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スタッフインタビュー

2020年7月28日 | 沢木敬介監督就任インタビュー

■ チームをしっかり愛さなければいけない

沢木敬介監督

これまでトップリーグ連覇という偉業を成し遂げたチーム、コーチはごく少数に限られるが、その実績を有する稀有な指導者がキヤノンイーグルスの新指揮官に就任した。

沢木敬介新監督。プレイヤーとして日本代表7キャップ(出場試合数)、指導者としてサントリー(アシスタントコーチ、ヘッドコーチ、監督)、U20日本代表(ヘッドコーチ)、日本代表(コーチングコーディネーター)、サンウルブズ(コーチングコーディネーター)と、様々なカテゴリーで結果を残してきた日本のトップコーチのひとりである。

国内のみならず国際カテゴリーでも経験豊富な知将は、イーグルスにどのような変革をもたらそうとしているのか。そして、今の選手たちに何を求めているのか。7月上旬のチーム始動早々から日々腕を振るう沢木新監督に話をうかがった。
(取材日:2020年7月13日)


■キヤノンの企業理念は「共生」。イーグルスもそうあるべき

沢木敬介監督

──監督就任が決まった際の率直な心境をお願いします。

「永友洋司GMから熱心に誘っていただきました。ポテンシャルのあるチームだと思っていましたし、チームとしてどのように変われるかという点でも非常に楽しみでしたね」

──7月3日のキックオフミーティングで最初に選手に伝えたことをお教えください。

「どういうチームになりたいか、という話をしました。自分たちのなりたい姿、目指すべき姿を提示して、『エキサイティング&クオリティラグビー』というチームビジョンを設けました。選手にアンケートを取ったのですが、それによると自分たちのチームの形やアイデンティティなどをあまり追求してこなかったように感じたので、まずは自分たちのチームをしっかり愛さなければいけないということ、また、この組織に属しているみんながチームに愛情を持たないといけない、お互いをしっかりと愛さないといけない、という話もしました」

──まずはビジョンを明確にした、ということですね。

「もともとビジネス書を読んできた中で、御手洗冨士夫会長の著書も読ませていただいていました。マネジメントをする上で大変勉強させていただきましたし、キヤノンという企業そのものについてもいろいろと調べさせていただきました。たとえば、キヤノンの企業理念は『共生』ですが、イーグルスもそうあるべきだと考えています」

──「すべての人類が末永く共に生き、共に働き、幸せに暮らしていける社会」。それがキヤノンの企業理念である『共生』の意味するところですが、イーグルスはどのように『共生』していくべきだと考えているのでしょうか?

「キヤノンには世界トップのカメラがあります。写真というものはどういう環境や感情になった時に撮りたいかと考えると、第一に出てくるのは思い出、あるいはきれいなものだと思うんです。イーグルスもしっかり記憶に残る、見ている人にとってエキサイティングな試合、ビューティフルと思わせる瞬間を残したい。キヤノンのカメラもいい思い出を残すためにクオリティへの極めて強いこだわりを持って開発されています。僕らもしっかりとクオリティにこだわるチームを目指していこう、という話を選手たちにもしました」

──「共生」はチームを強化する面以外にもいい効果をもたらすとお考えでしょうか?

「『共生』にはいろいろな意味があると解釈していて、たとえば得たものを分け合うことも『共生』だと思います。最後にしっかり勝って、チームの人間や応援してくださるみなさんがハッピーになり、喜びを分かち合うこともひとつの成果だと考えています。そのためにもイーグルスは『共生』を体現する存在にならなければいけません」

──新型コロナウイルスの影響でまだ練習メニューが限られている中、現時点で注力していること、選手に植え付けようとしていることをお教えください。

「しっかり自分たちで学ぶ、ということです。まずはそこを変えていかないといけません。与えられたノルマだけをクリアしていく、という組織は絶対に成長しません。何のためにそれをやっているか、ということも自分たちが考えないと意味がないと思います。加えて、強豪チームを倒すためにはフィジカルの強化は絶対に必要なので、今はそのフィジカルの部分、そしてナレッジ(知識・意識)、あとはインディビデュアル(個)のスキルに重点を置いています」

■自分たちがチームを作っていくと選手に思わせるのが僕の役目

沢木敬介監督

──旧知の佐々木隆道FWコーチ、またアリスター・ロジャースDFコーチも新たに就任しました。

「隆道については、今後のコーチングキャリアを考えた時に彼がどこでラグビーを学ぶのがベストなのか考えてきたのですが、彼は『一緒にやりたい』と言ってくれました。学ぶ意識が非常に高く、いいコーチになる素質を持っています。コーチ1年目なのでたくさんチャレンジして、もがきながら成長できればいいと僕は考えています。ロジャースコーチは長年携わってきたニュージーランドならではのディフェンスに関する考え方をいろいろと持っていると思うので、アイデアを持ってきてもらいイーグルスに合ったやり方を見つけていく必要があります。また、僕は選手だけでなく彼らコーチたちの能力も最大限引き出さなければなりません。そのためにしっかりコミュニケーションを取りながらお互い信頼関係を築けるようにやっていきたいと思っています」

──また、新キャプテンにSO田村優選手、新バイスキャプテンにHO庭井祐輔選手を指名しました。それぞれ指名の理由をお願いします。

「優については、キャプテンという環境に身を置けば選手としても人としてもさらに成長できると考えました。そのうえ、キャプテンというポジションをプレッシャーに感じないタイプです。僕は日本代表から長い付き合いがありますので彼のまじめなところも知っていますし、照れ屋でそういうところを見せたくない面も知っています。しっかりしていてまじめな庭井とはいいコンビになるでしょう。庭井についてはもちろんFWのキーマンですし、パフォーマンスでも引っ張れる存在です。もう一花咲かせないといけない選手でもありますので期待しています」

──イーグルスに対してはもともとどのようなイメージをお持ちでしたか?

「いい時はすごくいい反面、悪い時は悪いラグビーをするというイメージを持っていました。ポテンシャルのあるいい選手もいますが、チームとしてあまり一貫性がないというのが正直な印象です。だからこそ自分たちのやり方で強みをしっかりと作っていかないといけません。何に対してもそういうこだわりを持って取り組んでいきたいと考えています」

──そのような取り組みの中で、特に伸ばさなければならない点はどのあたりでしょうか。

「データを見ると後半20分以降に失点し、そのままやられていることが多いのですが、これは明らかにフィットネスが足りないことを示しています。フィットネスが向上しないとスキルも向上してこないので、まずはフィジカルのスタンダードを上げて、さらに自分たちのスタイルをしっかり作っていかないといけないと考えています」

──昨季はラグビーワールドカップ後ということもあり、SH田中史朗選手、SO田村優選手の日本代表ハーフ団の注目度が高いシーズンでした。今後のキーマンをお願いします。

「スタートラインは全員一緒です。パフォーマンスのいい選手がレギュラーとして出るべきだと思いますし、全員がセレクションに入れるのがベストです。つまり、チャンスは全員にあります。もちろん、今名前の挙がった彼らにも意地やプライドがあるでしょう。彼らにはプレーで引っ張るようなパフォーマンスをしてもらいたいと期待しています」

──そういった経験豊富な選手がチームを牽引し、向上させることにも期待されているということですね。

「はい。ラグビーをやるのは選手ですし、選手同士がしっかりとコミュニケーションを取りながら『自分たちがチームを作っていく』と思わせるのが僕の役目だと考えています」

──チームカルチャーの形成についても、沢木監督をはじめとするコーチ陣のみならず選手の役割であるということでしょうか?

「もちろんそうです。今までのイーグルスの歴史の中で築いたもの、そしてそれを自分たちのよりいいカルチャーとして成長させていかないといけません。ただし、そういうものはしっかり結果を出して出来上がっていくものだと思っています」

──指導開始後、すでに感じ始めている変化や手応えはありますでしょうか?

「去年と比較して話をすることは僕にはできないのですが、たとえばターゲットに対して各自一人一人がしっかりと準備して臨む、ということを今後も当たり前のスタンダードにしたいですし、成長するために考えて努力していく選手になってもらいたいです。僕らもそういう選手をしっかりとサポートしていきたいと考えています」

──「チームに愛情を持たないといけない」ことを強調されていましたが、今季も含め近年移籍してきた選手が多いことについては特に懸念材料にはならないでしょうか?

「まったくならないと思います。このチームに対してコミットできる選手たちだと思っていますし、イーグルスに魅力を感じていればチームへの忠誠心も芽生えてくるはずです」

──様々なチームカルチャーを経験してきた選手たちを束ねるにあたっては、やはりこれまでの日本代表やサンウルブズなどでの指導経験が大いに役立つとお考えでしょうか?

「そうですね。人それぞれに合ったコミュニケーションを取る必要がありますし、やる気を引き出していくことも求められますので、今までいろいろなチームでコーチングしてきた経験が間違いなく活きてくると思います。イーグルスには僕がU19やU20の日本代表を指導していた際に代表合宿に招集した選手も何人かいますので、彼らは当時のような厳しいトレーニングを懐かしく感じているかもしれません(笑)」

■インターナショナルレベルで戦える日本人選手を

沢木敬介監督

──昨年のラグビーワールドカップを経て、世界における日本の位置付けが変わってきたように感じます。外国人コーチや海外の名選手も増えてきましたが、日本ラグビーにどのような変化を感じていますか?

「どのチームも外国人コーチを招集していますが、僕の頭の中には『外国人コーチだから優秀だ』という感覚はありません。もちろん優秀なコーチもいますが、外国人であろうが日本人であろうが関係ないというのが私見です。選手についてもビッグネームの外国人選手が来日しています。もちろんそれも大事なことですが、やはり今後の日本ラグビーにとっては、日本人の若い選手たちが成長できる環境を整えることが何より大事だと考えています」

──今季加入したルーキーをはじめ、生え抜きの若手選手たちの成長に特に期待しているということですね。

「当然そうですね。外国人選手を獲得する理由は日本人選手でカバーしきれない力を持っているからなのですが、日本人選手を同じぐらいのレベルまで引き上げることができたらそちらを起用すればいいわけです。もちろん日本人と外国人を変に線引きしているつもりはないのですが、僕はやはりインターナショナルレベルで戦える日本人選手を生み出していくことが大事だと思います」

──最後に、グローバルな視点からローカルのレベルに話を移すと、地域とラグビーの関係性、地元ファンとのつながりについてはどのように考えていますでしょうか?

「たとえばアメリカには、スタジアムを建設したらその周りに街のコミュニティを造る、というぐらいの発想があります。ラグビーもプロ化が叫ばれている中、地域との密着は欠かせないものです。そういう意味でももちろん地元の方々にも愛されるチームにならないといけないと思いますし、熱狂的なファンを獲得していかなければなりません。地域密着の観点においてはそれが一番大事なポイントだと考えています」


選手、コーチ、スタッフがこぞってチームを愛すること。そして、地元をはじめ数多くのファンに愛されるチームになること。

沢木新監督が推進しようとしている改革、そのキーワードは「愛」と言い切ることができるだろう。イーグルスがトップリーグの激戦を征し続け、悲願の優勝に手をかけようとする時、イーグルスは誰からも愛されるチームになっているはずだ。

近い将来その日が訪れることを目指して、新生イーグルスは沢木新監督を筆頭に選手、コーチ、スタッフ全員が日々汗を流している。

(インタビュー&構成:齋藤龍太郎)

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