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2025.12.19
INTERVIEW

LO/FL/NO.8 ランダル・ベイカー選手 インタビュー

「憧れの選手との対戦は言葉では説明できない」

弱冠20歳。見るからに若く、恵まれた体格と未来を見据える目が印象的な青年が、横浜キヤノンイーグルスでの1年目を迎えた。LO/FL/NO.8ランダル・ベイカー。来日したばかりの若きFWは、U20ニュージーランド代表で活躍したばかりの有望株だ。

キャリアを長く続け、その実績を持って日本に来る選手は多いが、20歳前後の選手が日本に挑戦するケースは少ない。彼はどのような動機や信念を持ってイーグルス入りを決断したのだろうか。

11月27日、練習後のサポーターとの交流を終えた彼にインタビューした。


■U20ニュージーランド代表で役割や責任が急速に上がっていった

── 20歳を迎えて間もないベイカー選手ですが、こうしたインタビューは初めてではないでしょうか?

「初めてです。僕の周りではインタビューされていた選手もいましたが、僕自身はこれが初めてのインタビューとなります」

── 若くして日本にチャレンジしようと考えたのはなぜでしょうか?

「こうしてフルタイムでラグビーできることは確実に自分の成長につながると考えて決断しました」

── 最初にイーグルスから話があったとき、どう思いましたか?

「すごく大きな決断で迷ってはいたのですが、イーグルスのコーチや選手のクオリティが高いと聞いていましたので、本当にうれしかったです」

── 日本のリーグワンについてはどんなイメージを持っていましたか?

「トップ選手がたくさんいるリーグという印象です。そしてスピードがあり、勢いに乗るラグビーをするイメージを持っています。ニュージーランドでもよく知られているリーグで、自分が憧れている選手もいますので、そういう選手とプレーできる可能性があるのがすごく楽しみです」

── 憧れている選手というのはどなたですか?

「東京サントリーサンゴリアスのサム・ケイン選手(元ニュージーランド代表キャプテン)です。この間はご飯を食べに行って、そこでケイン選手に会うことができました。どのチームにもそういう世界的な選手がいるので、すごく楽しみです」

── 子どものころ、オークランドでラグビーを始めたそうですね。

「はい。ニュージーランドはどこもラグビーが盛んで、生まれたときからラグビーは身近な存在でした。10歳のころ大親友に誘われて、クラブでラグビーを始めました。高校ではLOやNO.8をやっていました」

── 現在も登録上はLO/FL/NO.8ですが、ベストポジションはどこでしょうか?

「インターナショナルレベルではLOとしては小さいので、僕自身は他のポジションの方がベストだと思っています。ただ、リーグワンではLOとして出場できるだろうと考えています」

── これまでのチーム遍歴を教えてください。

「もともとブルーズのU20チームでプレーしていました。そして今年、オークランドで初キャップをとりました。ブルーズはU20でもレベルが高く、特に最近は速くて、大きくて、スキルのある選手が多くなっています。すごく強いチームで、U20のオールブラックスになるための段階を踏んでいきたい選手ばかり揃っていました」

── その後、ベイカー選手がU20のミュージーランド代表に選ばれたときはどんな心境でしたか?

「初めての黒いジャージーだったので、とても光栄でしたね。家族も喜んでいました。今年のワールドラグビーU20チャンピオンシップに出場し、結果は準優勝でしたが、クラブラグビーからU20代表までレベルが上がっていくなかで、役割や責任が急速に上がっていくことを実感しました」

■トレーニングはニュージーランドと違いを感じないどころかより速い印象

── そんな貴重な国際経験を積んでイーグルスに加わったベイカー選手から見て、イーグルスの練習のクオリティはどう感じていますか?

「トレーニングは(ニュージーランドと)まったく違いを感じないどころか、より速い印象です。先週末の試合(11月22日の練習試合、リコーブラックラムズ東京戦)を見てもアタックのスキルセットやスピードで優れている選手が多いと感じました」

── イーグルスにも有名なインターナショナルプレーヤーがいますが、彼らから感じていることがあれば聞かせてください。

「みんなから支えてもらっています。彼らの経験から学ぶことが多いので、僕もこれからのキャリアで新しい選手が入ってきたら同じようにしたいと思うようになりました」

── 例えば、同じLOのディノ・ラム選手から学んでいるのはどのようなところでしょうか?

「やはりラインアウトの部分ですね。ラインアウトのコールなども、コーチとディノさんのような選手が手伝ってくれています。僕自身としては(ラインアウトだけでなく)アタックのゲームプラン、ディフェンスのプランもしっかり学びながら、スキルセットを伸ばすところにもフォーカスしています」

── レオン・マクドナルド ヘッドコーチと接するのは初めてだと思いますが、デーブ・ディロン アシスタントコーチとはU20で一緒だったと聞きました。再会したときはハグして喜んだそうですね。

「人としても、もちろんコーチとしても尊敬しています。僕にとってすごく近しい存在です」

── 日本人選手についてもいいプレーヤーがたくさん揃っていますが、どんな印象を持っていますか?

「すごくフィットネスが高く、スピードがある選手も多いですね。一番印象に残っているのはスキルセットの高さで、特にハイボールなど 勢いに乗ったところのプレーが素晴らしいと感じています」

── LOだけを見てもいい選手ばかりですが、ベイカー選手自身はどこが強みで、どんな面を出してレギュラーを勝ち取りたいと考えていますか?

「LOに限らずルースFWでプレーする場合もそうなのですが、ボールキャリーが僕の一番の強みです。できるだけボールをもらってキャリーで相手を圧倒する、というところがストロングポイントです。そして、チームにエナジーをもたらす存在だと考えています」

── マクドナルド ヘッドコーチがやろうとしているアタッキングラグビーにアジャストしていけそうな感触がすでにありそうですね。

「もちろんです」

■ゴールはオールブラックスだがまずは今シーズン自分のすべてを出す

── まだ来日したばかりで、ラグビー以外でも慣れないといけないことがあると思いますが、今は特に大きな問題はないでしょうか?

「日本での生活以前に、初めての一人暮らしを始めたところなので、まずはそれに慣れることですね。ニュージーランドの実家は大家族なのですが、今は家に帰るとすごく静かで一人で考える時間が多く、その点で変化を感じています。少し寂しいと思うときもありますが、同じアパートに住んでいる他の選手たちが様子を見に来たり、遊びに来てくれたりするので、大丈夫です」

── ご家族、ご両親も後押ししてくれていますか?

「はい。すごく応援してくれていますが、やはり両親としては一人暮らし始めた僕を心配してくれています」

── 初めての日本での食生活も心配ですが、いかがですか?

「ちょっと太る心配があるくらい食事には満足していますが、トレーニングがハード過ぎて太ることはなさそうです。先日はみんなと焼肉を食べて、おいしすぎてたくさん食べそうになりました。スマホの動画においしそうなコンビニの食べ物がよく出てくるのですが、ちゃんと制限しています(笑)」

── チームとしては優勝を目指すシーズンが始まろうとしていますが、ベイカー選手自身の今シーズンの目標があればお聞かせください。

「もちろん23人のメンバーに入ることと、あとは自分のスキルセットを成長させることです。そして、ニュージーランドに戻ったら成長を遂げた選手として現地で貢献できるようにしたいと考えています」

── いずれはニュージーランドに戻ってオールブラックスを目指したい、という思いがあるのでしょうか?

「はい。ゴールはオールブラックスですが、まずは今シーズン、とにかく自分のすべてを出すつもりでいます」

── 開幕戦は、2019年にラグビーワールドカップの決勝が行われた日産スタジアムで行われます。

「まだ行ったことも見たこともない場所ですが、大きなスタジアムだと聞いています。そこで出場することができればすごく光栄です」

── いずれはサム・ケイン選手のような憧れのトッププレーヤーと対戦できる可能性があります。

「言葉では説明できないほど、現実とは思えません。僕だけではなく、家族や友達もその瞬間を楽しみにしてくれていると思います」

── スタンドに詰めかけるサポーターとの接点も増えてきました。

「先ほどもTシャツなどにサインをするなど交流し始めたところですが、それ以上に印象的なのはみなさんの温かさです。チームが勝っても負けても応援し続けてくれる素晴らしいサポーターだとチームメイトから聞いています。今、ニュージーランドではスタジアムにお客さんをたくさん入れるのが難しい状況ですが、リーグワンの昨シーズンのハイライトを見たところスタンドにたくさんの観客がいて、すごいなと思いました」

── サポーターのみなさんからはどんな名前で呼ばれたいですか?

「どんな呼び方でもいいのですが、ニュージーランドでは小さいころから『ビッグ・ダル』というニックネームで呼ばれていました。でもみんなが呼びやすい名前であれば、何でも大丈夫です」

── せっかくなので「ビッグ・ダル」の愛称を広めておきます(笑)。


ビッグ・ダル。体も愛称も、そして将来の目標も「ビッグ」だ。大きな夢を抱いて単身、日本へ乗り込んだ若者は、早くも練習試合で活躍し始めている。 LO/FL/NO.8ランダル・ベイカー。いずれはリーグワンを席巻する存在となり、その名が世界に轟くことになる日もそう遠くはないかもしれない。

(取材・文/齋藤龍太郎)

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