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2022.09.26
INTERVIEW

ユーティリティーBK ルテル・ラウララ選手インタビュー

ユーティリティーBK ルテル・ラウララ選手インタビュー

ユーティリティーBK ルテル・ラウララ選手インタビュー

「自分の強みを意識しながら練習に取り組んでいる」

オールブラックス(ニュージーランド代表)経験者の兄たちをそばで見ながら自身もラグビーの道を歩んできたユーティリティーBKルテル・ラウララ。地元ニュージーランドで活躍後に来日し、NTTコミュニケーションズシャイニングアークス(現、浦安D-Rocks)、豊田自動織機シャトルズ愛知を経て、今季は横浜キヤノンイーグルスへ活躍の舞台を移した。

複数のポジションをこなすスキルフルなラウララは、今季全員が初めて揃った取材日の練習でもラン、パス、キックを自在に繰り出しはつらつとプレーしていた。周りとのコミュニケーションを得意としているという彼の、今季のターゲットとは。生い立ちやラグビー歴、加入したイーグルスの印象なども含めて話を聞いた。

(取材日:2022年9月12日)




■兄のプレーに触発され「自分もそうなりたいと思うようになった」

──お生まれはニュージーランドですね。

「はい。ニュージーランドのクライストチャーチ生まれで、サモア育ちです。コロナ禍後はニュージーランドには何回か帰国したのですが、サモアには3年間帰れておらず、母とも3年会えていません」

──サモアとニュージーランドの両方でU20代表に選ばれています。

「U20代表を経験した当時から今まで、いろいろなことを学び続けています。自分がいいと思ったことも、コーチから『それは違う』と指摘されたことも全部ひっくるめて自分の糧となっており、それによってスキルも経験値も上がっていくことは、今のイーグルスでのプレーにもいい影響をもたらしています」

──NPC(ニュージーランド州代表選手権)でも活躍していました。

「2014年にカンタベリー、2016年にカウンティーズ・マヌカウでプレーしました。2016年にはスーパーラグビーのチーフスともデベロップメント(育成部門)で契約しました。当時チーフスにいた兄のPRネポ(・ラウララ。ニュージーランド代表PR)とはスーパーラグビーでは一緒にプレーできませんでしたが、2017年のブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ(4年に1度結成されるイングランド・スコットランド・ウェールズ・アイルランドの4協会の代表チーム)戦は一緒に出場しました。自分の家族と一緒にプレーすることは誇りですし、家族も誇りに思ってくれているはずです」

──ネポさんの上のお兄さん、ケイシー・ラウララさんはニュージーランド代表CTBでした。ポジション柄、ケイシーさんから受けた影響も大きかったのではないでしょうか?

「ケイシーは自分が育っていく中で強いインスピレーションを受けた一人です。僕はラグビーをする前にゴルフをやっていたのですが、カンタベリー、クルセイダーズ、そしてオールブラックスでのケイシーのプレーを見て、自分もそうなりたいと思うようになりました」

■「SO、FBに集中」することで「チームを理解できるようになる」

──今季、全員揃っての初練習となりましたが、チームの雰囲気をどう感じていますか?

「とてもユニークなチームだと感じています。シャイニングアークスで一緒だった(アマナキ・レレイ・)マフィ、喜連(航平)、(小倉)順平は知っていましたが、それ以外の選手とも交流ができており、今はとても楽しんでいます」

──マフィ選手、喜連選手、小倉選手とは久しぶりの再会だったと思います。どんな話をしましたか?

「シャイニングアークスでのいい思い出を語り合いましたが、これからどんなチームを作っていくか、ということについても3人と話しました」

──イーグルスに対しては元々どんなイメージをお持ちでしたか? 印象の変化もあればお聞かせください。

「今のイーグルスは2年前とは全然違うチームになりました。プレースタイルが変わり、スピードもテンポも速くなっています。向上したイーグルスを目にして、僕もこのチームでプレーしたいという思いが芽生えてきました。実際にイーグルスに入ってみても以前の所属チームと比べるとスタンダードが高く、スピードも高い水準にあります。とてもタフで、レベルの高いチームだと感じています」

──ユーティリティーBKとして様々なポジションでプレーできるラウララ選手ですが、主にどのポジションでプレーすることになるでしょうか?

「元々はCTBなのですが、SH以外のBKは全てカバーできます。沢木監督からはSO、FBに集中するように言われており、その2つのポジションを務めることでイーグルスというチームをよく理解できるようになると思っています。チームとしてやるべきことはトライの獲得です。そのためにも、練習では主にSHからパスを受けてボールキャリーし、スペースがあるところへ攻めていく、というプレーをしています」

──ポジション柄、周りとのコミュニケーションも大事かと思います。

「SOの順平、喜連、(永富)健太郎とは練習が終わった後にディスカッションしています。SH(荒井)康植ともシチュエーションに応じた議論をして、どうすれば向上できるか話し合うなど常にコミュニケーションを取っています」

■日本のファンの「ラグビーへの熱さに驚いた」

──沢木敬介監督をはじめとするコーチングスタッフからはどのようなことを要求されていますか?

「スタンダードの高いプレーはもちろん、いろいろなことを学ぶよう求められています。コーチらとコミュニケーションをとりながら、自分の弱みや向上させないといけない点をディスカッションして改善していきたいと考えています」

──実際に沢木監督の指導を受けて、どのように感じていますか?

「沢木監督はしっかりとしたオーナーシップ(ミッションに対して主体的に取り組む姿勢)の確立をしようとしています。そして、イーグルスとしてのプランを遂行するために時間をかけて選手に様々なことを教え込んでいます。もしフィールド上でミスがあったとしてもその場で選手にフィードバックして、そこからまた学んでいくというスタイルを築き上げています」

──クレイグ・スチュワート コーチの指導も受けていますね。

「共に楽しく過ごしています。彼とは早い段階からコミュニケーションをとり、キックやパスを教えてもらっています。彼はニュージーランド人なのでコミュニケーションが取りやすいという点も大きいですね。それによって自分の強みが把握できるのもいいことだと思っています」

──そのラウララ選手自身の強みとは何でしょうか?

「まずはグラウンドにおけるコミュニケーション能力です。そしてボールキャリーですね。あとはディフェンスやキックも自分の強みだと思っています。自分の弱みも理解していますが、それ以上に自分の強みを意識しながら練習に取り組んでいます」

──これまでの所属チームも同様だったと思いますが、様々な国籍、文化、ルーツを持った選手たちがいます。彼らとともにプレーすることについてどう感じていますか?

「外国人選手とは英語で話すので特に問題はないのですが、やはり難しいのは日本人選手とのコミュニケーションです。ただ、これまでも日本の複数のチームでシーズンを過ごしてきた経験をもとに、フィールド上ではラグビーの専門用語を使って密にコミュニケーションを取っています。日常会話は別として、その点ではうまくコミュニケーションが取れていると思っています」

──ラウララ選手の今季のターゲットをお願いします。

「最大の目標はリーグワンで優勝することですが、もし自分が23人のメンバーに入れなかったとしても、チームの一員として外側からメンバーを鼓舞していきたいです。そして最終的にチームを優勝させることを目標に据えています」

──最後に日本のラグビーファンの印象、イーグルスのファンへのメッセージをお願いします。

「来日するまではラグビーが日本でここまで熱狂的に支持されているスポーツとは知らず、ファンがラグビーに熱いことにとても驚きました。日本のファンは選手のこともよく知っていますので、その点も驚きでした。みなさんの応援に応えられるようがんばりたいと思います」



選手やコーチと密にコミュニケーションを取りながらグラウンドで才覚を発揮し、日々さらなる向上を目指しているルテル・ラウララ。開幕までによりチームにフィットし、複数のポジションへの適応が深まれば、試合で目にする機会も増えることだろう。

練習で見せていたはつらつとしたプレーを、必ずや公式戦でも披露してくれるはずだ。

(インタビュー&撮影:齋藤 龍太郎)

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