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2020.12.22
INTERVIEW

バイスキャプテン・HO 庭井祐輔選手 インタビュー

「チームのためにプレーしたい。このチームで勝ちたい」

その存在は、常にキヤノンイーグルスの中心にある。

国内屈指のHOである庭井祐輔は、これまでにも度々キャプテンを務めるなどイーグルスの扇の要の役割を果たしてきたが、今季は新たにバイスキャプテンの重責を担うこととなった。7月の始動以来、新キャプテンのSO田村優とともにチームを牽引し続けており、ハードな練習を重ねながら間もなく新年1月開幕の公式戦を迎えることとなる。

コーチ陣を大きく刷新し新たな一歩を踏み出したイーグルスにおいて、今季の庭井が果たすべき役割とは何なのか。大分での合宿やプレシーズンマッチで得た収穫とは果たしてどのようなものなのだろうか。庭井自身の個人的なターゲットも含め、今季にかける思いを聞いた。
(取材日:2020年12月3日)


■やることが一貫し、とことんこだわった練習ができている

──トップリーグ開幕が迫る中、ご自身のコンディション、モチベーションはいかがでしょうか?

「11月28日のプレシーズンマッチでサントリーさんに勝つことができ、チームの状態としては悪くないと思っています。個人的にも体がよく動いていると感じています」

──サントリー戦43-35での勝利についてはどのように捉えていますか?

「チームとしてはっきりとした目標を掲げてはいないのですが、トップ4に入るためには間違いなくこれまでのトップ4のチームに勝たないといけません。そういう意識は全員にあり、このサントリーさんとの試合はひとつのターゲットにしていました」

──モールでのトライが印象的でした。意図した通りでしたか?

「今年は7月にチームが始動して以来モールはかなり力を入れて練習し、僕たち自身も強いこだわりを持って取り組んできました。これまでの試合では確信を持てるほどではなかったのですが、今回のサントリー戦でチームの得点源になったことで、全員自信を持てたと思います」

──最初ははっきりとした成果が表れなかったということでしょうか?

「やろうとしていることはずっと変わらなかったのですが、僕たちとしても結果が欲しいところでした。試合に勝って、しかもモールでしっかりトライを獲れたことは自信になりました。こうして結果が出ることがさらなる自信やモチベーションにつながります」

──今季は昨季までと比べてチームにどのような変化が起きているのでしょうか?

「まず、やることが一貫しています。コーチ陣もそういう指導をしていますし、僕たちもとことんこだわって練習できています。こだわりを持って取り組まないといけないというメッセージをコーチ陣から受け取り、それを選手たちがしっかり消化し遂行できていることは大きいと思います」

──練習時のプレッシャーが試合並に強く激しいと伺っています。

「なるべくゲームに近い、むしろゲームよりも強いプレッシャーがかかった状況で練習しています。ミスに対してもすごく厳しくなりましたので、メンタル面のプレッシャーもかなりかかっています。だからこそ練習をもっとやろうと考えるようになりましたし、それがいいサイクルにつながっていると実感しています」

■自分たちのプレーをするための努力=「エフォート」が試される

──そのような環境を作っている沢木敬介新監督の指導についてはどのように感じていますか?

「一番感じるのは、細部までよく見ているということです。先ほどのプレッシャーの話とも関連するのですが、細かいミスなど小さなことを絶対に見逃しません。自分たちのプレーをするための努力のことをチーム内で『エフォート』と呼んでいるのですが、そういった努力や姿勢を監督はよく見ていると思います。

また、練習中に何かあればその場で、つまりグラウンド上ですぐに的確な指摘をしてくれるところもすごいと思います。練習した後に映像を見返して『ここがダメだ』と注意されるよりもその場で指摘された方が『あ、ここがよくないのか』というイメージも沸きやすいですし、何よりもはっきり言ってくださるので非常にわかりやすいです。個人的にはとてもやりやすいと感じています」

──その場で指摘されるのと後で言われるのとではやはり違うものですか?

「やっていること自体は一緒なのですが、その場で言ってもらえた方がすぐに修正することができますし、絶対に効果的だと思います」

──同じく新任の佐々木隆道FWコーチの指導はいかがでしょうか?

「隆道さんは長くサントリーでプレーし、日野レッドドルフィンズでキャリアを終えました。強いチームとなかなか勝てないチームを経験し、双方の違いをわかっている方です。経験に基づいて僕たちにそれを伝えてくれます。『強いチームなら、こういう場面では絶対こうしている。強くないチームはこうしがちだ』と具体的に言ってくれますので、僕たちも『強いチームがやっていることをやろう』と思うようになります。それが隆道さんのコーチとしての特色だと思います。

また、隆道さんは誰よりも熱い人で、僕たちにも実に熱く指導してくれます。もちろん厳しいことも言いますが、こちらから『もっとこの練習をしたい』と提案すると受け入れてくれて、その練習が終わるまで必ず付き合ってくれます。プレシーズンマッチでは、モールでトライを獲った時に隆道さんが一番喜んでいました。そういう姿を見ているので、僕たちもその熱いコーチングに報いたいという思いを強く持っています」

──佐々木コーチは今季始動時に、選手たちに対して極めてレベルの高い要求をしていくと宣言していました。

「実際、高いレベルを求められていると感じます。最初は選手たちの間でその高さに戸惑いがあったのですが、徐々に慣れてきて今ではそれがスタンダードになっています。確実にいい影響を与えていただいています」

──11月の大分合宿でもこだわりの指導、こだわりの練習が続いていたと思います。この合宿でチームとして変わったところ、成長したところはどのあたりでしょうか?

「いろいろあるのですが、合宿に臨む前に『コミュニケーションをしっかりとろう』というテーマを設けました。イーグルスとしての合宿はかなり久しぶりで、寝食を共にすることは最近ありませんでした。せっかく一日中みんなと一緒に過ごすので、この機会に『コミュニケーション』をテーマに掲げたわけです。もちろん練習の方でもいい成果が出ていたこともあり、目に見えない部分も含めてこの合宿でチームがひとつにまとまってきたと感じました。非常に有意義な時間を過ごすことができました」

■やろうとしていることをしっかりやり、やり切ったと言える試合に

──今季のセットピースの精度についてはHOとして、またFWのまとめ役としてどう感じていますか?

「モールについては、先ほども言ったように自信を持てています。スクラムに関しては最近さらに本格的に取り組むようになり、昨季と比べてまとまりが出てきてよくなっているのですが、もうひとつレベルを上げないといけません。ラインアウトについてもモールと同様に厳しく取り組んでおり、常に高いクオリティを求めています。その成果は確実に出ていると思います」

──ラインアウトモールが強みになれば、敵陣深い位置でのラインアウトからのトライチャンスが自ずと増えてきます。

「はい。それを武器にしていこうと決めてプレシーズンマッチに臨みましたので、全員がラインアウトモールを意識しています」

──バイスキャプテンとして求められている役割をお教えください。

「SO田村優さんがキャプテンになり、2人で話すことが多くなりました。優さんがアイデアを出し、どちらかというと僕はそれを実行に移すという分担ができつつあります。また、FWは自分が、BKは優さんがまとめる役になっており、チーム全体を見るのは優さんですが、僕もそれをサポートしています。また、今季は6人からなるリーダーグループを設けました。優さんと僕に加えてFL/NO.8占部航典、FL/NO.8エドワード・カーク、SH天野寿紀、CTBジェシー・クリエル。この6人で常にコミュニケーションを図っています」

──選手間のコミュニケーションとはまた別に、コーチ陣とのコミュニケーションについてはいかがでしょうか?

「もちろんしっかりコミュニケーションをとっています。ミーティング並にかっちり話をするわけではないですが、何かあればコーチ陣の部屋でじっくり話しますし、コーチたちも何かある毎に僕たちに話をしに来てくれます。その点も昨季から大きく変わったところですね」

──チームとしての目標は外向けには明示されていませんが、もし言えることがあればお願いします。

「自分たちのやろうとしていることをしっかりやり、やり切ったと言える試合にしよう、といったことを今は重視しています」

──昨季の開幕戦、神戸製鋼戦は庭井選手の地元である神戸の神戸総合運動公園ユニバー記念競技場で開催されました。残念ながら16-50で負けてしまい試合後は悔しそうにされていましたが、神戸製鋼とは今季も2021年2月28日(日)に同じ会場で対戦します。

「やはり勝ちたいです。地元ですし、前回は出身のラグビースクール(西神戸ラグビースクール)の子どもたちがたくさん見に来てくれていたので、勝っている姿を見せてあげたいと思っています」

──チームとしていい結果を残すこととは別に、庭井選手個人が今季目指しているターゲットがありましたらお願いします。

「とにかく、まずはチームとして結果を出したいです。そのためには、バイスキャプテンとしての役割をしっかり果たさないといけないと思っています。一選手としてはもう一回日本代表でプレーしたいという気持ちがありますので、全ての面で自分をしっかり見直して、ワンランク、ツーランク、あるいはもっと自分を向上させていきたいと思っています」

──昨季まではチームの不振やご自身のケガなどの影響で、思うようにいかなかった時期もあったかと思います。今季にかける思いはとりわけ強いのではないでしょうか。

「そうですね。これまで以上にチームにまとまりを感じていますし、チームのためにプレーしたいという気持ちが日に日に強まっています。このチームで勝ちたい、という強い意志を持っています。個人的にはケガなどでなかなかうまくいかず悩んだ時期があったのですが、今季はそういう経験すらも逆に糧にしてシーズンを通してがんばりたいと思っています」


日本代表への返り咲きという個人的なターゲットを告白しつつも、まずは大前提としてトップリーグで「このチームで勝ちたい」と明言し、イーグルスとして結果を出すことにフォーカスしているHO庭井祐輔。

常日頃からキャプテンを支えつつ、FWをまとめるという重責も担うバイスキャプテンが今季目指しているのは、さる11月のサントリーとのプレシーズンマッチのように結果を残し、勝利の喜びを1試合でも多くチーム内で分かち合うことだ。

成果が出れば自信につながり、その自信がまた次の勝利へとつながっていく。そんな理想的な循環をつかむために、庭井はこれからも日々研鑽しチームを鼓舞し続ける。

(インタビュー&構成:齋藤 龍太郎)

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