NEWSニュース

2025.10.09
INTERVIEW

デーブ・ディロン アシスタントコーチ インタビュー

チームとしてディフェンス面でよりアグレッシブに

リーグワンの前身、トップリーグの2018-2019シーズンで神戸製鋼コベルコスティーラーズ(現・コベルコ神戸スティーラーズ)をヘッドコーチとして優勝に導き、その名を日本中に轟かせたニュ―ジーランドの名コーチ、デーブ・ディロンが横浜キヤノンイーグルスのアシスタントコーチに就任した。

NECグリーンロケッツ(現・NECグリーンロケッツ東葛)の強化にも携わった日本をよく知るディロン コーチは、スーパーラグビー(南半球リーグ)でも辣腕を振るった。経験豊富な彼のインタビューは、ディフェンス面を中心にイーグルスを強化していく強い意志を感じる内容となった。


■選手から「もっと成長したい」という思いが強く伝わってくる

── 最初に、イーグルスのアシスタントコーチ就任に至った経緯をうかがいます。

「レオン(・マクドナルド ヘッドコーチ)とはもともとニュージーランドで接点がありました。私がハイランダーズのコーチ、レオンがブルーズのヘッドコーチを務めた時期は対戦も経験しました。共通の友人がいることもあり『イ-グルスのコーチングに興味があるか』と聞かれ、今回の就任に至りました」

── 肩書きはアシスタントコーチで、ご担当はディフェンスと聞きました。

「はい。私はディフェンスにフォーカスしており、ディフェンスに対して情熱を持っています。ただし、ディフェンスコーチとしていい仕事をするためにはアタック、セットピースなど試合中のすべてのことを十分に理解しておかなければなりません」

── ヘッドコーチを務めていたスティーラーズでは、特に優勝したトップリーグ2018-2019シーズンはアタッキングチームだった印象がありますが、やはりディフェンスにも注力していたのでしょうか?

「優勝したシーズンはベストなアタックとベストなディフェンスの両方が備わっていました」

── アタックとディフェンスの両方のバランスが大事なのですね。

「その点はレオンの考え方と共通していて、試合はストラクチャー(セットピース後など攻守の陣形が整った状態)の場面とアンストラクチャー(逆に整っていない状態)の場面とで状況が大きく異なります。アタックからディフェンス、ディフェンスからアタックにすぐ切り替えられるチームにする必要があります」

── ニュージーランドでの経験はもちろんですが、やはり日本のチームでコーチを務めた経験はディロン コーチにとって大きなアドバンテージになりそうです。

「異なる文化や言語のなかで仕事する、ということを意識する必要がありますので、すでにそういう環境を経験していることはアドバンテージだと思っています。スティーラーズの4シーズンだけでなく、グリーンロケッツでの2シーズンの経験も生きています」

── 現在のイーグルスでもともと接点があった選手もいますね。

「FL安井龍太(元スティーラーズ)やFLビリー・ハーモン(元ハイランダーズ)、あとはグリーンロケッツ時代にSO田村優とも接していますし、複数の選手のことを知っています。ビリーは彼が17歳のときに出会いましたが、当時も、そしてハイランダーズでも指導しています」

── イーグルスでのコーチングの感触はいかがですか?

「リスタートという感覚を持っています。今シーズンは新しい選手、新しいコーチが入るなどチームは変化しており、大きなリセットとなります。それでも選手たちはしっかり適応しています。高いターゲットを設定していますので非常に楽しみです」

── ディロン コーチはスティーラーズでウェイン・スミス総監督(当時。ニュージーランド屈指の指導者)と一緒にコーチングしていましたが、彼からはどんなことを学んだのでしょうか?

「一番の学びとなったのは、どんな状況でも自分のベストを出すために成長することです。そして選手たちと強い関係性を持つことの重要性についても学びました」

── その点はやはりディロン コーチの持っているポリシーとも共通していますか?

「はい。今のイーグルスのコーチたちも同じマインドセットを持っています」

── イーグルスの試合の映像は来日前にチェックしましたか?

「ニュージーランドで毎週見ていました。日本でコーチをやっていたので、リーグワンとその文化が大好きなのです。イーグルスの試合は見ていてとてもわくわくしました。いいラグビーをしているチームだなと思いながら見ていたのですが、ゲームをいい形でフィニッシュまで持っていけなかったとも感じていました。60分くらいまではいい試合をしていても最後の20分で負けてしまうケースが多かったですね」

── その60分のパフォーマンスを80分まで継続させるためには、どのような取り組みが必要でしょうか?

「カルチャーやマインドを変えていく必要があります。それをいかにして変えていくか、しっかり学べる環境を作れるか、そしてどのようにして練習以上のベストを出すか、といったことが重要になってきます。スティーラーズを指導した1年目と同じくリセットが必要なチームだと感じていて、当時と同じ感覚を持っていますので楽しみです」

── そのようなコーチングを進めるにあたり、選手のマインドセットについてはどのように感じていますか?

「どの選手からも『もっと成長したい』という思いが強く伝わってきます。そして『勝ちたい』気持ちも感じています。新しい要素や変化が多いシーズンですが、それに対していいリアクションをしてくれていますね」

■どうすれば選手のベストを引き出せるか

── 昨シーズンまではニュージーランドのハイランダーズのディフェンスコーチでした。

「スティーラーズとの契約が終了した後、ハイランダーズに行くことになりコーチを務めました」

── ハイランダーズではジェイミー・ジョセフ前日本代表ヘッドコーチのもとで、どんなことを学びましたか?

「(本拠地)ダニーデン周辺の若い選手たちがたくさんいるチームだったので、コーチとしていい時間を過ごしました」

── それ以外にも幅広くコーチングされてきたと聞きました。

「今年の7月には友人から声がかかり、U20ニュージーランド代表の指導を行いました」

── 多方面からからコーチングを頼まれるのはうれしいものですか?

「はい。コーチングを愛していますので。特に17歳から21歳の若い世代を指導するのが好きです。U20ニュージーランド代表のコーチとしてもいい時間を過ごすことができました」

── 少しさかのぼると、2013年にはチーフスの若いタレントの発掘を担当したそうですね。

「当時のチーフスのヘッドコーチで現在スティーラーズを指揮しているデイブ・レニーとのつながりもあって、4年間その役割を担っていました。コーチングに関して多くのことを学んだ、自分の人生の中でも非常に大事な時間でした」

── SOダミアン・マッケンジー、HOサミソニ・タウケイアホをはじめ現在ニュージーランド代表として、またチーフスでも引き続き活躍中の選手を多数発掘しました。来日するCTBアントン・レイナートブラウン(スティーラーズ)やFBショーン・スティーブンソン(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)もそうですね。

「やはりコーチとして大事なのは、彼らのような(当時)若い選手のマインドになって、彼らにとって何が必要なのか、どのようにしてサポートしていくのか、ということです。それはコーチとして決して忘れてはいけないことだと考えています」

── 選手たちに対して愛情と厳しさを持って指導してきたわけですね。

「はい。100%、そのとおりです。まずは選手と関係性を築くことが大事で、選手をしっかりと理解すること、どうすれば選手のベストを引き出せるか、ということをやってきました」

── イーグルスでもそのようなコーチングをすることになります。

「個人的にもこのような美しい国で、そしてコーチングのしやすい環境で新たな章を迎えました。日本に戻ってくることができてとても幸せです」

── チーフスで一緒だったデイブ・レニー ヘッドコーチ率いるスティーラーズとも対戦します。

「仲がいいので対戦を楽しみにしています」

■ディフェンスを愛してしっかりとリードできるように

── マクドナルド ヘッドコーチとディロン コーチはニュージーランドラグビーのコーチングメソッドを駆使してきましたが、そこに南アフリカ代表のSHファフ・デクラーク選手、CTBジェシー・クリエル選手が開幕直前に加わることになります。

「現在、彼らは代表活動に専念していますが、すでにレオンが彼らとしっかり話し合いコミュニケーション取っています。彼らもイーグルスの文化を作ってくれる重要な選手たちです。こちらでのことも共有できていますので、いい状況だと考えています」

── ディフェンスのリーダーグループには長年の付き合いになるFLハーモン選手が入っています。

「はい。彼を真っ先に入れました。他にはCTB梶村祐介、HO中村駿太、FL古川聖人が入っています」

── ディフェンスにおいてどのようなことを彼らに期待していますか?

「まずはディフェンスを愛してしっかりとリードできるようになる必要があります。それも試合中にリードしなければならないので、そのあたりにも期待しています」

── 開幕前の大事なプレシーズンは、どのような時間にしたいですか?

「チームとしてディフェンス面でよりアグレッシブになってほしいですし、そのようにしていきたいと考えています」


過去のあらゆる経験をイーグルスに注ぎ込み、鉄壁のディフェンスを築き上げる強い意志を示したデーブ・ディロン アシスタントコーチ。同時に磨きをかけようとしているアタッキングラグビーと融合すれば、自ずと頂点が見えてくるはずだ。

(取材・文/齋藤龍太郎)

  • この記事をシェアする
  • Twitter
  • Facebook
  • LINE