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2023.11.28
INTERVIEW

LO マシュー・フィリップ選手インタビュー

LO マシュー・フィリップ選手インタビュー

「横浜に戻ってこられたのは運命かも」

期待のワールドクラスのLOが横浜キヤノンイーグルスへの仲間入りを果たした。

マシュー・フィリップ。オーストラリア代表31キャップを数え、今年フランスで開催されたラグビーワールドカップ2023に出場。祖国のスーパーラグビーのチームのみならずフランスのラグビーも経験したインターナショナルプレイヤーが、初めて日本のチームでプレーする。

201センチ117キロのサイズはもちろん経験値も段違いの29歳のオージーは、どのような思いでイーグルスの門を叩いたのか。彼にとって大きな決断となった日本への移籍の理由、そして今後について話を聞いた。


■まだまだ大きく成長できる

──先日のワールドカップは、オーストラリア代表にとって初のプール戦敗退という残念な結果に終わりました。

「はい。もっと長くプレーしたかったですね。(プール戦敗退によって)来日が少し早まりました」

──ワールドカップ終了後はイーグルスへの移籍が決まっていたわけですが、イーグルスからオファーがあった時はどのように感じましたか?

「祖国のオーストラリアで長く過ごしてきましたし、所属していたスーパーラグビーのレベルズがすごく好きだったので、そこから離れる決断は私にとって非常に大きなものでした。それでも新たなチャレンジをしたかったですし、そう考えていた時にちょうど横浜キヤノンイーグルスから声がかかったのです。イーグルスはリーグワンで快進撃を見せており、チャンピオンになれる可能性がものすごく高いチームだと思っていますので、自分もチームの一員になって活躍したい、という気持ちで移籍へ踏み切りました」

──フランスのTOP14のポーでもプレーされていましたが、オーストラリア国外でプレーしたい、というモチベーションは以前から高かったのでしょうか?

「国内か国外か、というよりも、常に自分が成長できる場に行くことが私にとってのモチベーションです。LOとして、またタイトファイブ(FWの前5人)としてもまだまだ成長できると思っています。自分にとって体の面でもコンディションの面でも大きく成長できる要素が日本のラグビーにはあると思うので、そういうところにモチベーションを持ちながら自分が成長できるよう取り組んでいます」

──その点でも、以前から日本のラグビーを興味深くご覧になっていたのですね。

「見ていて本当にエキサイティングなラグビーをしていると思いますし、アタックの機会が多く、セットピースよりもアタックを重視しているように感じていたので、見ていておもしろいなと感じていました」

──オーストラリア代表としてのデビュー戦は2017年11月の日本代表戦でした(日本30-63オーストラリア)。場所は横浜の日産スタジアムでしたね。

「また横浜に戻ってこられたことは、もしかしたら運命かもしれません。そういう意味でもイーグルスに入ることができてうれしいです」

──なお、2021年10月には大分で日本代表と再戦しています(日本23-32オーストラリア)。

「日本代表はフィジカルも強くなっていましたし、セットピースも向上していて、崩すのに苦労しました。2017年の横浜での試合は結構簡単にトライを獲れましたが、2021年は獲るのが難しかったですね。日本のラグビーに変化を感じた試合でした」

──スーパーラグビーでサンウルブズと対戦した時にも来日されていますが、日本という国や街の印象はいかがでしたか?

「まず、すごく活気あふれる国であり街だと感じました。文化、伝統を守っていて、他国で感じられる以上に相手への礼儀正しさやリスペクトがあると感じています。オーストラリア人は性格が荒々しいところがあるので、すごいなと思いますし、明確な違いを感じています」

──イーグルスの日本人選手からそういう部分を感じますか?

「礼儀正しさやリスペクトはもちろんですが、何よりみんなに心から歓迎してもらえています。オーストラリアから日本への移籍は私にとって大きな環境の変化ですが、これだけ温かく迎え入れてくれたことで、チームに貢献したいという気持ちがさらに高まりました。チームに対する思い、貢献したいという意欲、それらが強ければ強いほどパフォーマンスにも表れると思っています」

──ワールドカップ直前の、オーストラリアでの代表合宿中に沢木敬介監督と会ったそうですね。

「軽く挨拶してちょっとした世間話をしたのですが、それに加えて、どういう気持ちでイーグルスに行くかということ、そして自分の強い意志、勝ちたいという気持ちを伝えました。キャリアの終盤だから日本に行くのではなく、今後もますます活躍したい、という思いを伝えたわけです。その時はワールドカップにフォーカスしていましたが、大会を終えた今はイーグルスに貢献したいと思っています」

──当時、オーストラリア代表を指揮していたエディー・ジョーンズ前ヘッドコーチとは日本のラグビーについて何か話をしていたのでしょうか?

「その時は日本について話すことはありませんでしたが、今は時々連絡を取っています」

■南アフリカ代表選手たちから成長の秘訣を学びたい

──イーグルスの以前の試合やプレシーズンマッチを見た印象はいかがですか?

「すごくエキサイティングなアタッキングラグビーで、見ていてわくわくします。スキルもFW(フォワード)、BK(バックス)ともに高いですし、特にユウ(SO田村優)は非常にスキルが高いので、本当にエキサイティングなメンバーが集まっていると感じています」

──やはりそのようなインターナショナルプレイヤーとプレーすることが、今後のご自身の成長につながりそうでしょうか?

「テストマッチやオーストラリアのラグビーとはスタイルが違い、スピードやアジリティ(敏捷性)が求められるので、自分としても身体的にも運動能力的にも変わってくると思います。テストマッチはコンタクト重視のラグビーですが、リーグワンではスピードとアジリティが大事なので、その部分で成長できたらと思っています」

──そして間もなく、ワールドカップで優勝した南アフリカの2選手、SHファフ・デクラーク選手とCTBジェシー・クリエル選手が合流します。彼らとプレーできることはフィリップ選手にとってどのような意味や効果がありそうですか?

「かなり多くのことを学べると思います。一緒に練習して、フィールド外でもいろいろ話して、成長の秘訣を知りたいと考えています」

──フィリップ選手は現在コンディション調整中のようですが、やはり日々の練習を見ていても学びはあるでしょうか?

「普段の練習はもちろん、初めて合流した別府合宿でも感銘を受けました。ボールがよく動くので、早く練習に入りたいと思っています」

──開幕に間に合わせたいという思いはありますか?

「はい。開幕戦の埼玉パナソニックワイルドナイツ戦はとても大事です。これまで経験してきたラグビーとは違うイーグルスのスタイルに慣れたうえで、そのビッグゲームでしっかりと勝利に貢献したいと考えています」

──4年後は祖国オーストラリアでワールドカップが開催されます。

「また代表に入るチャンスがあればいいのですが、今はイーグルスに集中しています。まず、とにかく勝つことです。リーグワンに自分の名をしっかり残したいですし、いい印象を残したいと考えています」


質問に真摯に応じるフィリップ選手の瞳には一点の曇りもなかった。彼にとって自身を突き動かすのは「成長への意欲」だ。イーグルスのラグビーに適応することが成長につながり、ラグビーキャリアをより輝かせる。そう確信して日々、準備に勤しんでいることがうかがえるインタビューだった。

選手としてさらなる高みを目指すフィリップ選手。世界的LOのリーグワン1年目の活躍に期待したい。

(インタビュー:齋藤 龍太郎)

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