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2025.10.06
INTERVIEW

LO ディノ・ラム選手 インタビュー

イーグルスにはとてもいいチームカルチャーがある

ラグビーワールドカップ、シックス・ネーションズなど世界最高峰の舞台で出色のパフォーマンスを見せてきたワールドクラスのLOが、このほど横浜キヤノンイーグルスへの仲間入りを果たした。イタリア代表6キャップのLOディノ・ラム。イギリス国籍の27歳だ。

母国イングランドのプレミアシップの名門ハーレクインズで長年活躍し、イタリア代表になるまでに成長した彼が環境の異なる日本のイーグルスに移籍した経緯をはじめ、実際に練習して感じていること、イーグルスの仲間たちとの交流などについて聞いたところ、終始朗らかな表情でストレートに明かしてくれた。


■環境が大きく異なる日本でチャレンジすることに

── 早速ですが、日本はいかがですか?環境が大きく変わったと思いますが。

「毎日とても暑いですが、いい環境で練習できています。選手もコーチたちも素晴らしく、サポートしてくれているのですごく楽しんでいます。これからもっと楽しくなると思いますし、早く寒くなることも楽しみにしています(笑)」

── 日本のイーグルスに移籍したのはなぜでしょうか?

「プレミアシップのハーレクインズで10年間プレーしてきたこともあって、新しい経験をしたいと考えました。イタリア代表なのでイタリアやフランスのチームでプレーすることも考えたのですが、環境が大きく異なる日本でチャレンジすることにしました。リーグワンでは有名な選手たちがプレーしているという話を聞いていたのですが、そんなときに日本でラグビーできるという話が来たので、この機会をとても楽しみにしていました」

── 今回の移籍にあたり、イーグルスのことは事前に調べたり、何かしら情報を仕入れたりしていたのでしょうか?

「はい。SHファフ(・デクラーク)とCTBジェシー(・クリエル)が在籍しているすごいチームだと認識していました。ちなみにファフとは彼がセール・シャークスにいたときに対戦したことがあります。 また、UBKブレンダン・オーウェンとは以前から仲がいいので、イーグルスの話は自ずと耳に入ってきました。 昨シーズンの結果は残念でしたが、その前はトップ4に入っていたチームなので、成長しているチームだと認識していました」

■ワールドカップはベストパフォーマンスを見せたいという気持ちでプレー

── イタリア代表のラム選手はイングランド生まれ、イギリス国籍です。

「父がイタリアのトリノ出身で後にイングランドに移住したので、私にはイタリア代表とイングランド代表の資格がありました。10歳から15歳までの間、イタリアの祖父母のところに年に2回くらいは行っていました」

── その後、U18とU20のイングランド代表に選出されましたが、やはり当時はイングランド代表になりたかったのでしょうか?

「そうですね。ターゲットはイングランド代表でした。2023年のワールドカップの前にイングランド代表とイタリア代表の両方の可能性がありましたが、イングランド代表のスティーブ・ボーズウィック ヘッドコーチからは『ハードワークし続ければワールドカップ後に代表になれるかもしれないよ』と言われたのに対し、イタリア代表のクロウリー ヘッドコーチには『ワールドカップに出てほしい』と言ってもらい、イタリア代表を選ぶことにしました。父はとても喜んでいましたね」

── ラグビーワールドカップ開幕直前の2023年8月にイタリア代表の一員として日本代表と対戦しましたが(イタリア42-21日本)、ジャパンの印象はどうでしたか?

「私はその8月にテストマッチデビューしたばかりでしたが、以前から日本のラグビーのスピードには注目していました。この試合も途中までベンチで見ていて(リザーブから途中出場)、そのスピードに驚かされました。日本のラグビーはセットピース以上にアタッキングラグビーを重視しているなとあらためて感じました」

── 現在、三重ホンダヒートを率いているキアラン・クロウリー ヘッドコーチが、当時のイタリア代表の指揮官でした。

「彼は私がイタリア代表になるきっかけを作ってくれた恩人です。彼のアタッキングラグビーにはいつもわくわくしていました。再会を楽しみにしています」

── 3試合出場したワールドカップは、ラム選手にとってどんな時間でしたか?

「素晴らしい時間でしたね。ハーレクインズの(当時の)キャプテン、ステファン(・ルイス。元南アフリカ代表)からは『代表になれるのはラグビー選手の中でもほんの一握りだ』と言ってもらいました。ワールドカップは私にとっていい転機になりました」

── ナミビア戦ではトライを決めて、勝利に貢献しました。

「トライ自体はもちろん意識はしていたのですが、ワールドカップでトライを決められるとは思ってもいませんでした。ベストパフォーマンスを見せたいという気持ちでプレーした結果がトライにつながりました」

── 今年は伝統あるシックス・ネーションズ(欧州6カ国対抗戦)にも出場しました。

「ワールドカップは『この舞台に立てたなんてあり得ない』という感覚だったのですが、シックス・ネーションズにイタリア代表として出場できたこともこの上なくうれしかったです。ゴンサロ・ケサダ現ヘッドコーチのもとさらに改善を続けた結果ウェールズに勝つことができましたし、チームはこれからもよくなっていくと確信しています」

── ハーレクインズの選手も出場していたイングランド代表との試合には特に出たかったのではないでしょうか?

「そうですね。プレーできるのをすごく楽しみにしていたのですが、試合の直前にケガしてしまいました。ですから次はイングランドと対戦することをターゲットにしています」

■サポーターの存在がラグビーをしている大きな理由のひとつ

── 来日後、レオン・マクドナルド ヘッドコーチとはどんな話をしたのでしょうか?

「ラインアウトからのストラクチャーをもっと磨き上げていこう、という話をしました。私もイーグルスに来てまだ日が浅いですが、彼が目指しているのがスピード感のあるラグビーであると理解したので、私もそういうプレーをしたいと考えています」

── 一部の選手はまだ合流が先になりますが、イーグルスの仲間たちについてはどう感じていますか?

「みんな優しくて、歓迎してくれましたし、いろいろなケアをしてくれています。南アフリカやアイランダーなど様々なバックグラウンドを持つ選手たちもいて、とてもいいチームカルチャーがあるなと感じています」

── 特によくサポートしてくれている選手はいますか?

「みんなからよくしてもらっていますが、FL/NO.8アミニアシ・ショーは私が車でグラウンドまで送ってあげています。私は彼のタクシードライバーです(笑)」

── 食事についてはいかがでしょうか? 慣れるのに少し時間がかかるかもしれませんが。

「いえ、食事は素晴らしいです。イングランドでも日本食が好きでした。バーベキューも選手たちと楽しんでいます。意外だったのはイタリア料理が日本でも人気だったことです。思っていた以上にポピュラーで驚きました」

── サポーターのみなさんも応援してくれるはずです。どんな愛称で呼ばれたいですか?

「チームのみんなは『ディーノックス』と呼んでくれています。イタリアなどではディノ(Dino)の最後の「o」を伸ばして『ディノ―』とよく呼ばれていました。どちらの愛称で声をかけてくれても大丈夫です」

── サポーターのみなさんにはどんなプレーを見せたいですか?

「まだまだこれから改善する必要がありますが、いいラインアウトをお見せしたいです。ランニングプレーもぜひ見てほしいですね。私がラグビーをしている大きな理由のひとつがサポーターの存在なので、みなさんとまた会える日を楽しみにしています」


ワールドカップを経験してもさらなる高みを目指し続けるLOディノ・ラムにとって、日本でのプレーや生活は大きなチャレンジだ。しかしそれを心から楽しんでいる様子が、インタビューと表情からうかがうことができた。

アタックの起点となるラインアウトで、彼が文字通り飛躍する瞬間が待ち遠しい。

(取材・文/齋藤龍太郎)

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