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2025.05.29
INTERVIEW

梶村祐介キャプテン インタビュー

「学んだことを大事にして成長した姿を見せたい」

6勝12敗、8位。2シーズン連続でプレーオフトーナメントに進出し、2022-23シーズンは3位というチーム史上最高の結果を収めた横浜キヤノンイーグルスにとって、2024-25シーズンは受け入れ難い結果で幕を閉じることとなった。

イーグルスの躍進の立役者であり、今季もスキッパーを務めたCTB梶村祐介キャプテンは、第11節の負傷でシーズンの半分近く、ピッチから遠ざかることになった。チームの不振、責任、自身の復帰。様々な思いをにじませながら、梶村キャプテンにシーズンを振り返ってもらった。


■どんな結果であっても毎週毎週自分たちの形に戻すことが僕らの仕事

──今シーズンの振り返りの前に、梶村キャプテンの現在のコンディション、回復の見込みについてお聞かせください。

「第11節のリコーブラックラムズ東京戦で右肩を負傷して、3月末に脱臼の手術をしました。今はリハビリをしている段階で、復帰は9月頃を予定しています」

──第12節以降は試合を外から見るシーズンとなりましたが、チームは8位という結果に終わり、上位6チームによるプレーオフトーナメント進出はなりませんでした。

「今振り返っても(トライを)獲るべきところで獲れなかったり、敵陣に入っても自分たちのエラーで終わってしまったり、ディフェンスでは相手に簡単にスコアされてしまったり、というシーズンでした。チームとしての実力がそのまま勝敗に表れてしまったと感じています」

──以前なら勝利のイメージが湧きそうな試合を次々と落とした、という印象を受けました。

「昨シーズン(4位)やその前のシーズン(3位)と比べて何がよくなかったかというと、チームとして粘り強さが全くなかったことです。アタックもディフェンスもすごく淡白だった、と今となっては感じています」

──相手に簡単にトライを許す場面が多く見られました。ディフェンスに関してはどのあたりに問題があったと感じていますか?

「今シーズンのイーグルスのディフェンスシステムでは、誰かがタックルミスをしてしまうと自分たちのシステムに戻れなくなる(ディフェンスを再整備しづらい)という脆い面がありました。タックルを外され、その次のフェーズで簡単にトライにつなげられてしまう場面が多かったことの一因と言えます」

──チームの武器だったアタックに関してですが、ある程度はイーグルスらしい攻撃が見られた一方で、会心のトライがなかなか見られなかった試合もありました。

「今シーズンのアタックは、セットピースからの3フェーズクオリティがガクンと落ち、スコアしないといけない敵陣22mラインを超えたエリアでの決定力も低くなりました。それがスコアに表れてしまったと思っています。また、自分たちのアタックのスタイルが相手に研究されてきて、それを跳ね返すようなプレーがチームとしてできなかったと感じています」

──そのような課題に毎週取り組み、修正を試みていたと思いますが、修正しきれないままシーズンの終わりを迎えることになりました。

「試合がどんな結果であっても毎週毎週自分たちの形に戻すことが僕らの仕事であり、勝っても負けてももう一度自分たちの形に戻してやり続ける『遂行力』が非常に大事だと毎試合感じていたのですが、今シーズンのチームは何か一つのミスが起きた時にみんなのスイッチが切れてしまう、といった状態が長く続いてしまいました。それをシーズン中に修正できないまま最後までズルズルいってしまったと感じています」

──梶村キャプテンが実際にプレーしていたシーズン前半と、欠場により外から見るようになったシーズン後半では、問題点の見え方は変わりましたか?

「変わらず同じ問題を抱え続けていると感じていました。今シーズンは、自分たちが長いフェーズで、時間をかけてトライを獲ったとしてもその後ワンプレー、ツープレーですぐに取り返されてしまうというシーンが多かったのですが、そうなるとどうしてもメンタル的にしんどくなります。そういうシチュエーションがグラウンド上の選手のメンタルに影響を与えていたと感じますし、それを修正するには至らなかった、ということです」

──たしかに、何かメンタル面で問題を抱えていたのではないか、と感じてしまう試合が多かったです。

「昨シーズンやそれ以前と比べたら、本当に100%の自信を持って毎週ゲームに臨んでいたか、と言われると、今シーズンはそれだけの自信があったとは言えませんでした。メンタル以外の部分としては、イーグルスはコネクション、つまりグラウンド上のつながりを意識してプレーするのが特徴だったのですが、今シーズンは(それ以前に)フィジカルの面で苦戦しました。今のリーグワンにおいてイーグルスのフィジカルの強さはそこまで上位に位置しているとは言えません。むしろスピードやボールを動かすことで勝負してきたのですが、そのようなところをフィジカルで抑え込まれてしまったと感じています」

──梶村キャプテンをはじめ、チームのキーマンに負傷者が相次いだことも勝敗に影響したのではないでしょうか。

「おそらく数試合はその影響が出たとは思いますが、代わりに出てきた選手が素晴らしいパフォーマンスをしていましたし、若い選手たちも今シーズン終盤までいいパフォーマンスをし続けてくれたので、結果は出ませんでしたが新たな希望は生まれたと思います」

──特にいい影響を与えた新加入選手を一人挙げるとしたら、どなたでしょうか?

「FL/NO.8のビリー・ハーモンですね。シーズンを通して一貫性があり、スタンダードも高かったと感じています。本来は7番の選手ですが慣れない6番で戦ってくれて、それにもかかわらず毎試合変わらないパフォーマンスを見せてくれたことはチームにとっても大きかったですし、すごく助かりました。移籍1年目とは思えないパフォーマンスでした」

──BKでは、15人制に本格復帰したWTB石田吉平選手もリーグワンデビューを飾り、チームトップの11トライをマークしました。

「吉平はボールを持ったら何かしてくれる、という期待感が常にありました。アタックだけではなくディフェンスでのハードワークもチームとして大きかったです。トータルで見て、BKの中では抜きん出たパフォーマンスだったと思います」

■勝負どころで相手を上回れなかった

──先ほど「自分たちの形に戻す」という表現をされていましたが、思うように勝てなかったシーズンの中でも第10節の東京サントリーサンゴリアス戦(33-22で勝利)は快勝と言っていい試合内容だったのではないでしょうか?

「三重ホンダヒートに負けた(第9節。17-20で敗戦)次の節で、ここで勝たないとプレーオフ進出が厳しくなるというタイミングでした。ですからどうしても勝ちたい試合でしたし、スタイルが似ているチーム同士だと思うので、みんな『負けたくない』という気持ちを持っていました。全員がいいパフォーマンスを出して、いい勝ち方ができました」

──「Love for the Eagles」という言葉でチームが一丸となったと聞きました。

「『何のためにプレーしているのか』といったことをみんなで考えて、もう一度原点に立ち返ってプレーしようと話して臨みました。最初の20分ぐらいまでは相手の流れでしたが、そこから巻き返していいゲームができたと感じています」

──シーズンとしても巻き返しの起点になりそうな試合でした。

「次(第11節)のリコーブラックラムズ東京戦も勝って連勝を、と思って臨んだのですが、試合中に僕やファフ(SHファフ・デクラーク)が負傷してしまい、チームの勢いをうまく作れませんでした(20-27で敗戦)。本当に悔いが残る試合でした」

──ここからだ、という試合でアクシデントが重なりました。

「メンタリティも含めてチームとして非常にいい状態で試合に入っていけたのですが、ケガが重なったことも含めて相手に流れを与えてしまいました。今シーズンはあの試合から崩れ始めてしまったと感じています。一段と激しいリーグになり、以前のように勝利が計算できるレベルではなくなりました。1勝することの難しさをあらためて思い知らされたシーズンだったと言えます」

──1勝、そのためのワンプレーの重みも感じましたか?

「勝負どころで相手を上回れなかったことが何よりも大きかったです。相手もこちらが勝負をかけた時は必死になって止めてきて、そういった勝負どころでこちらが負けてしまうことが今シーズンに関しては多かったと言わざるを得ません。フィジカルでプレッシャーをかけられ、自分たちがボールを蹴らないといけない状況に持ち込まれるのが一番やられたくないことなのですが、そういうシチュエーションを多く作られてしまいました」

──来シーズンの始動はまだ先ですが、フィジカルなど根本的なところから見直す必要がある、ということですね。

「そうですね。フィジカル面はもう一度鍛え直さないといけません。また、2シーズン前(2022-23シーズン)に3位になった時からメンバーが大きく変わっておらず、平均年齢も高いチームになってきているので、いかに若い選手たちを入れながらレベルアップしていくか、ということがすごく大事になってくると考えています」

■もう一度自分のパフォーマンスを上げて復帰したい

──梶村キャプテンの負傷離脱後は試合によってゲームキャプテンが変わることが多くなりました。梶村キャプテンと各ゲームキャプテンの間では何か話をしていたのでしょうか?

「たとえば庭井さん(HO庭井祐輔)やシマさん(FL嶋田直人)はキャプテン経験者ですし、それぞれのやり方があったと思うので、僕が前もって何か話をしたことはありません。ただ、試合後には少し話をしました」

──ご自身が試合に出られない中で、たとえば言葉の面など何かチームに貢献できたことはありましたか?

「自分自身、これほどの長期間グラウンドを離れたことがなかったので、キャプテンという立場でみんなとグラウンドで一緒にプレーできないことに難しさを感じていました。ケガをしてからの取り組みに関しては個人的にも反省していて、もっとできることがあったのではないか、と思っています。リーダーの選手たちで集まってはいたのですが、(自身の思いや考えなどを)うまくグラウンドに反映させることができなかったので、その点は反省すべきだと思います」

──苦しいシーズンを過ごして、得たことは何でしょうか?

「チームとしての忍耐力が必要だということですね。プレーだけではなくメンタルの部分も含めて忍耐力、我慢強さをもっと上げていかないといけません。対戦相手との我慢比べても勝てなかったですし、来シーズンはそこを変えていかなければならないと思います。僕個人としてはまずケガから復帰してグラウンドに戻らないといけません。その時には自分のパフォーマンスをケガする前よりも上げて、チームに対して貢献していきたいなと思っています。チーム体制も大きく変わるので、このタイミングでもう一度自分のパフォーマンスを上げて復帰したい、それがターゲットです」

──最終節をもって引退した嶋田直人選手への思い、学んだことがあればお願いします。

「現役選手の中では数少ない、イーグルスの顔と言える選手です。今までイーグルスを支えてきてくれたチームマンですから、影響を受けた選手はたくさんいると思いますし、僕もその一人です。シマさんがずっとイーグルスで示してきた姿勢、プレー、プレーのための準備など、本当に学ぶべきことが多かったので、それをしっかりと次につなげて、自分よりも下の世代に伝えられたらと思っています」

──最後に、退任される沢木敬介監督についても思いを聞かせてください。

「僕は敬介さんに拾ってもらってこのチームに来て、移籍2シーズン目でキャプテンに任命していただきました。僕自身は18歳からの付き合いで、イーグルスでは4シーズンご一緒しましたが、チームをここまで引き上げてくれたのは敬介さんの力によるものが大きかったですし、素晴らしいコーチだとあらためて思いました。これまで学んだことを今後もチームとして大事にしながら、個人的にはもっと成長した姿を見せられるようにがんばっていきたいと思います」


チームのどこに、どのような問題があったのか。梶村祐介キャプテンはすでにそれを把握し、鋭く指摘した。ピッチ上で問題を解決できなかった無念があった一方で、負傷によりピッチを離れたことで新たに感じたこともあった。

敗北はすべてを奪い、無に帰してしまうわけではない。未来への新たなヒントが、そこには必ず隠されている。それをいち早く見つけた梶村キャプテンの来シーズンのパフォーマンス、そしてさらなるチームへの貢献を期待せずにはいられない。

(取材・文/齋藤龍太郎)

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