NEWSニュース

2024.06.11
INTERVIEW

梶村祐介キャプテンシーズン総括インタビュー

梶村祐介キャプテンシーズン総括インタビュー

梶村祐介キャプテンインタビュー「本当の意味でのチーム力が試されたシーズン」

移籍3シーズン目、そしてキャプテン2シーズン目のスキッパーは、すっかり横浜キヤノンイーグルスの「顔」になった。

梶村祐介。イーグルスのキャプテンとして2シーズン連続のリーグ戦4位、プレーオフトーナメント進出に貢献したチームマンだ。もちろん4位という結果には満足していないものの、チームとしてたしかな成長を実感したシーズンになったという。

梶村キャプテンのチームと自身の重責への思い、そして来シーズンに向けて選手たちが果たすべきことなど、全日程を終えた今率直に感じていることをうかがい、シーズンを締めくくっていただいた。


■「どうすれば逆転まで持っていけたのか」を来シーズンにつなげる

── 今シーズンも大変お疲れ様でした。あらためて4位という結果をどのように受け止めていますか?

「昨シーズンの結果を越えようと臨んだので、結果としてそれを越えられなかったことは残念です。ファイナルの舞台に立って勝ちたかったという思いが強く残っています」

── なかでも17-20で埼玉パナソニックワイルドナイツに敗れた準決勝は本当に惜しい、しかし素晴らしい試合でした。

「勝つチャンスはありました。ただ、勝負どころでスコアされるなど、ワイルドナイツさんにうまくゲームを運ばれたな、というのが正直な思いです。前半、イージーな形で相手にトライを獲られてしまったこともそうですが、要所要所で向こうに流れを与えてしまいました。この試合がイーグルスの今シーズンのベストパフォーマンスだったとは思いますが、結果として負けているのでそこは真摯に受け止めないといけないですし、どうすれば逆転まで持っていけたのかなど、一人ひとりが感じたことを来シーズンにつなげる必要があると考えています」

── リーグ戦第16節から準決勝まで2週間ありましたが、チームとしてかなりいい準備ができたのではないでしょうか。

「そうですね。第16節のワイルドナイツ戦はスコアが開いて負けてしまったのですが(14-43)、若い選手がいい経験を積めましたし、その後のバイウィーク(休みの週)も含めてチームとしていい準備をして準決勝に臨めたので、本当に勝つ自信がありました」

── そして最後の3位決定戦、残念ながら梶村選手は欠場となりました。どのような思いで試合を見ていましたか?

「ほとんど自分たちがゲームをコントロールしていましたが、ちょっとしたミスやペナルティから相手に勢いを与えてしまい最後は負けてしまったので『こんな終わり方もあるんだな』という思いで見ていました。もちろん3位で終わりたかったですが、向こうもそれは同じです。ちょっとした差で勝負が決まってしまったので残念だと感じていました」

── 3位決定戦は12番に田畑凌選手が入りました。

「彼は僕と似ていて、そんなにいろいろなことができるタイプではないのですが、任せられた仕事は絶対に全うしたいと考えている選手ですし、すごくいい働きをしたと思います」

■ライザーズの献身がなければこのような結果は残せなかった

── キャプテンとしての2シーズン目を終えた今、その重責をどう感じていますか?

「プレシーズンの時点ですでに感じていたことですが、やはり大変でした。それはシーズンに入ってからも変わらず、特にリーグ戦の第8節ぐらいまでは、勝ってはいるものの内容に満足できない、すっきりと勝てないゲームが続いていると個人的に感じていました。コベルコ神戸スティーラーズ戦(第6節。27-31)、東芝ブレイブルーパス東京戦(第7節。7-27)と重要なゲームを連続して落としてしまい、でもそこからうまく修正して、クボタスピアーズ船橋・東京ベイには逆転負けしたものの(第10節。26-29)東京サントリーサンゴリアス戦(第11節。37-35)でもう一度流れを引き戻す、というアップダウンの激しいシーズンだったので、キャプテンとしてストレスはありました」

── その第11節のサンゴリアス戦、あらためて試合中にどう感じていたか聞かせてください。

「相手のトライは崩されて獲られたものではなかったのはたしかでしたが、それにしても点差が開いていたので(前半終了時点で25点ビハインド)やはり焦りはありました。最後に勝ったからこそ試合後は『プレッシャーはなかった』とコメントしてはいたものの、実際には『何とかしないといけない』いう重圧がありました」

── そのプレッシャーを見事に跳ね除けました。

「トップ4争いをするうえで非常に大きな勝利でした。ここから(第14節の三菱重工相模原ダイナボアーズ戦まで)4連勝して、内容には反省点があるとはいえ『いけるかな』という感触と勢いをようやく取り戻したと感じています。また(SO武藤)ゆらぎのような新しい選手も出てきたことで、チームとして明るい方向に進んだなと感じていました」

── 最後まで公式戦に出場できない、あるいは出場機会が限られた選手もいましたが、ライザーズ(ノンメンバー)の今シーズンの貢献はいかがでしたか?

「練習からプレッシャーを感じていました。特にFWはモールやスクラムなどでライザーズからかなりプレッシャーをかけられていたと思います。 その成果がきちんとゲームに反映されたので、やはり彼らのプレッシャーがないと僕たちは試合で実力を発揮できないと実感しましたし、ゲームと同じシチュエーションを作り出してくれたことに感謝しています」

── チーム復帰後、公式戦には出られなかったSHファフ・デクラーク選手もライザーズの一員として貢献していたようですね。

「彼がライザーズをリードしてくれました。それによって練習のプレッシャーも増しましたし、それがあったからこそ準決勝はあのような試合になったと思っています。彼らの献身がなければ今シーズンこのような結果は残せなかったと思うので、本当にチーム力が上がったなと感じています」

■継続してプレーオフに進出することが重要

── 今シーズンは接戦が多く、どのチームも順位を問わず難敵だったのではないかと思います。リーグワンのレベルの向上を感じていますか?

「そうですね。本当にちょっとした差でこの順位になった、というのが正直なところです。自分たちが下の順位になった可能性も十分ありました。ただ、こだわってやってきたからこそ僕たちはこの順位にいると思っていますので、来シーズンもチャレンジャーであることは変わりないと思っています」

── 4位という結果はもちろん望んだ結果ではなかったわけですが、2シーズン連続のプレーオフ進出は一定の成果と言えるのではないでしょうか?

「以前から言っていることですが、継続してプレーオフに進出することがすごく重要です。1回だけプレーオフに行くことはどのチームにも可能性がありますが、連続して進出するのは本当に難しいことで、力のあるチームでないと2シーズン連続では進出できないと思います。そういう意味では今シーズンもプレーオフに行けたことで、チームの地力がついてきたのかなとは感じています。昨シーズンのようにプレーオフに行けて『やった!』という思いはあまりなかったですね」

── 順位だけでは見えない成長があった、ということですね。

「チームとして間違いなく成長しています。本当にハードなシーズンでしたし、またケガ人が多く出たことで本当の意味でのチーム力が試されたシーズンでもあったので、それを乗り越えてプレーオフに行けたことがチームの成長を示していると思います。ただ、もう一、二段階レベルアップしないと1位や2位のチームとの差は埋まっていかないとも感じています」

── その差を埋めた先に見えてくるのは決勝、そして頂点です。

「来シーズンこそはチャンピオンにならないといけないと思っています。今シーズンと同様にどの試合もハードな試合になると予想していますので、毎週、よりいい準備をして試合に臨まないといけないですし、今シーズンのように徐々によくなっていくのではなく、シーズンを通して高いパフォーマンスを維持する必要があります。そのためにもプレシーズンから各選手がチームにしっかりコミットして準備していかなければなりません」

── 今シーズンでチームを去る選手、コーチもいます。

「彼らがこのチームに残してくれたものは今後も必ず残っていきますので、これまでのチームへのコミットに感謝したいです。また、新しい選手が入ってくることでさらにイーグルスのカルチャーが加速していくと信じています」

── 最後に、ますます人気が上昇しているイーグルスを支えるサポーターのみなさんへの思いをお願いします。

「やはり結果を出さなければサポーターは増えません。今のイーグルスは見ていておもしろいラグビーをしていると自負していますが、みなさんに実際そのように思ってもらえるようにプレーを通じて伝えていければ、と思っています」


昨シーズンを上回る結果を残せず悔しい思いをした一方で、チーム力の向上などたしかな収穫があった。その積み重ねがさらにチームを強くし、好成績を生み出す。そんなサイクルがまさに作られようとしている。

さらにハードになることが予想される次なるシーズン、梶村祐介をはじめとするイーグルスはどのようなラグビーを見せてくれるのか。今から待ち切れない。

(取材・文/齋藤龍太郎)

  • この記事をシェアする
  • Twitter
  • Facebook
  • LINE