
クレイグ・スチュワート アシスタントコーチ インタビュー
「指導した選手の活躍こそが私の大きな喜び」
2017年度までに全国大学選手権9連覇という前人未到の大記録を達成し、昨シーズンも日本一の座に返り咲いた名門、帝京大学ラグビー部。その強さを2012年から陰で支えていたのが、当時の学生たちにスキルを伝授したクレイグ・スチュワート コーチだ。
2017年からは4シーズンに渡りトヨタ自動車ヴェルブリッツ(現トヨタヴェルブリッツ)のアタック兼BKコーチを務め、トップリーグのラストイヤーはチームの4強入りに貢献。長年、選手の育成に努めてきた確かな手腕を持つ名コーチは、このほど横浜キヤノンイーグルスを新天地として選んだ。
帝京大学やトヨタで経験を積み日本代表まで上り詰めた選手を筆頭に、数多くのプレイヤーを育て上げてきたクレイグ コーチがイーグルスで目指すものとは何か。全体練習初日にインタビューした。
(取材日:2022年9月12日)
■かつて指導した選手との「素晴らしい再会」

──ご出身はニュージーランドですね。
「はい。ハミルトンです。ニュージーランドではすべての子どもたちがオールブラックスになることを夢見ています。もちろん私もそうで、主にSHとしてプレーしていましたが、プレイヤーとしては平均的なレベルでした。ただ、試合を見ることが本当に大好きで、試合中に起きていることを見て考えるのが好きでした。25歳か26歳の頃にコーチを志しました。初めてコーチになったのは地元のアマチュアクラブで、カナダ代表のスキルコーチも務めたこともありましたが、初めてトップ選手のコーチングを行ったのは帝京大学でした」
──帝京大学では連覇に貢献されました。
「2012年から2015年までの帝京大学での指導経験は、私のコーチングキャリアの大きなスタートとなりました。岩出雅之監督(当時)の下で毎日練習し、毎日選手たちとコミュニケーションをとるなど、素晴らしい経験を積みました。イーグルスには当時指導した選手たちがいますので、素晴らしい再会となりましたね。彼らもうれしく思ってくれていると思います」
──今や日本代表にも多くの教え子がいますね。
「指導した選手の活躍こそが私にとっての大きな喜びです。それも国の代表になるということは私の最大の喜びであり、彼らの活躍を非常にうれしく思っています」
──その後、トヨタでは世界的名将の下でコーチングされました。
「ジェイク・ホワイト(元南アフリカ代表ヘッドコーチ)とは3シーズン、スティーヴ・ハンセン(元ニュージーランド代表ヘッドコーチ)とは1シーズン、一緒に仕事をしました。もちろん彼らから多くのことを学びましたが、経験のある優秀な選手たちから学んだことも非常に多かったです」
■選手のスキル向上に「情熱を注いでいる」

──そして今シーズン、イーグルスのアシスタントコーチに就任しました。全員が集まっての初練習となりましたが、手応えはいかがでしたか?
「選手たちのエナジーがあふれ、非常にエキサイティングでした。新たなシーズンに向けて期待に胸を膨らませています」
──永友洋司GMや沢木敬介監督からどのような仕事を期待されているのでしょうか?
「まずはチームに対してポジティブに貢献することです。そして私が長いコーチング歴の中で経験してきたことをアシスタントコーチとしてチームに反映し、貢献することを期待されていると思います」
──イーグルスでは「アシスタントコーチ」ですが、特に注力している指導分野をお教えください。
「私の役割はスキルコーチです。選手のスキルを向上させることに情熱を注いでいます。それを判断力やキックパスの精度などにつなげます。そのためには選手をいろいろな状況下に置くことが重要で、様々なトレーニングに取り組みつつ、試合のシチュエーションを想定して実際に勝てるようにしていくセッションを用意していきます」
──練習を見ましたが、全体練習初日とは思えない強度とスピードでした。
「試合では強度の高さ、スピードの速さが非常に重要です。私はその点を重視しており、各選手のスキルを上げ、ハイスピードの試合展開をできるようにすることを狙いとしています」
──新キャプテンのCTB梶村祐介選手、SO田村優選手は日本代表候補合宿に参加中で、今は不在です。
「彼らとは合宿に行く前にスキルセッションでコミュニケーションを取りました。田村選手は試合の理解度が極めて高いワールドクラスの選手です。梶村選手も非常に高いスキルを持っており、キックバスの精度も高いので期待しています」
──今季新たに加入し、現在は南アフリカ代表として活躍中のSHファフ・デクラーク選手についてはどんなプレイヤーだと感じていますか?
「もちろんワールドクラスの選手です。彼のプレーはエキサイティングですし、フィールド外でも素晴らしい選手だと思います。彼のプレーによってイーグルスがよりクオリティーの高いラグビーを展開できるようになると期待しています」
■今シーズンの個人的目標は「日本でベストのアシスタントコーチになる」こと

──クレイグ コーチが選手たちに求めていることを教えてください。
「まずはフィットネスと高いスキル、この2つがあれば高い判断力につながります。そのためには質の高い練習をすることと、自分のスキルを信じることが大事です。それがチームにいい影響をもたらします。スタッフ、コーチの水準も高いので、各選手が決意と高いモチベーションを持ってやれるかどうかも重要となります。チームの一員になってから強く感じたことですが、やはりイーグルスを強くすることが私にとってのモチベーションになっています。このチームをベストの状態にするために自分には何ができるか、それを常に考えていくことが大事だと思っています」
──古巣のトヨタも含め、全チームに勝つ必要があります。今シーズンに向けての決意、目標をお願いします。
「今シーズンの私の目標は、日本でベストのアシスタントコーチになることです。そして沢木監督に対して私に何ができるかを突き詰め、『選手たちのスキルを上げる』という自分が掲げる目標の達成を目指していきます。選手のスキルをベストに持っていくことが私の役割である、という心構えで臨みます」

これまでの豊富な経験、知見を活かし、イーグルスの選手のスキルを飛躍的に向上させることに心血を注ぐと誓ったクレイグ・スチュワート アシスタントコーチ。チームが目指すアタッキングラグビーの遂行に欠かせない高いスキルがすべての選手に備われば、勝利は自ずと近づいてくる。
今シーズンの選手たちのスキルや状況判断力の成長、それによりさらにたくましさを増すであろうイーグルスの雄姿にぜひ注目していただきたい。
(インタビュー&撮影:齋藤 龍太郎)