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2026.05.21
INTERVIEW

【シーズン総括インタビュー】レオン・マクドナルド ヘッドコーチ

【シーズン総括インタビュー】レオン・マクドナルド ヘッドコーチ「来季は他の強豪と競り続けてチャンピオンを狙う」

選手としてはニュージーランド代表や同国の名門クルセイダーズ、日本のトップリーグ(現リーグワン)のチームでプレー。指導者としてはスーパーラグビーのブルーズなどで腕を振るい、今シーズンから横浜キヤノンイーグルスの指揮官に就任したレオン・マクドナルド ヘッドコーチが、日本で指導者としての最初のシーズンを終えた。

結果は6勝12敗、勝ち点30、10位。目指していた結果との乖離はあったものの、リーグ戦首位のコベルコ神戸スティーラーズやリーグワン2連覇王者の東芝ブレイブルーパス東京に快勝するなどシーズン終盤にチーム状態を上向かせ、来シーズンの巻き返しが期待できる形で戦いを締めくくった。

マクドナルド ヘッドコーチに今シーズンの手応え、苦悩、課題、そして来シーズンの展望、ターゲットを聞いた。

(取材日/5月12日)


今シーズンのようなスタートは絶対に繰り返してはいけない

── マクドナルド ヘッドコーチにとって最初のシーズンが終わりました。公式戦18試合を戦い終えた今の心境からお願いします。

「私がここ(イーグルス)に来ると決まったとき『再建が必要なチームだ』と認識していましたので、革命的な変化をもたらしたいと非常にワクワクしていました。しかし、FWとディフェンスがチームの大きな課題となり、その改善に向けてハードなトレーニングを積むことで昨シーズン(リーグワン2024-25シーズン)からポジティブな変化をもたらしたかったのですが、まだまだ成長が足りなかったのでアタックとディフェンスそれぞれの新たなシステムを導入するなど改善を試みました。その意味でも難しいシーズンとなりましたが、一方で選手からも多くのことを学んだ1年となりました」

── 開幕6連敗という、思わぬ始まり方になりました。

「たしかにいいスタートではありませんでした。ファフ(SH ファフ・デクラーク)が開幕戦の負傷で長期離脱することになり、ジェシー(CTB ジェシー・クリエル キャプテン)もケガを抱えながらプレーしていました。LO ディノ・ラムFL ビリー・ハーモンFB ブレンダン・オーウェンといった強力な選手たちも試合に出られなくなるなど、チームとして大きな変化を遂げるべき時期に負傷者が相次ぎ、それが悪いスタートにつながってしまいました」

── 苦しい状況が続くなか、シーズン中盤からは勝利を積み重ね始めます。

「アタックに関する理解度が徐々に深まっていきました。FWのプレー、特にスクラムとラインアウトについてはまだまだ改善が必要ではありますが、シーズンを通して見ればポジティブな変化が見られ、それが第7節のトヨタヴェルブリッツ戦での今シーズン初勝利(○20-14)につながりました。ボールの供給が安定すると自分たちの強みを生かせることが証明された試合でもありました。敗戦からの1週間は常に精神的に厳しい時間であり、連敗するとプレッシャーがさらに積み上がります。私自身、選手や家族、ファンのことをずっと考えていましたので、初勝利の瞬間は彼らのことを思って胸をなでおろしました。ハードワークと我慢をし続けた結果だと思います」

── やはりセットピースの安定度が結果に直結したわけですね。

「シーズンの後半はセットピースの安定がスタッツ(試合中のプレーを数値化したデータ)にも表れるようになりました。もちろん厳しい状況が続いていたことに変わりはなく、結果を出すことに対するプレッシャーがチーム全体に重くのしかかっていましたが、そのような厳しい状況下でもコネクション(つながり)を保ち、全員が全員のために問題の解決にフォーカスを当てながらハードワークを続けてきました」

── 第15節から第17節は3連勝し、一時はプレーオフトーナメント進出の可能性が見えるところまで持ち直しました。

「セットピースに関しては完璧とは言えませんでしたが、それでもどうにか勝つための解決策を探し続け、トライもどんどん獲れるようになり、ディフェンスも徐々によくなっていきました。(3連勝を挙げた)シーズン終盤には来年の勢いにつながるパフォーマンスを出すことができましたし、選手たちに『来シーズンはどこを修正すればよくなるか』というクリアなプランを示すことが私のこれからの仕事です。コーチンググループとしても今シーズンの経験や学びを来シーズンにどう生かせるかが大事だと考えています。今シーズンのようなスタートは来シーズン、絶対に繰り返してはいけません」

── 6勝をマークしましたが、勝った試合はいずれもセットピースで優位に立っていたと思います。

「そうですね。ラグビーは強いセットピースを中心にプレーされるべきもので、ボールの供給と確保が安定しなければチームとしていいプレーはできません。そのようなセットピースの形成によって初めて一貫性のあるパフォーマンスを出せるようになります。セットピースを不安定な状態から頑丈なものにする必要があり、さらにはセットピースを(対戦相手にとっての)脅威にしなければなりません。勝った試合はモールがすごく機能していましたし、スクラムも前に出ることができていて、もはやどのチームにも勝てる状態になっていました」

── マクドナルド ヘッドコーチは久しぶりに日本で生活し、初めてのチームをコーチングしました。新しい環境への適応に苦労された部分もあったのでしょうか?

「ネガティブな意味ではなく様々なチャレンジがありました。『上手くなりたい』というモチベーションが強い選手たちに対して、おそらくですが選手たちが慣れていないコーチングの仕方をしていたケースがあったかもしれません。時には選手に合わせたコーチングをする必要があると気づきました。そういう意味でも今はチーム全体が学んでいる段階にあると言えます。それでもシーズンを通して『どういうラグビーをしたいのか』を意思統一でき、どういうアタックをしていくのかが明確になったと思います」

「我々がやってきたことは正しかった」という信念につながった勝利

── 第7節のトヨタヴェルブリッツ戦のお話もありましたが、今シーズンの公式戦18試合のなかでターニングポイントになったのはどの試合でしょうか?

(リーグワン第10節@レゾナックドーム大分 vsクボタスピアーズ船橋・東京ベイ)

「初めの4試合はほとんどが僅差で(第1節は ●27-39 静岡ブルーレヴズ、第2節は●10-17 三菱重工相模原ダイナボアーズ、第4節は ●22-28 浦安D-Rocks )、その後の4試合でさらに勝利へと近づきました。徐々にパフォーマンスが上がっていき(第7節などの)結果にも現れました。そして私が挙げたいのは、クボタスピアーズ船橋・東京ベイに敗れた第10節です( ●10-28 )。コリジョン(ぶつかり合い)にフォーカスして練習したことで、フィジカルは相手に引けを取らないレベルに達していました。その結果『どんな相手にもフィジカルで勝つことができる』という信念が生まれ、これが大きな分岐点になりました(※以後、三重ホンダヒートとコベルコ神戸スティーラーズに連勝)。シーズン序盤は特にディフェンスにおいてフィジカルで負けていた試合が目立ちましたので、スピアーズ戦の週の努力がその後の結果につながったと思っています」

── 初勝利の一つ前、第6節のコベルコ神戸スティーラーズ戦( ●32-38 )もあと一歩で勝利が掴めそうな接戦でした。

「あと5分もあれば絶対に勝てた試合でした。選手もそういう感覚を持っていたと思いますし、チームの変化を感じていたはずです。やはり(このような惜敗で得た)信念がその後に好ましい影響をもたらす、ということですね。この試合も大きな分岐点になったと思います」

── セットピースやフィジカルが勝因にもなれば、敗因にもなった試合もありました。

第8節 リコーブラックラムズ東京戦( ●31-53 )も勝てる試合でしたが、この試合でもセットピースが機能せず、そこから自信を失って点差が開いてしまいました。今シーズンのラストゲームとなった第18節 静岡ブルーレヴズ戦( ●15-42 )は相手にリードを許してからラインアウトのミスが4回連続で発生し、そこから一気に相手に流れを渡して勝負が決まってしまいました。ペナルティが多発したスクラムで自信を失ったことも影響しました。今シーズンを通して失点が多かったのもセットピースに起因しています。したがって来シーズンはセットピースの強化に注力し、同時に戦力の強化も図っていきます。セットピースからボールの供給のクオリティを高めれば素晴らしいトライをできることは証明済みですし、アタックに関しては現時点でも大いに自信を持っています」

── 第16節は、直近2シーズンで連覇を成し遂げている東芝ブレイブルーパス東京に50-26で快勝しました。

「ブレイブルーパスは(7連敗するなど)我々と似た状況にありました。私は『FWで勝負が決まる』と考えていましたが、実際にスクラムもラインアウトも全体的にうまくいき、FWから相手にプレッシャーをかけることができ、それが8つのトライにつながりました。シーズンを通して見てもFWが最も相手を圧倒していた試合だったと言えます」

── この試合でFWが圧倒できた要因はどこにありましたか?

「やはり(シーズン終盤にかけて)セットピースが徐々によくなり自信がついたことですね。練習でもセットピースに時間を割いていましたので、その成果が表れた試合でした。悪い癖が出てくる瞬間もありましたが、全体的には改善が進んでいました」

──  第17節の三菱重工相模原ダイナボアーズ戦も入替戦回避に向けて絶対に勝たなければならない試合でした(○31-22)。

「試合当日、選手たちには『トレーニングでやってきたことをそのまま会場でやるだけだよ』と伝えました。そしてチーム内のコネクションを保ちながら試合を進められたことが勝利につながったと思っています」

── 公式戦以外では、第14節の埼玉パナソニックワイルドナイツ戦( ●15-42 )の直前に行われた練習試合でメンバー外の選手たち「ライザーズ」がワイルドナイツから勝利を収めました( ○28-24 )

「本当に誇らしい試合でした。我々の戦略、ゲームプランを先発メンバーだけでなく全員が遂行して相手を制圧しました。『我々がやってきたことは正しかった』という信念にもつながりましたし、FWのパフォーマンスも素晴らしかったです」

── 今シーズンのライザーズによるチームの底上げについてはどう感じていますか?

「プレシーズンの段階からチーム全体にプレー時間を振り分け、底上げを狙いました。その結果、ライザーズから公式戦メンバーに加わるケースもいくつかありました。(第11節の三重ホンダヒート戦で公式戦デビューした)FB/WTB 猿田湧、(アーリーエントリーから唯一公式戦デビューを果たした)FB 武藤航生、そして(第5節のワイルドナイツ戦に出場した)LO 久保克斗がその代表例です。あらためてチームとしてデベロップメント(選手育成)が非常に大事であることが証明されました。FB/WTB猿田は第12節のスティーラーズ戦(○38-29)で初先発し、FB武藤航生もその試合に途中出場してリーグワンデビューして、それぞれ勝利に貢献してくれました。全員がその場面、その瞬間のために準備をしてきましたので、彼らが出場メンバーに加わったことを誇りに思います。来シーズンはカテゴリーの変更があり(※従来のカテゴリーAがA-1とA-2に分かれる)A-1の選手の出場機会が多くなりますので、ライザーズの存在がより大事になってきます」

── 関西学院大学を卒業したばかりのFB武藤航生選手のパフォーマンスはチーム内外やメディアからも高く評価されていました。

「彼のマインドセット(心構え)は素晴らしかったですね。エラーした後でもひるまずに持ち前のスピードと力強いボールキャリーで貢献し続け、ハイボールも勇敢に競り合っていました。相手にとってはタックルしにくい厄介な選手でもあります。今シーズンは多くのことを学んだはずなので、来シーズンの素晴らしいパフォーマンスにつなげてくれるでしょう。同じFBの森勇登もひざのケガから戻ってくる予定です。どのポジションにもレベルの高い選手を2人置くことを私は望んでいますが、特にFBはそのような望ましい状況になると考えています」

── その一方で、今シーズンでイーグルスを去る選手もいます。

「みんな、大いに献身的な働きをしてくれました。4シーズン在籍していたファフだけでなく、どの選手も様々なことを犠牲にしながら毎週ハードワークし続けてくれました。多大なる貢献に感謝しています」

来季はみなさんが誇れるようなパフォーマンスで恩返しを

── すべての選手がチームに貢献したシーズンでしたが、マクドナルド ヘッドコーチが特に活躍を称えたい選手を挙げていただけますか?

「まず、FWはLO リアキマタギ・モリ選手ですね。36歳の彼はイーグルスを心から愛しており、情熱を持ってプレーしてくれました。常にケガを抱えていたため100%の状態で試合に出ることが多くなかったにもかかわらず、出場するたびに体を張り続けてすべてを出し切ってくれました。試合の後はボロボロの状態でしたが、次の週には変わらないパフォーマンスを見せてくれました」

── BKについてもお願いします。

SO 田村優です。彼も(ケガなどで)100%の状態では試合に臨めないケースが多かったのですが、トレーニングの段階ではミスが1回もありませんでした。練習におけるマネジメントの関係で一時的にトレーニングから外したことがあったのですが、そんなときでも(練習に参加できないことに)不満をあらわにしていた彼の姿を見て、尊敬の念を抱きました。そういう意識付けこそが大事であり、あらためて我々は彼のマインドセットや人格を必要としていると強く感じたのです」

── イーグルス初の外国出身選手のキャプテンとなったCTB ジェシー・クリエル選手の貢献についてはどう評価されていますか?

「本当に素晴らしかったです。私はこれまでFLリッチー・マコウ(元ニュージーランド代表キャプテン・元クルセイダーズ キャプテン)を筆頭に優れたキャプテンとプレーしてきましたが、今やジェシーはそのレベルにいます。チームで最もハードにトレーニングしている選手であり、他の選手たちも彼のことを全員リスペクトしています。 同時に、ジェシーをサポートしてくれたリーダー陣も大切な存在です。FL 古川聖人の素晴らしいリーダーシップはヴェルブリッツ時代に当時の同僚、NO.8キアラン・リード(元ニュージーランド代表キャプテン・元クルセイダーズ キャプテン)から学んだものです。 そしてハイランダーズでキャプテンを務めたFL ビリー・ハーモン、イーグルスの前キャプテンのCTB 梶村祐介やフィールドで攻守にわたり体を張り続けたFL/NO.8 サウマキ アマナキといった優れたリーダーたちも素晴らしいリーダーシップを発揮し、いいコンビネーションを見せてくれました。日々成長することにフォーカスを当てて、言い訳することなくハードワークし続けてくれました」

── 負けが込んでも、彼らが前を向く姿勢を見続けました。

「ただ、『勝ちたい』という気持ちが強過ぎるとよくない方向に向かってしまうこともあります。自分たちにプレッシャーをかけ過ぎてしまうことが多々ありましたので、少しリラックスして自分たちのラグビーに自信を持つことが大事です。実際にそれができた試合はいい結果を出すことができました」

── これから各国の代表チームで活動する選手にはどんなことを期待していますか?

「代表に選ばれる選手たちはイーグルスを象徴している存在であり、プライドを持って彼らのプレーを見ることになるでしょう。ジェシーも、できればファフも南アフリカ代表としてオールブラックス(ニュージーランド代表)に対していいパフォーマンスをしてほしいですし(※8月から9月にかけてその両国が南アフリカで対戦)、WTB 石田吉平をはじめとする日本代表の選手たちにも応援のメッセージを送り続けたいです」

── マクドナルド ヘッドコーチはオフの期間にそのようなテストマッチを楽しみつつ、少し休んでリフレッシュすることができそうですか?

「はい。すべてを出し切ったシーズンでしたので、まずは家族との時間を大事にして過ごしたいです。トレーニングやミーティングのことを考えない完全なオフは誰にとっても必要で、試合のプレッシャーからも離れることが大事です。選手たちも同じような考えを持ってほしいと思います。ただし、私は新しいものをチームに導入するためにオフの間に勉強するのが好きなので、スーパーラグビーなど海外のラグビーから新しいアイデアやインスピレーションを得たいと考えています」

── そしてまた、今年の終盤から新たなシーズンがスタートします。どんな2シーズン目にしたいと考えていますか?

「プレーオフトーナメント進出を狙います。もちろんそれは最低限の目標設定です。試行錯誤を重ねたヘッドコーチ初年度でしたが、来シーズンはプレーオフを狙うためにも一貫性を持ちながら他の強豪と競り続けたいです。そして、チャンピオンを狙います」

── 最後に、イーグルスを熱心に応援してくださったサポーターのみなさまにメッセージをお願いします。

「サポーターのみなさまと触れ合ったのはもちろん今シーズンが初めてでしたが、"赤い波"と表現したくなるほどのロイヤルティ(愛着)をずっと感じてきました。来シーズンはみなさまが誇れるようなパフォーマンスによって是が非でも結果を出し、みなさんにその恩をお返ししたいと考えています」


苦しみ続けた暗いトンネルの先には、チームの成長と勝利という輝かしい結果が待っていた。チームとして一定の手応えを得たと言えるイーグルスだが、マクドナルド ヘッドコーチを筆頭にこの結果に満足しているチーム関係者は一人もいないはずだ。 強豪と競り続けてサポーターのみなさまに恩返しを── 。その言葉を信じながら、来シーズンの開幕と胸のすくような快進撃を期待して待ちたい。

(インタビュー・文/齋藤龍太郎)

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