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2023.12.07
INTERVIEW

キャプテン・CTB梶村祐介選手インタビュー

キャプテン・CTB梶村祐介選手インタビュー
キャプテン・CTB梶村祐介選手インタビュー

「自分たちを信じる。それをグラウンドで体現する」

横浜キヤノンイーグルスに移籍して3シーズン目、そしてキャプテンとして2シーズン目を迎えた梶村祐介選手の表情は、厳しい練習後のインタビューにもかかわらず明るく朗らかだった。

昨シーズンのチーム史上最高位の3位を上回る結果を残すこと、より明確にするならば「優勝」というチームとしての目標がクリアに見えているからこその表情だと受け取れる。

その半面、キャプテンとして昨シーズンとは違った難しさを感じているという。結果を残した昨シーズンとの違いを果たしてどこに感じているのか。そして今回のラグビーワールドカップを見て感じたこと、学んだこととは。以前よりもさらにスキッパーらしい視点から、今シーズンへの思いを語ってもらった。


■ファフ&ジェシーのよさを引き出すには僕たちがもっとレベルアップを

──昨シーズンに続きキャプテン留任となりました。意識的に変えていること、変えていないことなどキャプテンとしての取り組みをお聞かせください。

「チームに対してどういった声掛けをするべきか、試合や練習のどのタイミングでアクセントを入れないといけないか、といった意識はするようになりました」

──11月18日の静岡ブルーレヴズ戦までプレシーズンマッチ全勝中です。キャプテンから見てチーム状態はいかがでしょうか。

「勝ち続けるのは本当に素晴らしいことですが、勝敗以上に勝ったゲームの中で『自分たちが準備してきたことがどれだけできているか』にフォーカスしています。そのブルーレヴズ戦では前半苦労する場面もあり、できていることもあればできていないこともありましたが、内容にこだわって試合ができた感触はあります」

──たとえばどのような反省点がありましたか?

「アタックに関しては昨シーズン以上にオプションの数が増えていて、選手には『より難しいラグビーをしている』という認識はあるのですが、それが実際の試合でのプレッシャー下でまだ発揮できていません。でもそれができるようになれば僕らのアタックはどのチームにとっても脅威になると思っていますので、そこをもう少し擦り合わせないといけない状況です」

──一方、ディフェンスは昨シーズンまでスクラムを指導していたシージェイ・ファンデル・リンデコーチが担当するようになりました。

「ディフェンスシステムが大きく変わりました。これからゲームを通して自信を深めていけばもっとよくなっていくはずですし、今シーズンの自分たちの強みになると思っています。僕個人としてもディフェンスに注力していて、今シーズンはそこで目立つ選手になりたいと考えています」

──選手は7月から、チームとしては9月から準備を進めてきました。

「ワールドカップに行っていたメンバーはもちろん不在でしたが、彼ら抜きの状態で試合をした時に『誰々が不在だからレベルが落ちる』とか『誰々が出るから強いんだ』というレベルにいるとチームの目標である優勝は難しくなってきますので、まずは個人のレベルを上げていこう、というところから今シーズンは始まりました。その点ではいいスタートが切れたと思っています」

──そんな中、梶村選手にとって東京サンゴリーサンゴリアスの元チームメイト、HO中村駿太選手とPR祝原涼介選手がイーグルスに移籍してきました。

「経験も能力もあり、プレーオフに毎回出ているチームから来てくれたことで、確実にチームの底上げにつながると思っています。僕らがやろうとしているラグビーにフィットしている選手たちですし、より高いレベルで自分たちのラグビーができると信じています」

──梶村選手との関係性も強いですね。

「はい。特に祝原は明治大学時代から一つ年下の後輩で、ニュージーランドに2人で留学したこともあるので、違うチームにいた感覚は正直あまりないですね。イーグルスにもすんなり溶け込めたのではないかと思います」

──また、チームとして始動した9月から10月にかけてはラグビーワールドカップが開催されていました。日本代表の試合をどのような心境でご覧になっていましたか?

「イーグルスの2人(SO/FB小倉順平、NO.8/PRシオネ・ハラシリ)には何とかゲームに出てほしいと思いながら見ていました。ただ、日本代表も結果を残さないといけないので、信頼されている選手が優先的に使われている印象でしたね」

──ハラシリ選手は日本代表ではPRでした。

「彼のベストポジションは絶対にNO.8です。あの推進力はナキさん(NO.8アマナキ・レレイ・マフィ)とはまた違うよさがあり、チームにとって武器になっていると思います」

──同じくワールドカップに出場していたオーストラリア代表LOマシュー・フィリップ選手も楽しみな存在です。

「やはりラインアウトで高い能力を発揮するイメージがありますので、そこでリードしてほしいですね。今シーズン新たに取り組んでいるディフェンスのシステムに彼がフィットしてくれれば、チームとしてよりレベルの高いディフェンスができると思います」

──そして南アフリカがワールドカップ連覇を果たし、大きなインパクトを残しました。SHファフ・デクラーク選手、CTBジェシー・クリエル選手は圧巻のパフォーマンスでしたね。

「やはり南アフリカは強かったです。特に決勝トーナメントの3試合、準々決勝(フランス戦)、準決勝(イングランド戦)、決勝(ニュージーランド戦)はすべて1点差でしたが、相当な力がないとそういうゲームを勝ち切ることはできないと思います。
 もちろんファフとジェシーは特に注目していました。彼らのパフォーマンスは素晴らしかったです。ファフはリザーブの試合もあり『全試合先発でいいのに』と思いながら見ていたのですが(笑)、やはりビッグゲームで力を発揮する選手だなとあらためて感じました。
 ジェシーはボールを持っている時はもちろん、持っていない時のよさも際立っていて、今回のワールドカップでベストのアウトサイドCTBだったと思います。そういう選手たちとまた一緒にプレーできるのはすごく幸せで、誇らしいことです。
 同時に、世界一になった彼らのよさを引き出すためには僕たちがもっとレベルアップしないといけないと感じました」

■大事なのは継続的にプレーオフに進むこと

──過去最高位の3位の座についたイーグルスは、今シーズン、決勝のステージを目指すことになります。

「チャンピオンを目指しています。そのためにトップ4に入ってプレーオフに進まないといけません。今シーズンは対戦相手が僕たちをトップチームとして捉えて立ち向かってきますので、簡単なゲームはなくどのチームに対しても100%で臨む必要があります。そういう意味では難しさはありますが、そのプレッシャーに打ち勝ってチャンピオンを狙いたいと考えています」

──そのためにも12月10日の開幕戦、埼玉パナソニックワイルドナイツ戦は大事な一戦です。

「もちろんどの試合も大事ですが、ワイルドナイツは経験豊富な選手が揃う手強いチームですし、なかなか負けない相手です。昨シーズンは崩し切れませんでしたが(リーグ戦とプレーオフ準決勝でともに敗戦)、今シーズンはどうすれば相手を崩せるのか僕たちはわかっていますし、勝てると信じています。ぜひ結果を出したいです。その上で第2節のホーム開幕戦(12月16日のトヨタヴェルブリッツ戦)に臨みたいですね」

──チームスローガンの「MASTER OUR BELIEF」についてはどう捉えていますか?

「自分たちを信じることが今のイーグルスに一番足りないところだと思っています。力は絶対にあるのですが、過去のトップ4のチームの方が強いんじゃないか、などと思うことなく、本当に自分たちを信じられるかどうかにかかっています。己を信じ、それをグラウンドで体現していくことが今シーズンのターゲットです」

──沢木監督は、キャプテン2シーズン目の梶村選手にとってよりチャレンジングな「難しいシーズンになる」という話をしていました。

「正直、昨シーズンよりも難しさは感じています。当時は自分のパフォーマンスに集中していましたし、日本代表の活動を終えてから即合流したこともあって、気づいたらシーズンが終わっていたぐらいの感覚で、キャプテンとしてやり遂げたという感触はあまりないシーズンでした。今シーズンはずっとチームと一緒にいて、みんなの前に出て話す機会も多くなりましたし、経験のある選手たちのサポートを受けながらやっていますが、もっと成長して自立していかなければと思っています」

──特にどの選手がサポートしてくれているのでしょうか?

「僕と同じディフェンスリーダーのFL嶋田(直人)さんとは話す機会が多いですね。あとはやはりSO(田村)優さんにはよくサポートしてもらっていて、キャプテン経験者の選手たちから多くのことを学んでいます」

──あくまで対戦相手はチームではありますが、プレイヤー単位で見るとどのチームにもワールドクラスの選手がずらりと揃っています。楽しみでしょうか?

「各チームともそういう選手があまりにも多く揃っていて、もはや意識しなくなってきました(笑)。それでも自分と同じ12番や13番が世界的な選手だと気が引き締まりますし、対戦が楽しみになります。どのチームもCTBは外国人選手が入っていることが多いので、毎回マッチアップがおもしろいと感じています。ディフェンスで彼らを仰向けに倒すシーズンにしたいですね」

──それを続けた先にあるのが初優勝の称号です。

「やはりチームとして非常に大事なのは継続的にプレーオフに進むことです。どのチームにも1回なら入るチャンスがあると思うのですが、それを継続するのはすごく難しいことです。プレーオフに進むことで初めて優勝の権利を手にできるので、まずは確実にプレーオフに進むこと、そのうえでチャンピオンを狙いたいと考えています」


自身からチームへとベクトルがより向くようになり、キャプテンとしての自覚を増している梶村祐介選手にとって、その飛躍がチームの結果に直結するシーズンとなりそうだ。

世界の頂点に立った選手たちについてもただ彼らに頼るのではなく、彼らと肩を並べる選手になるという姿勢を見せている点も、多くの選手の模範になっているはずだ。

最後に降り立つのは日本の頂。そう誓うスキッパーを中心に、イーグルスは翼を広げて飛び立とうとしている。

(インタビュー:齋藤龍太郎)

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