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2023.12.01
INTERVIEW

PR 小川寛大選手 インタビュー

PR 小川寛大選手 インタビュー

「プレーの質が高くなれば試合に出られるはず」

JRの駅員から異色の転身だ。JR西日本レイラーズで2シーズンを過ごし、同社の駅員でもあったPR小川寛大選手は、次なる停車駅に横浜キヤノンイーグルスを選んだ。

関西の下部リーグのトップウェストAリーグから、昨季リーグワン3位のイーグルスへの移籍は、自身のキャリアにおいて極めて大きなチャレンジと言えるだろう。そんな彼を支えるのは、母校の伏見工業高校(現・京都工学院高校)ラグビー部に伝わるスローガン「信は力なり」だ。

信じた道を、彼のキャリアになぞらえるなら「レール」を突き進む心境をうかがった。


■もっと高いレベルでラグビーを続けたい

──チームのHPで「信は力なり」を好きな言葉として書かれています。イーグルスにも伏見工業高校の先輩がいますね。

「母校のことはいつも気にかけています。先日の全国高校ラグビーの京都府予選決勝はあと一歩のところで惜しくも負けてしまったので、本当に残念でした。高校の先輩に当たるFL嶋田(直人)さんともそういう話をしたばかりです」

──昨シーズンまではトップウェストAリーグのJR西日本レイラーズで活躍されていましたが、やはりリーグワンのトップチームでプレーしたいという思いがあったのでしょうか?

「そうですね。JR西日本の社員だった頃から『もっと高いレベルでラグビーを続けたい』との思いがありました。様々な条件が重なった結果、イーグルスに移籍することになりました」

──流通経済大学卒業後にJR西日本から声がかかった小川選手は、ご出身が京都ということで、地元に帰るような形になりました。

「就職活動している時の考えとして、関西に帰りたいという思いがありました。そしてJR西日本が就職先として一番行きたいところになりました」

──社員としての主な業務はどのようなものだったのでしょうか?

「JR大阪駅で駅員として働いていました。改札の近くやプラットホームで旗を持って立っている駅員さんを見たことがあると思いますが、あのような仕事をしていました」

──兵庫県神戸市にあるグラウンドに、業務終了後に向かう毎日だったのでしょうか?

「駅の勤務形態が特殊で、朝に出勤して次の日の朝に勤務が終わり、その日の夕方か夜ぐらいに練習、という流れでした」

──社業も含めかなりのハードスケジュールを2シーズンこなしてきた中で、もっと高いレベルでやりたいという思いが募ってきたのでしょうか?

「はい。もし大学から直接リーグワンのチームに行ってプロ選手になっていたら、社会人としての経験がまったくできないままでした。それを2シーズン経験できたことは大きいと感じています」

■イーグルスは一人ひとりの意識の高さが違う

──もともとイーグルスはどんなチームだという印象をお持ちでしたか?

「スキルなどあらゆるレベルがとても高く、入ると決まった時はうれしさもありましたが、本当にやっていけるのかというプレッシャーもありました」

──実際にイーグルスに入って、チームの練習強度、選手の取り組む姿勢などは感じていますか?

「一人ひとりの意識の高さが違います。練習のたびに『どの選手のどの部分がよくない』といった具体的な指摘があり、そういうところがこれまでのチームと大きく違うと感じています」

──ラグビーの魅力は激しいコンタクトにある、とチームのHPで書かれていますが、やはりコリジョンの強度の高さは感じていますか?

「そうですね。練習もかなり激しく、次の日の疲労もケタ違いです」

──流通経済大学時代はPR津嘉山廉人選手と1番と3番としてスクラムを組んできました。事前に何か話したりされたのでしょうか?

「入ることが決まってからすぐに連絡しました。CTBヴィリアメ・タカヤワ選手やWTBイノケ・ブルア選手も大学で一緒でしたし、初対面の選手たちも温かく迎え入れてくれたので、問題なく溶け込むことができました」

──期待と不安が入り混じる中ということですが、練習やプレシーズンマッチの感触はいかがでしょうか?

「2年間やってきたスクラムのスキルはそのままではまったく通用しなかったので、同じポジションの岡部崇人選手や安昌豪選手に聞きながらスキルを見て盗んだりして、日々がんばっています」

──競争相手になる選手たちと話し合いながら吸収しているわけですね。

「そうですね。特に岡部さんには余裕があればスクラムを組んだ直後に見てもらって、どこがよくなかったか聞くと具体的に教えてくださいます。かなり多くのアドバイスをもらっていますね」

──いい選手、ライバルがたくさんいるルースヘッドPRですが、プレシーズンを重ねていく中で先発1番の座を勝ち取れそうな感触はありますか?

「チームのやりたいことをもっと理解して、自分のプレーの質が高くなれば出られるだろうと思いますが、やはりその点が高い壁になっています。今が踏ん張りどころですね」

──コーチ陣からはどういうことを期待されていますか?

「もちろんスクラム、セットプレーでの貢献を期待されていると思います。自分自身もスクラムが強みだと思っていますし、他にはタックルで相手を一対一で倒せる自信があるので、その点もアピールしていきたいです」

──小川選手のキャリアにおいてターニングポイントになるシーズンだと思いますが、優秀な選手が揃う中で勝ち抜くために必要なこと、そして目標をお聞かせください。

「正直なところ現段階で先発やリザーブのルースヘッドPRの選手とはまだ力の差があると感じていますので、やはりイーグルスのラグビーに対する理解度を上げて、基礎的な体力やスキルなども上げていき、最終的にメンバー入りしたいと考えています。フィットネスについても今まで所属していたチームの中でも圧倒的に高いレベルを求められていますので、上げていかなければならないポイントです」


目指すはあくまでもレギュラーの座。しかしそこには高い壁がある。移籍という大きな決断をした小川選手にとって、今まさに挑戦の日々が続いている。

大学時代、ともにスクラムを組んだPR津嘉山選手と公式戦でスクラムを組む日が見られるか。関西仕込みの電車道のスクラムをグラウンドで目撃できる日を待ちたい。

(インタビュー:齋藤龍太郎)

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