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2021.09.19
INTERVIEW

新加入選手インタビュー WTB/FB 竹澤正祥選手

「『ボールを渡せば何とかしてくれる』と思われる選手に」

2022年1月のジャパンラグビー リーグワン(以下「リーグワン」)ディビジョン1開幕に向けて、チーム名も新たに始動した横浜キヤノンイーグルス。7月から個人練習に勤しみ汗を流してきた選手もおり、記念すべき新リーグ1年目に向けて着々と強化が進められている。

トップリーグのラストイヤーとなった昨シーズンは8強入りを果たし、さらにその上を目指すべく生まれ変わろうとしているイーグルスを象徴するのが、今シーズンから加入した新戦力だ。そのうちの一人、日野レッドドルフィンズ(以下「日野」)に所属していたWTB/FB竹澤正祥は、とりわけ高い野心を持ってイーグルスに移籍してきた。

トップリーグ2018-2019シーズンから日野で主に先発左WTBとして活躍し、3シーズンで公式戦9トライを挙げるなど結果を残してきたフィニッシャーは、さらなる高みを目指してこのほどイーグルスの一員となった。

移籍を決意した理由、今後目指す選手像など、年々自信を深めている26歳の新戦力に話を聞いた。
(取材日:2021年9月7日)


■もっと自分を高めていきたい

──日野からの移籍が発表された後、イーグルスではいつから練習していましたか?

「移籍の発表が7月下旬で(7月22日)、7月の終わりごろからグラウンドを使わせてもらっていました」

──日野では結果を残し、順調な選手生活を送っていたように見えましたが、移籍を決断した理由、動機をお聞かせください。

「日本代表を目指すために『プロラグビー選手になりたい』という思いがあったのですが、日野ではそれが叶わなかったことから移籍を決断しました。日野では社員だったのですが、ラグビーに費やせる時間はやはりプロの選手と比べて少なかったのが現実でした。もっと自分を高めていきたいと考え、移籍してプロ選手になることを決断しました」

──移籍先としてイーグルスを選んだ理由をお聞かせください。

「トップリーグ2021シーズンのイーグルスの試合を見ていて、『すごくおもしろいラグビーをするチームだな』という印象を持っていました。外に展開しアグレッシブにアタックするラグビーで、そこに自分が入った時にどう活躍できるか考えていましたし、非常に楽しみでした。また、元チームメイトで現アシスタントコーチの佐々木隆道さんの存在も大きかったです。今はディフェンスコーチとして日々指導していただいています」

──イーグルスにやって来て何か感じたこと、気づいたことがあればお願いします。

「一番強く感じたのは、選手一人一人がひとつのプレーに対してしっかり考えながら取り組んでいることです。その取り組む姿勢も、向上心も、すごく刺激になっています」

──特に影響を受けている選手がいればお願いします。

「どの選手からも刺激を受けているのですが、同じWTBでは松井千士選手のスピードが素晴らしいと感じていますので、プレーを見ながら吸収していきたいです。WTBには若い選手もたくさんいて、全員が向上心を持って取り組んでいます。当然、今後ポジション争いしていくことになると思いますので、負けたくないという思いを持って臨んでいます」

──SO田村優選手と一緒に練習して感じることはありますか?

「優さんは一つ一つのプレーのレベルが高くて、本当に驚きました。純粋に上手いなと思いますし、ポジションはもちろん違いますが学ぶべき点はたくさんあります」

──WTBとして、どのあたりがご自身の武器だと考えていますか?

「コンタクトに自信があります。体は決して大きくないですが、コンタクトはただ体が大きいだけでは強くなりません。まずスピードの面でレベルアップする必要がありますので、その点をずっと追い求めています」

──コンタクトに自信を持ち始めたのはいつ頃からでしょうか?

「まだFLだった高校3年生の頃からですね。明和県央高校(群馬県)に入学した当時は体重が58kgぐらいしかなかったのですが、筋力アップを図った結果、高3の時点では現在とあまり変わらない85kgまで増えました。スピードも上がり、自信がついた時期でもあります」

──全国高校ラグビー大会でもその自慢のコンタクトを披露しました。

「高1、高3時に花園に行きました。ただ高1の時はメンバーに入ってはいたのですが、おたふく風邪を発症して試合前日にメンバーから外れてしまいました。高3でようやく花園のピッチに立って、FLとしてコンタクトやスピードの面で自信を持ってプレーしました」

──WTBに転向したのはいつでしょうか?

「大学2年生の終わり頃です。『ボールをもらったらとにかく前に出ろ』と言われていて、それを遂行していました。当然、FLと比べてスペースが広く、やりやすかったので、ポジションの転向はスムーズにいったと感じています」

──WTBでも左と右がありますが、どちらが得意でしょうか?

「日野ではずっと左WTBでしたが、右もできます。トップリーグ1年目はアウトサイドCTBもやっていました。FBはまだ経験がないので、やはり11番か14番、場合によっては13番といったポジションで力を発揮したいと考えています」

──元FLとして、タックルも見せ場の一つなのではないでしょうか?

「はい、タックルも得意です。高校時代はケガが多かったこともありタックルはそこまで得意ではなかったのですが、大学、社会人とキャリアを重ねるにつれて正しいタックルができるようになり、その過程で得た自信が今につながっています」

──トップリーグの3シーズンでコンタクトやタックルが通用した感覚はありましたか?

「1年目の序盤はまだ不安でした。特に印象に残っているデビュー戦の宗像サニックスブルース戦(2018年8月31日・リーグ戦第1節/レッドカンファレンス)は、会場の雰囲気も含め『これがトップリーグなんだ』と感じましたし、緊張からミスも出ましたが、緊張がほぐれてからはいいパフォーマンスが見せられたと思っています。その後は試合を重ねるにつれて自分の力が通用することが分かってきて、徐々に自信がついていきましたね」

■改善しなければならない課題が明確に

──初めて沢木敬介監督の指導を受けて、どのように感じていますか?

「高いレベルを求められていると感じています。WTBのプレーも細かいところまで見てくれていて、自分の苦手な部分を細かいところまで指摘してくださいます。監督の言葉によって改善しなければならない課題が明確になっているので、自分としても取り組みやすいです」

──課題として挙がったのはどんな点でしょうか?

「スキルの部分ですね。具体的にはパスのキャッチやパススピード、キックなどです。プレー中の周りとのコミュニケーションの取り方も課題です」

──全体練習ではやはりそのあたりを意識しているのでしょうか?

「そうですね。今はまだユニットトレーニングが中心で、全体練習の機会はまだまだ限られていますが、スキル面とコミュニケーション、特に周りとの連係については意識してやっています。チームに加入したばかりですので、まずはチームを理解することから取り組んでいます」

──イーグルスの選手間のコミュニケーションは密に行われていると感じていますか?

「プレー中だけでなく、プレー後に選手一人一人が集まって、先輩後輩関係なく『今のプレーはどうだったのか』といった形でフィードバックしていますので、自分も言いやすいです。むしろそこで率直に発言しないとチームとしてよくならない、そんな雰囲気を感じています」

■目指すはセヴ・リースのような選手像

──目標、あるいは理想とするWTBの選手はいますか?

「地元が群馬県桐生市で、太田市が近かったこともあって、小学生のころから霜村誠一さん(元三洋電機→パナソニック/元日本代表CTB)に憧れていました。今はセヴ・リース選手(現ニュージーランド代表WTB)のプレーをよく見ています。身長、体重は自分と似ていて決して大きい選手ではないのですが、スピードもありビッグプレーを連発するので、彼のプレーには見入ってしまいます。できればセヴ・リース選手のようなWTB像を目指したいですね」

──リーグワンのディビジョン1で戦う上では、やはりトップ4のチームに勝つことが求められます。そのために必要なことは何でしょうか?

「強い相手に対してはチャレンジする気持ちが必要です。絶対にタックルで引かないこと、コンタクトで負けないことでトップ4の選手に対抗できるようチャレンジすることを以前から心掛けていました」

──日野時代にトップ4のチームと対戦した時、どのように感じましたか?

「個人的にはいいパフォーマンスを発揮できていたという感触がありました。メンタル面も含めていい状態で臨めていたと思っています」

──将来的な目標は日本代表ということですが、いつ頃から代表を意識していたのでしょうか?

「1年前ぐらいからです。自分の力がだんだん通用するレベルになってきて、日本代表でも戦える、戦いたいと思い始めたのがその時期でした」

──WTBの仕事は一般的に言えばトライを獲り切ることですが、確実にゲインしてチャンスを広げるつなぎ役タイプのWTBもいます。セヴ・リース選手の話も出ましたが、どんなWTB像を目指していますか?

「もちろんトライを獲ることですが、それ以上にアタックで『竹澤にボールを渡せば何とかしてくれる』とチームのみんなから思われる選手になりたいと思っています。そのためにも周りから信頼されることが必要です。当然、得意としているディフェンスでも貢献したいと考えています」

──イーグルスの一員となって間もないですが、信頼を得られる感触はありますか?

「まだまだこれからです。今後予定されている練習試合ではチームのために体を張ると決めていますので、そこからしっかりと信頼を築いていければと考えています」


日本代表を目指し、リーグワン1年目という節目のシーズンで移籍という大きな決断を下した竹澤正祥。主にWTBとして過去3シーズン活躍し自信を深め、横浜キヤノンイーグルスという新たな環境で日々邁進し、コーチやチームメイトから刺激を受ける日々を送っている。

世界的WTBを理想像として掲げるなど、追い求める目標はかなり高い。しかし「必ずそこに手をかける」という強い決意と自信を感じるインタビューだった。リーグワンの大舞台でライン際を鮮やかに駆け抜ける姿に注目したい。

(インタビュー&写真撮影:齋藤龍太郎)

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