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スタッフインタビュー

2021年2月12日 | 沢木敬介監督 トップリーグ2021開幕前インタビュー

「『変わりたい』という思いが一人一人から伝わってくる」

「ジャパンラグビートップリーグ」としてはラストイヤーとなる2021シーズンの開幕が迫るなか、キヤノンイーグルスはプレシーズンマッチで強豪サントリーサンゴリアスに43-35で競り勝つなど、始動からわずか半年で大きな進化を遂げている。

チームに変革をもたらしたのは、7月から新体制をスタートさせた沢木敬介新監督だ。強化にあたっては選手たちの成長が当然ながら不可欠だが、沢木監督は「そのためには選手たちの意識を変える必要がある」と就任当初から明言し、即実行に移してきた。

新指揮官はいかにして選手たちにアプローチし、選手たちは実際どのように変わっていったのか。また、チームとしてどのような面が大きく変わり、勝てる集団への変貌を遂げようとしているのか。新生イーグルスの今について沢木監督に聞いた。
(取材日:2020年12月3日)


■選手の間で『お互いによくなりたい』という思いが広がっていった

── 7月の始動から約半年、チームとしてどのような点が変化したと感じていますか?

「まだまだ改善しなければならないことはありますが、『変わりたい』という思いが一人一人から伝わってくるようになりました」

── 具体的にどのあたりに大きな変化が見られるでしょうか?

「最初の時期はサインプレーを前もってしっかり覚えてこない、あるいは前回の練習で使ったプレーをしっかり身に付けていない、といった選手が見受けられました。ミーティングに手ぶらで来る選手も何人かいたのですが、今はそういう面が変わってきたと思います。

ノートにメモしなければミーティングの内容を覚えきることはできない。そんなことは言われなくてもわかりますよね。当初はそういうレベルだったわけです。ただ、もちろん元からそのあたりをしっかりやっている選手もいましたので、そこを起点に選手の間で『お互いによくなりたい』という思いが広がっていったのではないかと思います」

── チーム始動直後の7月のインタビューで、監督は「このチームをしっかり愛さなければならない」と話していました。その点はいかがでしょうか?

「当時と比べると大きく変わっています。選手の取り組む姿勢はもちろんですが、大分での合宿や練習試合を行う過程で、例えばゲームに出られないメンバーの表情や、トライを獲った後のチームの喜びようを見ていると、いい方向に進んでいるという感触はあります」

── インタビュー前に練習を少し見させていただきましたが、想定していたプレーがうまくいくと選手たちは笑顔になり、全体の雰囲気も明るくなっていたように感じました。

「チームへの愛を心から持っていなければ『うれしい』という感情は湧いてきません。トライを獲った時に選手たちが集まる様子、より具体的に言えばFWがモールでトライを獲った後にBKまで全員集まるといった行動は、まさにそういう思いが芽生えていることの証しです。試合が終わった後は、ノンメンバーが出場していた選手たちを笑顔で迎え入れていました。これもチームへの愛がないとできないことですよね。少しずつ成果が出ていると思います」

■強豪チームとの接戦ではメンタル面の強さがもっと必要

── チームの一体感の高まりは、先ほどお話に出ました11月の大分合宿による効果も大きかったのでしょうか?

「そうですね。大分のキャンプはチームビルディングに一番重きを置いていました。1週間一緒に生活することで、トレーニングする回数が増えるだけでなく全員が共に過ごす時間が長くなり、選手同士はもちろん、選手とコーチの間でコミュニケーションを取る機会が格段に増えました。また、イーグルスには南アフリカ代表や日本代表もいますので、特に若い選手にとっては彼らからたくさんのことを学ぶことができた、いい機会になったはずです」

── 一方で、「まだまだ改善しなければならないことがある」というお話も出ましたが、具体的にはどのあたりでしょうか?

「7月から"耐える力"をつけるトレーニングをしてきました。もちろん少しずつ成果が出てきていますが、それでも引き続き改善は必要ですし、特にメンタル面を正しく整えて保つ力がまだまだ弱いと感じます。仮にトップ4の強豪チームと接戦という状況になった場合、いい結果を出すためにはメンタル面の強さがもっともっと必要です」

── そのあたりも含め、11月28日(土)に43-35で快勝したサントリーサンゴリアスとのプレシーズンマッチをどのように評価されていますか?

「もちろんサントリーに勝ったのはチームとしてうれしいことです。『歴史を新たに作っていくんだ』と選手たち自身が思うきっかけになればいいと思います。練習の成果もある程度出ていましたし、選手にとっても『取り組んできたことが正しく、結果につながっている』という自信になったのではないでしょうか。その一方で、改善しなければならないポイントも数多く見つかりましたので、今後もむしろ貪欲に取り組んでいけると思っています」

── 一方で、10月17日(土)のクボタスピアーズとのプレシーズンマッチは19-43で敗れました。当時と比較してどのあたりが改善されたと考えていますか?

「昨季までとは全く異なるラグビーをしているのですが、新しいことを始めようとすると、試合中にタフな状況になった時にどうしても以前のラグビーに戻ってしまうことがあります。クボタ戦はそういう状況になるのでは、とある程度予想していました。

今やろうとしているラグビーは、クボタ戦の頃のスキルレベルでは遂行できません。高度なスキルが間違いなく必要になります。そういう意味でもあのクボタ戦を経験したことによって、やろうとしているラグビーに対して自分たちのレベルはまだまだだ、ということを受け入れることができました。いいきっかけになったと思います」

■選手たち自身がマインドを変えることが何よりも大事

── 監督が新キャプテンに指名した田村優選手の働きについてはいかがでしょうか?

「優をキャプテンにすることで『チームとして変わるんだ』というメッセージにする、という意図がありました。普段はあまり褒めないようにしているのですが(笑)、優はキャプテンとしていい働きをしています。サントリーに勝った後も非常にいいことを言っていました。いちプレイヤーとしての状態も非常によく、持ち味を出していると思います」

── このインタビュー前の練習では、田村選手は指導を受ける一方で、周りにアドバイスする側に回っている場面もありました。

「周りに強く言えるタイプの選手です。僕も現役時代はそういうプレイヤーで、いいプレーができていない選手にははっきり言うタイプでした。優も強いメッセージを発することができますし、その代わり自分のパフォーマンスには責任を持っています。

また、優は『チームとして変わろう』と本気で思っていますし、チーム全体としても『変わらなければ』という姿勢になっています。まず選手がそう思わないことにはチームは変わることができません。あくまでラグビーをやるのは選手であり、僕がイーグルスを指揮するからチームが変わる、ということでは決してありません。選手たち自身がマインドを変えることが何よりも大事です」

── 庭井祐輔選手のバイスキャプテンとしての貢献についてもお願いします。

「庭井もがんばっていますし、優とのバランスはいいと思います。ただ、庭井にも直接言っているのですが、試合ではFWがもっと闘争心をむき出しにしないといけません。イーグルスのFWはいい人間が多く、はっきり言えば『いい子ちゃん』なんです。でもそれでは勝てません。FWリーダーでもある庭井は、FW全体をそういった方向へ導けるようまとめようとしています」

── 若い世代の選手たちの成長度はいかがでしょうか?  

「若手にはもっと伸びてもらわなければなりません。今の先発メンバーの15人とそれ以外の選手とでは、現時点でかなりの実力差があります。練習試合を重ねていき、またシーズンに入る中で、先発15人以外のメンバーのことを『RISERS(ライザーズ)』と呼ぼうと考えています。スターティングメンバーへと昇っていくという意味もありますし、チーム全体のレベルを引き上げるという意味も込めています。彼らにはそういう存在になってもらう必要があります」

── 開幕まであとわずかですが、それまでの間をどのような期間ととらえていますか?

「まずは開幕まで強化をしっかり進めながらチームの可能性を広げていこうと考えていますが、開幕にピークを持っていくという考えは全くありません。もちろん『ピークはここ』という考えは頭の中にありますが、イーグルスはまだそういうことを言う立場にはありません。あくまでチャレンジャーですからね。

シーズンは長いので、試合をやっていくことで選手たちは様々な経験を積むことができます。ただ、パフォーマンスの向上が見られない選手に何度もチャンスを与えて辛抱強く起用する、という手法を取る気はそれほどありません。与えたチャンスをしっかり自分のものにできる選手たちでないとチームは勝てませんので。それが僕のやり方です」


指揮官がチームを変えるのではなく、あくまで選手たちが意識を変えることでチームとしても変わり、強くなっていく。それが沢木監督の考えているイーグルスのあるべき姿であり、田村優キャプテンがその旗振り役を務める形でチームも個もいい方向に変化している。まさに視界良好といったところだろう。

しかし、沢木監督は今回のインタビューで課題が山積していることをたびたび強調しており、満足している様子は一切なかった。そして、志を共にする選手たちとしてもそれは同じだろう。

2月21日から始まる新たな開幕戦から一戦一戦重ねていくことで、イーグルスはさらなる成長を遂げていくことになるはずだ。シーズンが深まるにつれて見えてくる伸びしろに注目しつつ、ぜひ新生イーグルスのラグビーを楽しんでいただきたい。

(インタビュー&構成:齋藤 龍太郎)

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