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2024.06.10
INTERVIEW

沢木敬介監督シーズン総括インタビュー

沢木敬介監督シーズン総括インタビュー

沢木敬介監督インタビュー「勝ち切るチームになるために『PLUS ONE』が必要」

チーム史上最高成績の3位となった昨シーズンを越えて、決勝の舞台に立ち、優勝する。それがジャパンラグビー リーグワン2023-24シーズンの横浜キヤノンイーグルスのターゲットだった。

プレーオフトーナメントへの2シーズン連続での進出までの道のりは、他チームの強化が進んだこともありさらに険しいものになったが、混戦を戦い抜いて今シーズンも4位通過に成功した。しかしその段階で満足している選手、コーチ、関係者は誰一人としていなかった。

昨シーズンは成し遂げられなかった準決勝突破。健闘したイーグルスの目の前まで国立競技場が迫ったが、わずか3点差で敗れ、今シーズンもその夢は潰えた。3位決定戦にも惜敗し、昨シーズンの順位を1つ下回る4位で全試合を終えた。

準決勝をはじめとする激闘を終えた沢木敬介監督が肌で感じた今シーズンのイーグルスの成長とは。さらに上のステージに上がるためには何が必要なのか。リーグワン全日程終了後に話を聞いた。


■プレッシャーの中で戦ったことがチームの財産に

── 今シーズンも大変お疲れ様でした。まずは全16節のリーグ戦から振り返っていただきます。10勝6敗で4位と、2シーズン連続での4位通過となりました。

「しっかりとプレーオフへ進出することを2シーズン連続でできたのは、まさしくみんなががんばってきた結果だと思っています。そこからもう一つ上のレベルに達することが今後は大事になります」

── 2022-23シーズンのトップ4入りと比べて、手応えの違いはありましたか?

「昨シーズンはプレッシャーがなかったですからね。今シーズンはそういう(2シーズン連続でのプレーオフ進出は絶対という)プレッシャーの中で戦いましたので、それ自体がチームの財産になっていると感じています」

── 他チームからの突き上げもあるなか見事プレーオフトーナメント進出を果たし、準決勝を迎えました。埼玉パナソニックワイルドナイツに17-20で惜敗しましたが、沢木監督は試合後の会見で「今シーズンのベストゲーム」と評されていました。

「イーグルスが持っている力は出し切った試合でした。ただ、あのような展開で勝ち切れるチームにならないといけません。そのためにはいろいろな要素が必要です。そこで、来シーズンのスローガンは『PLUS ONE』としました。いろいろな面で『PLUS ONE』が必要だと考えていますし、しっかりとレベルアップさせていく必要があると考えています」

── その準決勝も含め、いい準備をして臨むことができた試合が増えたのではないでしょうか?

「準備がうまくいった週に変な試合をしてしまうこともありましたし、逆によくない練習をした週にいい試合をすることもありました。ですから今後はより一貫性をもって取り組んでいかなければなりません。そもそも、準備の段階でしっかりとゲーム(さながら)のプレッシャーを選手にかけなければ、絶対にいい試合はできません。その点で言えば(準決勝の前は)いいプレッシャーがかかっていたと思います」

── 惜しくも敗れた準決勝の次は、東京サントリーサンゴリアスとの3位決定戦でした。最後の相手の逆転トライで33-40と勝ち越され、4位でシーズン終了となりました。

「あれは相手に崩された結果のトライではなく、自分たちのミスに起因するものでした。試合内容としては我々がほとんど支配していましたからね。ただ最後は結果を出す必要がありますし、あのようなゲームをもっと楽に勝てるようにならないといけません。まだまだそういうことを学ぶ必要があります」

── 33-33の同点から時間を消化して延長戦突入を狙うのではなく、勝敗を決するトライを獲りにいったことを監督は評価されていました。

「同点では意味がありませんからね」

── 3位決定戦の翌日に行われたプレーオフ決勝、埼玉パナソニックワイルドナイツvs東芝ブレイブルーパス東京(20-24で逆転勝利したブレイブルーパスが優勝)をご覧になって感じたことがあればお願いします。

「前半のワイルドナイツの勢いをブレイブルーパスが止めたのが一番の勝因ではないでしょうか。何度かあったワイルドナイツのトライチャンスでトライを獲っていれば点差が離れていった可能性もあります。ファイナルラグビー(負けたら終わりのシチュエーションで勝ち切るラグビー)は、どうやって自分たちが勢いを作るかにかかっています。そういう場面はゲーム中に何回もあるのですが、ブレイブルーパスがそこをうまく引き寄せたという印象を受けました。お互い力のあるチームですが、アンラッキーなミスが得点につながったり、あるいはシンビン(10分間の一時的退出)につながったりもしました。そういう時の運もあったと思います」

■3位決定戦での悔し泣きに今シーズンの成長がある

── イーグルスは3位で終えた昨シーズンからひとつ順位を落とす結果になりましたが、順位だけでは測れないチームの成長を感じましたか?

「そもそもの目標設定が低いと、おそらく『俺ら、めちゃくちゃ成長したな』と感じると思うのですが、それは一種の満足度に過ぎません。ですから私も選手も『ものすごく成長した』という感覚はないと思います。3位決定戦で負けて悔し泣きしていたのですから、満足していたとは言えません。ただ、まさにそういうところに今シーズンの成長があるのではないでしょうか」

── 他にもポイントになった試合は数多くあったと思います。たとえば第6節のコベルコ神戸スティーラーズ戦はカテゴリーCの選手が負傷により不在となりましたが、27-31と勝利まであと一歩という展開になりました。

「あの試合も勝ち切らなければなりませんでした。ですから、そのレベルに行かなければならない、ということです」

── また、今シーズンは新たなコーチの加入や担当変更などコーチング体制が大きく変わったシーズンでした。

「コーチは選手とある程度の信頼関係がないと成り立たない存在です。選手の成長を感じさせなければならず、チームが成長するために必要な人材だと思わせるコーチでいなければなりません。もちろん結果も出さなければならないので、厳しい世界だと思います」

── 今シーズンのチームスローガン「MASTER OUR BELIEF」、つまり「我々の信念を究める」の達成度についてはいかがでしょうか?

「一人ひとりがもっとラグビーに取り組んでいかないといけないと感じたシーズンでした。おそらくそういうところが(上位チームや敗れたチームとの)ちょっとした差につながっているのではないかと考えています」

── 最後に、いよいよ日本代表の活動が始まりますが、イーグルスからはPR岡部崇人選手が唯一選出されました。

「うれしいですね。(岡部選手を含む)今選ばれているジャパンの選手がイングランド戦(6月20日)でどういうパフォーマンスを見せるのか、ジャパンがどんなラグビーを見せてくれるのか、非常に興味があります。やはりテストマッチは結果にこだわらなければなりませんので、楽しみにしています」


目標は達成できなかった。しかし4位でシーズンを終えたことに満足することなく「悔しい」と全員が感じられるようになったことは、イーグルスにとってはたしかな成長であり、収穫だったと言えるだろう。

苦い経験を活かした先にあるのはまだ見ぬ決勝の舞台、そして歓喜の瞬間だ。悔しい経験は十分してきた。真の意味での結果が問われる来シーズン、『PLUS ONE』されたイーグルスの勇姿から目が離せない。

(取材・文/齋藤龍太郎)

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