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2022.09.12
INTERVIEW

新キャプテン CTB梶村祐介 インタビュー

新キャプテン CTB梶村祐介 インタビュー

新キャプテン CTB梶村祐介 インタビュー

「チャンスがあればやりたいと考えていた」

出場機会の増加を求め、リーグワン元年にサントリーサンゴリアス(現・東京サントリーサンゴリアス)から移籍を果たしたCTB梶村祐介。横浜キヤノンイーグルスの一員となって早1年、パワフルなランと鮮やかなチャンスメイクを見せ、昨シーズンは12番を背負って全試合先発出場という堂々たる活躍を見せた。

必要不可欠な存在となった梶村を、U20日本代表やサントリーでも指導してきた沢木敬介監督はイーグルスの新キャプテンに指名した。移籍2年目にして大役を担うこととなった梶村は、その指名をどのように受け止めたのか。八面六臂の活躍を見せた昨シーズンの振り返りと、12月に開幕する新たなシーズンへの意気込み、そして日本代表として出場を目指す来年開催のラグビーワールドカップへの思いを聞いた。

(取材日:2022年9月1日)




■移籍1年目は「安定感が増した」ものの「もっとできた」

──まずはイーグルス移籍1年目の昨シーズンを振り返っていただきます。大活躍でしたが、ご自身としてはどんなシーズンでしたか?

「開幕前に掲げていた『試合数をしっかり重ねていく』という目標については、全試合出場したことでクリアできたと思っています。もう一つの個人的な目標であったベストフィフティーンは獲れなかったので、まだまだインパクトが足りなかったと感じていますが、毎試合コンスタントに出場することでパフォーマンスが安定していきました。準備の仕方、試合へのモチベーションやマインドの部分でばらつきがなくなってきたと感じています」

──パフォーマンスの安定も開幕前の目標の一つでした。

「今まで多かったのが、パフォーマンスがよかった試合の次戦がすごく悪い、というパターンでした。パフォーマンスのばらつきがなくなり、安定感は確実に増した一方で、もっとインパクト、存在感は残せたのでは、という試合も多かったと思います。その点はまだまだだと感じました。また、自分でボールを持って前に出るだけではなく、トライチャンスを生み出せるようなプレーがもっとできたのではないかと思います。実際、イーグルスの両WTBがトライを獲るシチュエーションがなかなか作り出せず、もっと外側の選手が生きるようなプレーができたのではないかという思いは残っています」

──全試合出場して得られた収穫、または課題はありますか?

「1シーズン戦ってみて、序盤は体が軽く感じて思うように動けたのですが、終盤になると体のキレが落ちてきました。そのような時にどうすればいいかシーズン通して理解することができたので、そういう意味でも非常にいい勉強になったシーズンでした」

──目標としていた出場機会の増加、パフォーマンスの安定がシーズンを追うごとに達成されていった中で、起きた心境の変化などがあれば教えてください。

「自分のパフォーマンスを上げたいというモチベーションが結果としてチームの出来につながると考えていました。チーム内にリーダーがたくさんいましたのでチーム全体のことはある程度リーダーたちに任せて、自分はパフォーマンスでしっかり貢献しようという思いでプレーしていました。ただ、昨シーズンは早い時間帯でリーダーが負傷等で退くこともあり、またリーダーが欠場している期間も長かったので、シーズン途中からは責任を意識するようになっていきました」

──全試合出場した中で、特に印象的だったのはどの試合でしょうか?

「第2節のコベルコ神戸スティーラーズ戦ですね(※55-21でイーグルス勝利)。チームとして爆発しましたし、個人的にもパフォーマンスは悪くなかったと思います(※ハットトリックでプレイヤー・オブ・ザ・マッチに選出)。また、第6節の静岡ブルーレヴズ戦(※28-18でイーグルス勝利)はターニングポイントになった試合でした。僕は雨の日の試合でパフォーマンスが落ちると感じていたのですが、雨の日の戦い方を自分の中で理解し始めた試合となりました。大雨に見舞われた第10節のトヨタヴェルブリッツ戦(※20-9でイーグルス勝利)もその一戦があったからこそ戦いやすくなりましたし、いい学びになったゲームでした」

(2022年1月15日 コベルコ神戸スティーラーズ戦@日産スタジアム)

──逆に、特に悔しい思いをした試合があればお願いします。

「第5節のクボタスピアーズ船橋・東京べイ戦です(※21-50でイーグルス敗戦)。何もさせてもらえなかった試合でしたが、その負けを経て迎えた次の静岡ブルーレヴズ戦ではFWが我慢し、BKがしっかりエリアを取ることができました。やはりここがチームとして上向いていったターニングポイントになりました。スコアはそこまで大差にはなりませんでしたが、イエローカードが2枚出た時間帯(前半13分と15分)があっても勝ち切れたところにチームとしての成長を感じました」

(2022年2月6日 クボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦@ニッパツ三ツ沢球技場)

──その過程で、個人的にここが特に伸びたと感じた点はありましたか?

「ディフェンスのつながりの面はよくなったと思います。ただ、タックルのスキルも含め、もっと相手の勢いを消すようなディフェンスを学ばないといけないので、手応えを感じたと同時により課題が明確になった部分でもあります」

──チーム、組織としてのディフェンスの手応えはありましたか?

「そうですね。特にBKに関してはCTBジェシー(・クリエル)がリードしてくれていました。前で体を張ってくれますし、僕たちも信頼していますので、彼と一緒にプレーすることが自分の成長につながっています」

(2022年3月12日 NTTドコモレッドレッドハリケーンズ戦@秩父宮ラグビー場)

──目標の4強には届かなかったものの、多くの収穫があった昨シーズンは、移籍前までと比べて一味違う1年となったのではないでしょうか?

「はい。勝つ喜びを感じました。サントリーは勝って当たり前という雰囲気でしたが、どんどん上を目指そうとしているイーグルスというチームが強い相手に勝つのは本当にうれしいです。その一方で勝てる試合を落とすことも多いので、そういった詰めの甘さを改善していかないとトップ4入りは難しいと思います。昨シーズンで言えば第8節の東芝ブレイブルーパス東京戦(18-21でイーグルス惜敗)は一番のキーと言える試合でした。あのような試合で勝たないとトップ4は目指せません」

(2022年3月5日 東芝ブレイブルーパス東京戦@秩父宮ラグビー場)

■移籍2年目でのキャプテン就任に「ワクワクしている」

──ここからは12月に開幕を迎えるリーグワン2シーズン目についてうかがいます。まず、移籍2年目で新キャプテンに指名された今の心境をお願いします。

「チャンスがあればキャプテンをやりたいと考えていました。トップチームでのキャプテンは初めてなので、すごくワクワクしています」

──沢木監督からはどのような話があったのでしょうか?

「昨シーズン、細かいケガがありながらも最後までグラウンドに立ち続けたことを評価していただきました。それがキャプテンに指名した理由の一つということです。また、僕自身リーダーの経験があまりないことを沢木さんは知っていますので、『これがお前の成長につながる』とも言っていただきました。いいチャンスをもらえたと思っています」

──数多くの試合に出場し高いパフォーマンスを見せ続けるという、昨シーズンの梶村選手自身の目標を達成できたことが今回の就任につながったわけですね。

「試合でのパフォーマンスはもちろんなのですが、特にこだわっていたのは練習や試合に対する準備や態度です。他の選手も見ているところですし、決して手を抜くことなく準備をやりきろうと決めていました」

──キャプテン就任は初めてということですが、報徳学園高校と明治大学では副将を務めました。キャプテンを支えてきた経験を踏まえつつ、どのようなキャプテンを目指したいと考えていますか?

「まずはキャプテンである前に、プレイヤーとして練習と試合に向けてしっかり準備することを変わらずに続けていきます。そして、キャプテンとしては1シーズン常にまとまり続けるチームにしたいと思っています。昨シーズンは東芝さんに負けてからチームとして少しばらつき、第14節のコベルコ神戸スティーラーズ戦(※33-42でイーグルス敗戦)は最後までまとまれないまま完敗しました。出場している選手も出ていない選手も、全員がまとまり続けられるようにリードしていきたいと考えています」

──チームのまとまりはシーズン終盤のトップ4争いにも大きく影響しそうです。

「今のイーグルスにはトップ4に入る力があると思っていますが、ちょっとしたことで簡単に崩れてしまうチームでもあります。そういったところを修正していきたいです」

──昨季までキャプテンを務めたSO田村優選手とは話をしましたか?

「優さんとは何度か話をして、好きなようにやるようにと言われました。もちろん僕が責任感を持ってやることも大事なのですが、HO庭井(祐輔)さん、FL嶋田(直人)さんなど他にもキャプテン経験者がいますので、周りにも頼りながらやっていきます。開幕までには自分の中でこうしたい、こうあるべきといったことを明確にしてシーズンに入るつもりです」

──すでに練習が始まっていますが、今のチームの雰囲気はいかがでしょうか?

「チームでの練習はまだ週1回のペースです。それでもみんなしっかり準備してきているなと感じます。フィットネスは昨シーズンのベストタイムがターゲットですし、スタッフも昨シーズン以上のパフォーマンスを僕たちに期待しています。やってきたことは決して裏切ることなく、ちゃんと結果に表れると昨シーズンは感じましたので、今現在のチームの取り組みは自ずと結果に直結するはずです。全員が高い意識でやり続けてくれると信じています」

──やはり昨シーズン届かなかったトップ4がチームの必達目標となりますね。

「トップ4には絶対に入らないといけません。そのために、まず僕個人としては昨シーズン達成できなかったベストフィフティーンに選ばれるだけのパフォーマンスをする必要があります。リーダーとしては、繰り返しになりますがしっかりとチームを最後までまとめ続けて、プレーオフに立ち向かえる状態を維持していくことを目標にしています」

■日本代表では「しっかり成長してイーグルスに戻りたい」

──イーグルスでの活動と並行して、日本代表に対しても並々ならぬ思いを持って臨んでいます。

「日本代表に戻るためにリーグワンで試合を重ねたい、というのがイーグルスに移籍した理由の一つでもありますし、やはり代表には入りたいです」

──6月25日のウルグアイ代表戦第2戦に先発し、1トライを獲りました。代表2キャップ目で初先発となりましたが、手応えはいかがでしたか?

「最初のボールタッチで自分のやりたいことがある程度できたので、試合の入りとしてはよかったと思います。ただ、あの試合でのパフォーマンスをティア1(世界のトップ10を中心とする強豪国)相手にも発揮できるか、です。そのためにはもっと準備が必要でしょうし、まだまだ足りないと思っています」

──ウルグアイ戦後、日本代表のジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチからはどのような言葉をかけられましたか?

「『アタックとディフェンス、どちらにおいてももっとインパクトが欲しい』と言われました。それを踏まえてしっかり準備して、次のフランス戦に臨むつもりでした。フランスを相手に自分を試したかったですし、自信がありましたので、代表からの離脱は本当に残念でした。フランスを相手にパフォーマンスを出せれば信頼を勝ち取れると思っていました。ですから、今回の秋の日本代表で必ずチャンスをつかみたいです。(コンディション不良等で)不在だった主力選手たちが戻ってきますので、自分も勝負してポジションを勝ち獲らないといけません。春のように簡単にはいかないと思いますので、もっといい準備をする必要があります」

──途中離脱した悔しさも、秋のテストマッチに向けてモチベーションにもなりそうですね。

「はい。もちろん残念でしたが、代表への思いは変わりません。ずっと悔しい思いをしてきましたので」

──再び日本代表に選出されればイーグルスを長期間離れることになりますが、新キャプテンとして不安や心配などはないでしょうか?

「チームに対する心配はないのですが、できればプレシーズンの間みんなと長い時間を一緒に過ごし、そのうえでシーズンに入るのが理想ですので、それができないのは少し不安ではあります。その点は各選手にカバーしてもらい、少しでも解消していけたらと思っています」

──日本代表で成長してイーグルスに戻ってくるチャンスでもあります。

「それこそがチームから求められていることなので、一度離れるからにはしっかり成長してイーグルスに戻ってきたいです。特に自分が一番こだわっている練習への姿勢、準備を若い選手たちに見てもらうことでチームに還元したいと考えています。僕も中堅の域に入り、若手から観察される立場になります。手を抜かずにしっかりとやることで若い選手の刺激になればと考えています」

──今秋の日本代表における梶村選手個人のターゲットを教えてください。

「合計6試合(オーストラリアA戦3試合、ニュージーランド戦、イングランド戦、フランス戦)ある中で、できる限り多くの試合で12番を背負ってインパクトを残したいです。まずはオーストラリアAとの3連戦でいいパフォーマンスを出せれば、テストマッチ3試合への出場のチャンスは絶対に巡って来ますので、それをつかめるように準備していきます」

──ニュージーランド代表「オールブラックス」との対戦が控えていますね。

「大きなモチベーションになっています。僕はまだティア1との試合を経験していませんので、もし初めてのティア1との対戦がオールブラックスになればすごく光栄なことです。勝つチャンスはあると思っていますので、試合に出て結果を残したいと考えています」

──イングランド戦に出場すれば、エディー・ジョーンズ ヘッドコーチに成長した姿を見せることができます。

「最初に日本代表の合宿に呼んでもくれたのはエディーさんなので、もし試合に出場できたら本当に幸せな時間になるだろうと思います」

──7月、対戦できなかったフランスとは敵地で対戦のチャンスがあります。

「自分たちがしっかりボールを保持して試合を進めていき、両翼に回してチャンスを作り続け、その中で自分もインパクトを残すことが大事になります。そしてフランスのような強い相手にディフェンスで安定感を見せられれば、来年のワールドカップ出場が近づいてくると思っています」

──最後に、来年のラグビーワールドカップ フランス大会への思いを聞かせてください。

「もちろん日本代表として出場したいです。大会に出て結果を残したいという思いはありますが、まずはこの秋のツアーで代表に残り、その中でいいを経験して信頼を勝ち取る必要があります。それができたら来年のワールドカップのメンバー入りが見えてくると思いますので、まずはこの秋のツアーでしっかり戦って帰ってきたいと思います」




昨シーズンのような高いパフォーマンス、そのための準備と姿勢。新キャプテンにふさわしい要素を持つ梶村祐介は、リーグワン開幕の前に日本代表で大きなチャレンジを続けている。プレイヤーとしてさらなる高みを目指すことは、梶村自身だけでなくイーグルスにとっても間違いなくプラスに働くはずだ。

一段と大きくなって戻ってくるだろう不動の12番の活躍が、今から楽しみだ。

(インタビュー:齋藤 龍太郎)

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