「イーグルスの3番のジャージーを着たい」
強力なスクラムを武器とする強豪、東京サントリーサンゴリアスでタイトヘッドPRとして活躍してきた祝原涼介選手は、社会人5シーズン目の今季、横浜キヤノンイーグルスへの移籍を決断した。サンゴリアスでともにスクラムを組んできたHO中村駿太選手と、図らずも同時の移籍となった。
以前から沢木敬介監督の指導を強く希望していたという祝原選手にとって、その薫陶を初めて受けることとなったシーズンだ。コーチ陣や周りの選手から刺激を受けながらさらなる成長を誓う祝原選手はどのようにイーグルスに貢献したいのか。その胸中を聞いた。
■古巣のサンゴリアスには勝たなければ
──移籍して実際にキヤノンスポーツパークのグラウンドに立ったのはいつでしょうか?
「7月から練習を始めて、約4カ月が経ちました。素晴らしい環境で日々練習させてもらっています。大学の先輩、後輩、東京サンゴリアスの元チームメイト、U20日本代表で関わった選手もいますので、すんなりチームに溶け込むことができました」
──HO中村駿太選手も同時に東京サンゴリアスから移籍してきました。
「よくしてもらっている先輩なので、また一緒にプレーできるのはうれしいですね。コミュニケーションも取りやすいですし、ずっと一緒に試合をしてきたことでプレーの選択もだいたいわかっているので、コンビネーションができています。キャプテンのCTB梶村祐介さんも大学時代からとてもお世話になっている先輩で、移籍する前も一緒にご飯を食べながらいろいろな話を聞かせてもらいました。その話の中で、チームの環境やスタイルが僕にフィットするんじゃないか、という話もしていただきました」
──沢木敬介監督とはサンゴリアスでは入れ違いとなりました。
「はい。ただ、敬介さんとは僕がサンゴリアスに入る前に『どういう選手でありたいのか』といった話をしていましたし、敬介さんの下でやりたいという思いで入りました。結果的に入れ違いになってしまいましたが、こうして敬介さんのチームでプレーできることになり、今は本当にいろいろなことを学んでいます。練習もハードなので成長できているなと感じています」
──サンゴリアスは昨シーズンの3位決定戦でイーグルスに26-20で敗れました。サンゴリアスとしては残念な結果でしたが、途中出場した祝原選手はどのように感じた試合でしたか?
「負けてチームを去るのはもちろん嫌なので勝ちにいったのですが、結局負けてしまいました。本当に悔しい思いをしましたが、敵ながらいいチームだなと感じましたね。移籍したことによりリベンジはできなくなりましたが、今は『古巣のサンゴリアスに勝たなければ』という思いですし、自分ができることをしっかりやってイーグルスのために貢献したいと思っています」
──サンゴリアスもスクラムに力を入れているチームですが、3位決定戦のスクラムにおけるイーグルスからの圧はフロントローとしてどう感じましたか?
「3位決定戦はあまりスクラムを組んでいませんが、日産スタジアムや味の素スタジアムで対戦した時は圧を感じましたし、モールでもかなりプレッシャーを受けた記憶があります。イーグルスのモールは昨シーズンのリーグ戦で一番強かったですね。チームとして武器にしていると感じました。自分もモールでの働きを強みにしている部分なので、このチームで自分の力を生かしていきたいです」
──祝原選手は、沢木監督をはじめチームからどのようなことを期待されているととらえていますか?
「やはりセットプレーの安定と相手へのプレッシャー、そしてワークレート(仕事量)ですね。PRでは走れる方だと思っているので、ボールに関わったり見えない部分で仕事をしたりという自分の強みを生かしていきたいと敬介さんと話をしています。そしてオフザボール、つまりボールを持っていないところですべき仕事を期待していると言われていますので、そこでしっかり仕事できるように取り組んでいきたいです」
──ちなみにサンゴリアス時代は社員選手だったのでしょうか?
「はい。移籍した今季はプロ選手として1年目ということになります。これまで社員選手としてやってきた社業の時間がゼロになったので、今その時間はトレーニングや体のケアなどで有意義に使えていると思います。セカンドキャリアについて考えるための勉強にも時間を充てています」
■開幕戦でワイルドナイツに勝っていい流れを作る
──充実した日々を送られている祝原選手にとって、イーグルス1年目の開幕戦が迫ってきました。相手は埼玉パナソニックワイルドナイツですが、やはり先発で出たいという思いはありますか?
「もちろん開幕戦先発を狙っています。そのためにはプレシーズンマッチでパフォーマンスをしっかり出さなければなりません。ワイルドナイツは昨シーズン準優勝チームですが、3位のイーグルスはチャレンジャーとして開幕戦で勝って、いい流れを作らないといけないと思いますし、メンバー選考のコンペティションに勝って3番のジャージーを着たいと思っています」
──サンゴリアス時代からワイルドナイツは特別な存在でしょうか?
「もちろん強いチームですし、ペナルティが少なくミスをしないチームです。僕らもベースを上げていく必要がありますし、隙を与えるとやられてしまうので、もっとスキルを上げて、細かいミスをなくし、しっかりとゲームを作らないといけません。イーグルスにはいいBKの選手が揃っているので、僕らFWがセットプレーでいいボールを出すなどしっかり仕事する必要があります。そうすればBKがいいゲーム展開をしてくれると信じています」
──まずはセットピース、ということですが、そういう中で得意のボールキャリーでも見せたいという気持ちもあるわけですね。
「はい。自分の武器である以上はしっかりと出さないといけません。ただ、セットプレーはフロントローにとって一番の仕事だと思うので、まずはそこですね。ボールキャリーできる選手は何人もいますので、自分にしかできないことをしっかりやっていきます」
──古巣のサンゴリアスとは第11節(2024年3月23日)に対戦しますが、やはり相手を意識することになりそうでしょうか?
「正直、まだわかりません。でも意識はすると思いますし、これだけ元サンゴリアスの選手がいれば向こうも意識するはずです。サンゴリアスにいた時も、イーグルスは何かやってくると思わせるチームでした。そう思わせるようなチーム作りをやっていますので、ファンのみなさんにも本当に楽しんでもらえると思います」
──プレシーズンはここまで全勝で来ています。(取材時)チームの雰囲気はいかがですか?
「すごくいいのではないでしょうか。練習でもいいプレッシャーを感じますし、強度も高いです。シーズン中も、序盤で勝って最後に負けてしまったら意味がありませんので、プレーオフで勝てるようにチームが試合のたびにどんどん成長していけばいいと思っています。その中で自分の役割を果たすことが大事だと考えています」
新天地で目指すのは、自身の強みを生かし勝利に貢献することだ。それを積み重ねた先には、サンゴリアス在籍中には果たせなかった「優勝」がある。
イーグルスにとっても悲願の瞬間をスクラムの最前線から目指すタイトヘッドPRの活躍に、開幕戦からぜひ注目していただきたい。
(インタビュー:齋藤龍太郎)