指してやってきましたし、コンディションも整っていました。2020年にやりたかったという気持ちが大きかったので気持ちの切り替えはあまりうまくいかなかったと思います。コロナによる自粛期間もあって代表もなかなか集まれなかったですし、しばらくはラグビーをする環境自体がなかったのですが、その期間にあらためてメダルを獲るということをしっかりと考えた結果、切り替えることができたと思っています」

──切り替えのきっかけとなった出来事などはあったのでしょうか?

「自粛期間はイーグルスへの移籍に向けて動いていましたので、プロ生活を始めるにあたり自分の意識を変えていかないといけないと思うようになりました。また、一人の時間が多くなったので、自分を見つめ直すいい機会になりました。東京五輪出場はもちろん、メダルの獲得を毎日考えながらフォーカスしていたことが自分を奮い立たせたのだろうと思います」

──そのメダル獲得という目標を達成するために、さらに必要なことは何でしょうか?

「スピードを活かすプレーヤーとしてトライを獲るという大きな役割を担っていますので、確実にトライを獲り切る力やそのためのスキルを伸ばしたいと思っています。また、代表ではキャプテンを務めさせていただいていますが、リーダーシップを発揮してチームを引っ張っていくというよりは、周りを巻き込んでいくようなキャプテンになりたいと考えていて、その点がまだ課題だと感じています」

──これまでの長い競技歴の中で、キャプテンの経験はありましたか?

「同志社大学ではバイスキャプテンでしたが、キャプテンは一度もなかったですね。リオ五輪を経験された先輩もいる中で、初めてキャプテンをやらせていただいています」

──チームメイトの先輩にはキャプテン経験者が複数います。

「小澤大さんや、その前のキャプテンだった坂井克行さんもいらっしゃいます。また、残念ながら東京五輪を断念されたリオ五輪時のキャプテン、桑水流裕策さんは今でもチームを気にかけてくださっています。僕一人でチームを引っ張ろうとしていた時、そのような先輩方が『遠慮なく頼ってくれればいい』という話をしてくれました。今は先輩方に頼りながら、僕一人で気負い過ぎることなくチームをうまくまとめることができています」

──リオ五輪で最後の最後に代表から落選した悔しさはまだ胸に残っていますか?

「4年以上経ちますが、悔しい思いは今でも鮮明に記憶しています。バックアップメンバーとしてリオには行きましたが、ピッチ内の雰囲気だけは分からないまま大会が終わりました。日本代表が初戦でニュージーランドに勝った時はすごくうれしかったですし、チームとして4位という結果を残してくれたことも誇らしかったのですが、五輪のピッチに立てなかったことは生涯で一番悔しかった思い出でもあります」

──それが東京五輪のモチベーションへつながっているのでしょうか?

「はい。リオ五輪の悔しさがあったからこそ、東京五輪が延期になっても思いとして変わらずにいられるのだと思っています。1年延期されたからといってあきらめるつもりはなかったですし、リオ五輪の4位という結果を絶対に上回ろうという気持ちを強く持っていますので、それを必ず達成したいです」


■勤勉に働き続ける「Bee Rugby」で勝ち切る

松井千士選手


──イーグルスには、ともに東京五輪を目指す中川和真選手、そして長年セブンズ日本代表で活躍され、残念ながら東京五輪を断念された橋野皓介選手もいらっしゃいます。

「高校も大学も先輩で、数々の経験をお持ちの橋野さんはセブンズ代表をまとめる面でもぜひ頼りたいと思っていましたので、東京五輪を断念されたのはすごく残念でした。でも、僕がイーグルスに入った時は『一緒のチームになれてうれしい』と言っていただきましたし、今でもセブンズの合宿がどうだったかなどといった話も聞いてくれるので、ありがたい存在です。中川とはセブンズ合宿でもずっと一緒にいるので、どういうコンディションでイーグルスの練習を迎えるか、といったことを二人で話し合っています。中川と一緒に東京五輪に出たいですし、イーグルスからオリンピアンが二人出ることは大きな意味があることだと思っています」

──中川選手とともに研鑽している現在の男子SDSは、どのようなスタイルのチームなのでしょうか?

「僕らはチームのスタイルを『Bee Rugby(ビー・ラグビー)』と呼んでいます。蜂のような動きをして勝とう、という意味合いです。僕らは体も小さいですし特別足の速い選手が揃っているわけでもないのですが、蜂のように動き回り、ボールも人も動いてしつこく粘り強くアタックし、ディフェンスもし続ける。それが僕たちの勝つ術だと思っています。泥臭いスタイルかもしれませんが勤勉さこそが僕たちの強みであり、そこで勝ち切りたいと思っています」

──メダルが目標ということですが、その色についてはいかがでしょうか?

「やはり目標は金メダルです。リオ五輪の4位という結果はあらゆるカテゴリーの日本代表史上最高の結果なのですが、五輪においてはメダルを獲った選手とメダルに届かなかった選手ではどうしても注目度に大きな差が出てしまいます。昨年のラグビーワールドカップで日本代表がベスト8に入ったことは快挙ですが、僕らセブンズ代表がベスト8やべスト4に入っても日本を盛り上げることはできないですし成果として薄いので、どの色であってもメダルだけは絶対に獲り切ろう、という話をチームの中でしています」

──現在は東京五輪にフォーカスされていますが、それ以降の松井選手のビジョンをお聞かせください。

「当面は東京五輪に向けて活動していきますが、15人制でプロラグビー選手になりましたので、2021年の東京五輪終了後は、期間は短いですが2023年のラグビーワールドカップフランス大会への出場を目指します。15人制日本代表にも一度入っていますし、このまま『元日本代表』では終わりたくないと思っていますので、再び代表に返り咲き、ワールドカップでベスト4やそれ以上の目標を掲げるチームで戦えるような選手になりたい、というのが僕の今のビジョンです」


東京五輪への思いを人一倍強く持ち、熱く語った松井千士。リオ五輪のピッチに立てなかった無念は、東京五輪のセブンズの会場となる東京スタジアムのピッチを駆け、メダルを獲ることでしか完全に晴らすことはできないだろう。

相手ディフェンスを鮮やかに切り裂く松井のランニングコースの先には、悲願の表彰台が待っている。そして松井は東京五輪で足を止めることなく、2023年に向けても走り続けていくこととなる。セブンズはもちろん、15人制での活躍にもぜひ期待したい。

(インタビュー&構成:齋藤 龍太郎)

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